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マスクを着用していない客の入店・乗車を拒否したら違法になる?

2021年07月05日
  • その他
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マスクを着用していない客の入店・乗車を拒否したら違法になる?

新型コロナウイルス感染防止のため、利用時にマスク着用を求める店や交通機関が増えています。その一方、着用をめぐりトラブルになる事例も頻発しています。

神奈川県では令和3年3月、相模原市のパチンコ店でマスクを着用していないことを注意された男が逆上、副店長らを殴るなどしたとして暴行容疑で警察に逮捕されました。

ではそもそも店や病院、タクシーなどでマスク非着用を理由に利用を拒むことに、法律上の問題はないのでしょうか?ケース別に解説します。

1、マスク非着用者の飲食店などへの入店拒否

スーパーなどの入り口に「入店時はマスク着用をお願いします」という張り紙がしてあることは珍しくありません。では未着用を理由に入店を拒否できるのでしょうか。

  1. (1)マスク未着用を理由に入店を断ることは可能

    飲食店やスーパー、家電量販店などで、来店客に対してマスクを着用していないことを理由に入店拒否することは違法ではありません。

    一般的に店側には一定の範囲で契約をする相手・客を選ぶ自由があるとされています(民法第521条)。

    誰でも入店OKとしてしまえば、危険な行為をする客も受け入れなければならず、従業員やほかの利用者の身に危険が及ぶおそれがあります。
    また新型コロナウイルス感染防止の観点から、マスクの着用に関する法的義務はなくても、着用の必要性は社会で広く認識されているといえるため、入店拒否には合理性もあります

    そのためマスク未着用を理由に入店を拒むことに、法的な問題はありません。
    ただし、いきなり来店客を追い出すとトラブルになる可能性がありますので、店の入り口に張り紙をしたり、口頭や書面で着用を求めたりしましょう。

  2. (2)差別にならないように注意

    マスク着用拒否した客の入店を断ることは可能ですが、その際は判断基準を明確にしておかなければいけません。

    たとえば日本人のマスク未着用には目をつぶる一方で、外国人の未着用は厳しく制限した場合、外国人客から人種差別撤廃条約に違反する、差別に当たる旨主張されるおそれがあります。

    同様に障害者差別ととらえられかねない行為も、障害者差別解消法違反と判断されるかもしれません。

    また客に不信感をもたれるような対応をすれば、店の評判が悪くなるおそれもあります。「マスク未着用の場合、入店お断り」を掲げるのであれば、人種や性別、特性などで差別していると思われないようにしましょう。

2、マスク非着用者のタクシーなどの乗車拒否

車中で密室空間になるタクシーの場合、マスク非着用の客は乗せたくないという運転手も多いでしょう。ではタクシーや公共バスで客の乗車拒否はできるのでしょうか。

  1. (1)正当な理由なく乗車拒否はできない

    タクシーや公共バスについては、原則として客の乗車を拒めません。

    道路運送法第13条では次のように「運送引受義務」を規定しています。

    一般旅客自動車運送事業者は、次の場合を除いては、運送の引受けを拒絶してはならない。
    1. 一 当該運送の申込みが第11条第1項の規定により認可を受けた運送約款によらないものであるとき。
    2. 二 当該運送に適する設備がないとき。
    3. 三 当該運送に関し申込者から特別の負担を求められたとき。
    4. 四 当該運送が法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反するものであるとき。
    5. 五 天災その他やむを得ない事由による運送上の支障があるとき。
    6. 六 前各号に掲げる場合のほか、国土交通省令で定める正当な事由があるとき。


    より具体的には、旅客自動車運送事業運輸規則で次のように定められています。

    一般乗合旅客自動車運送事業者又は一般乗用旅客自動車運送事業者は、次の各号の一に掲げる者の運送の引受け又は継続を拒絶することができる。
    1. 一 第49条第4項の規定による制止又は指示に従わない者
    2. 二 第52条各号に掲げる物品を携帯している者
    3. 三 泥酔した者又は不潔な服装をした者等であって、他の旅客の迷惑となるおそれのある者
    4. 四 付添人を伴わない重病者
    5. 五 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に定める一類感染症、二類感染症若しくは指定感染症の患者又は新感染症の所見がある者


    たとえば、明らかに新型コロナウイルスなどの感染症とみられる場合や運転手を殴るなどした場合、悪天候で運行ができない場合に乗車を断ることができます。

    この規定に照らせば、新型コロナウイルスに感染しているとは断定できない状況で、マスク着用者以外の乗車を断ることは難しいといえます

  2. (2)タクシー会社の運送約款に規定がある場合は例外

    タクシーの乗車拒否は原則としてできませんが、コロナ禍では次のような例外が認められています。

    タクシー会社はそれぞれ「運送約款」を定め、それに基づき運行をしています。
    その約款に「病気など正当な理由なくマスクを着用しない場合は乗車を断る」という趣旨の定めがある場合には、乗車拒否が可能です。

    運送約款を定めたり変更したりする場合は、必ず国交省の認可が必要です。
    国交省はコロナ禍でマスク拒否客への対応に悩むタクシー会社からの声を受け、運転手と次の利用者の感染防止のため、マスク非着用の客の乗車拒否という約款変更を認めました

    そのため運送約款に規定がある場合には、マスク非着用の客の乗車を拒否できます。
    ただし事前に未着用の理由を尋ねたり、着用のお願いをしたりすることが前提です。

3、マスク非着用客の飛行機搭乗拒否

令和2年9月、釧路空港から関西国際空港に向かう飛行機がマスク非着用の男性客がいたために緊急着陸したというニュースが話題となりました。では飛行機の搭乗拒否はできるのでしょうか。

  1. (1)原則、搭乗拒否はできない

    マスク非着用だけを理由として客の搭乗を拒むことは、原則としてできません。

    航空法第73条4では次のように定めています。

    機長は、航空機内にある者が、離陸のため当該航空機のすべての乗降口が閉ざされた時から着陸の後降機のためこれらの乗降口のうちいずれかが開かれる時までに、安全阻害行為等をし、又はしようとしていると信ずるに足りる相当な理由があるときは、当該航空機の安全の保持、当該航空機内にあるその者以外の者若しくは財産の保護又は当該航空機内の秩序若しくは規律の維持のために必要な限度で、その者に対し拘束その他安全阻害行為等を抑止するための措置をとり、又はその者を降機させることができる。


    機内マスク着用拒否が、直接的に安全運行に支障をきたすわけではありません。そのため航空会社各社は着用のお願いはしても、非着用というだけで搭乗拒否はできません。

  2. (2)安全運行に支障があれば搭乗拒否できる

    上述した緊急着陸のケースでは、乗客は乗務員からマスク着用を求められたもののそれを拒否し、ほかの乗客に大声をあげたり乗務員の腕をひねったりしました。そのため機長が「安全阻害行為にあたる」と判断し緊急着陸、乗客は降りることになりました。

    男は事件から約2か月後に航空法違反などの容疑で逮捕されました。

    このように、機内マスク着用拒否をしたうえに乗務員やほかの乗客を殴るなど安全運行を阻害する客については、搭乗拒否が可能です。

4、マスク非着用者の病院での診察拒否

医療機関の場合、新型コロナウイルスの院内感染が発生すれば通院・入院患者の命にもかかわります。では非着用の患者の診察を拒めるのでしょうか。

  1. (1)正当な理由なく診療拒否はできない

    医師法第19条と歯科医師法第19条は次のように定めており、医療機関においては正当な理由がなければ診察拒否はできません。いわゆる「応召義務」です。

    医師法
    診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない

    歯科医師法
    診療に従事する歯科医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない


    もっとも、新型コロナウイルス感染予防の観点から、マスクをしていない・着用拒否の患者については、健康上の理由など特別な理由がない場合に、診察を断ることができる可能性があります

  2. (2)マスク拒否の理由によっては診療拒否できる可能性あり

    ではマスクの非着用は「正当な事由」に該当するのでしょうか?

    この点、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、「患者が発熱や上気道症状を有しているということのみを理由に、当該患者の診療を拒否することは、診療拒否の正当な理由には該当しない。」との見解を表明しています。
    とはいえ、マスク着用はコロナ感染予防に一定の効果があると広く認識されています。加えて病院の場合、感染が命の危険に直結する患者もいるでしょう。

    最終的には個々の着用拒否の理由によることになりますが、やむを得ない理由もなく、単に自己のマスクに対する好悪、志向等を理由にマスク着用をしない患者の診察を断ることは「正当な事由」に該当すると考えられるため、診察拒否はできるとみられます

5、マスク非着用者への宿泊拒否

ホテルや旅館などでも、宿泊客にマスク着用を求めているところが少なくありません。では非着用の場合、宿泊を断れるのでしょうか。

  1. (1)非着用だけで宿泊拒否はできない

    マスクの非着用だけを理由として、施設が客の宿泊を拒むことは原則としてできません。

    旅館業法第5条には次のような規定があり、正当な理由のない宿泊拒否を禁じています。

    営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。
    1. 一 宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき。
    2. 二 宿泊しようとする者がとばく、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。
    3. 三 宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき。


    マスク非着用はそれだけでは上記1〜3に該当しないため、宿泊拒否は難しいでしょう。

  2. (2)非着用以外にも理由があれば拒否は可能

    マスク非着用を理由とした利用拒否はできませんが、宿泊客が逆上して施設の物を壊したり暴力行為をしたりした場合には、上記規定2号の「風紀を乱す行為」にあたるとして、宿泊を拒める可能性があります。

    またマスク非着用のうえに数日間にわたり38度以上の高熱が続いているといった場合には、コロナやほかの感染症の疑いがあるため、拒否できるでしょう

6、まとめ

いずれのケースにおいても、違法かどうかはケースバイケースです。タクシー会社やホテルが独自で判断すると、後々訴訟を起こされるリスクがあります。そのため非着用の客とトラブルになった場合は、まず弁護士に相談しましょう。

ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスでは、弁護士がトラブルの内容を確認して対応方法をアドバイスします。状況に応じて相手との交渉の代行も可能ですので、お困りの際はすぐにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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