交通事故の慰謝料は通院頻度で変わる? 治療費打ち切りの目安
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川崎市役所が公表する「過去5年間交通事故発生状況(平成29年~令和3年)」のデータによると、令和3年に川崎市内で発生した交通事故の発生件数は2663件で、それによる負傷者数は2981名とのことでした。
交通事故に遭ってケガをした場合、入院を必要としない程度の軽傷であっても、加害者側に対して損害賠償を請求することが可能です。被害者が請求できる損害賠償金のひとつに、「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」があります。これは、通院期間や通院頻度によって金額が変化するものです。適正額の損害賠償を受けるためにも、きちんと医師の指示に従って通院するように努めましょう。
本コラムでは、交通事故に遭った場合に支払われるものや、通院頻度が交通事故慰謝料に与える影響などについて、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士が解説します。
1、軽傷の交通事故被害者に支払われる保険金の主な項目
交通事故が原因でケガを負った場合、入院する必要性がない程度の軽傷であっても、被害者は加害者に対して、損害賠償を請求することができます。もし加害者が任意保険に加入していれば、保険会社に対して保険金を請求することも可能です。ここからは、損害賠償請求できる主な項目について、解説します。
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(1)治療費
交通事故のケガを治療するためにかかった合理的な治療費は、軽傷・重傷を問わず、全額が損害賠償(保険金)の対象です。
たとえば、以下のような費用が、治療費としての損害賠償(保険金)の対象となります。
- 初診料
- 再診料
- 検査費用
- 投薬費用
- 手術費用
- 装具、器具の購入費用
- リハビリ費用
ただし、整骨院や接骨院での治療費は損害賠償の対象から除外され、保険会社も保険金の支払いを拒否するケースが多いです。
交通事故のケガを治療する際には、必ず整形外科などの医療機関を受診しましょう。 -
(2)通院交通費
交通事故のケガを治療するために通院で必要だった交通費も、加害者(保険会社)に請求できる損害賠償(保険金)の対象です。
基本的には、近隣の医療機関までの交通費が対象となります。しかし、治療の必要性があれば、遠方の医療機関までの交通費も損害賠償(保険金)の対象に含むことが可能です。
バスや電車などの公共交通機関を利用した場合には、特に問題なく通院交通費の支給が認められる可能性が高いでしょう。
そのほか、タクシーや自家用車を利用して通院した場合にも、通院交通費の支給が認められることがあります。 -
(3)休業損害
ケガの治療やリハビリのために、仕事を休まざるを得ない方もいるでしょう。そのようなケースでは、休業期間に得られなかった収入についての損害賠償を請求することが可能です。
なお、有給休暇を取得して会社を休んだ場合にも、休業損害の請求は認められます。 -
(4)入通院慰謝料
交通事故のケガを治療するために入院・通院を強いられた場合、被害者にはショックやストレスなどの精神的損害が生じ得ます。この精神的損害については、入通院慰謝料(傷害慰謝料)として加害者(保険会社)に請求可能です。
入通院慰謝料の金額は、ケガの重傷度に加えて、通院期間や通院頻度に応じて決まります。詳しくは次章で解説するので、参考にしてください。
2、入通院慰謝料の金額は、通院期間と通院頻度で変化する
交通事故の被害者が、加害者(保険会社)に対して入通院慰謝料を請求する場合、通院期間や通院頻度によって請求できる金額が変わります。ここからは、通院期間や通院頻度に関連する慰謝料について、説明していきます。
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(1)入通院慰謝料の算定表
過去の裁判例に基づく裁判所基準(弁護士基準)によると、入通院慰謝料の金額は、以下の表①または表②を用いて計算されます。
入院しなかった場合は、下記の各表のうち、1番左側の列を参照してください。
たとえば、交通事故でむちうちになったものの入院はしなかったケース(表②参照)で、3か月間通院すれば53万円、6か月間通院すれば89万円の入通院慰謝料が認められます。
表①(骨折などの重症時)
入院期間 1か月 2か月 3か月 4か月 5か月 6か月 7か月 8か月 9か月 10か月 11か月 通院期間 0 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 1か月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 2か月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 3か月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 4か月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 5か月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 6か月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 7か月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 8か月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 9か月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338 10か月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335 11か月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332 12か月 154 183 211 236 260 250 298 314 326 13か月 158 187 213 238 262 282 300 316 14か月 162 189 215 240 264 284 302 15か月 164 191 217 242 266 286
表②(むちうち症、打撲、捻挫などの軽傷時)
入院期間 1か月 2か月 3か月 4か月 5か月 6か月 7か月 8か月 9か月 10か月 11か月 通院期間 0 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 1か月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 2か月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 3か月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 4か月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 023 203 5か月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 6か月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 7か月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 8か月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 9か月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214 10か月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209 11か月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204 12か月 119 136 151 161 172 180 188 194 200 13か月 120 137 152 162 173 181 189 195 14か月 121 138 153 163 174 182 190 15か月 122 139 154 164 175 183 -
(2)通院期間と通院頻度の関係性
上記の各表のとおり、裁判所基準(弁護士基準)に基づく入通院慰謝料の金額は、通院期間を基準に決定されます。
また、字義的な意味での通院期間は、通院頻度によって左右されることはありません。月に1回の通院でも、週に3回の通院でも、通院期間が6か月におよぶことになれば、通院6か月と表現することは可能でしょう。
しかし、入通院慰謝料の損害賠償に関しては、むち打ち症で他覚所見がない場合等で、通院が長期にわたる場合、実通院日数の3倍程度を通院期間の目安とされることがあります。
たとえば、1年間にわたって10日間のみ通院したケースだと、通院期間が1年間ではなく、30日程度しか認定されないことがあり得るのです。
このような場合には、通院頻度が入通院慰謝料の額に大きく影響します。
通院頻度が多ければ多いほど支払われる金額が増加するわけでもなく、また、医師の指示どおりに通院せずにいると、入通院慰謝料の額が大幅に減ってしまうおそれもあるということに注意してください。
3、交通事故の損害賠償請求を弁護士に依頼すべき理由
加害者側に対して交通事故の損害賠償請求を行いたいときは、弁護士へ相談・依頼することがおすすめです。
弁護士に依頼すれば、加害者側との示談交渉や訴訟の対応をご自身で行う必要がないため、労力やストレスの軽減に繋がります。損害賠償請求のことは弁護士に任せて、ケガの治療に専念することができるでしょう。
また、加害者側が提示する損害賠償額や保険金額にかかわらず、客観的な損害額を算定する裁判所基準(弁護士基準)に基づき、適正額の請求を行うことができます。
交通事故によるケガなどの被害につき、スムーズに適正な損害賠償(保険金)を獲得したいとお考えの際には、弁護士にご相談ください。
4、保険会社から治療費等の打ち切りを通知されたら?
交通事故によるケガの治療中、加害者側の保険会社から一方的に治療費等の打ち切りを通知される場合があります。もし保険会社から治療費等の打ち切りを通知された場合には、医師・弁護士と相談の上でその後の対応をご検討ください。
ここからは、打ち切りとなるタイミングやその後の対処法について解説します。
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(1)治療費等が打ち切られるのは「症状固定」のタイミング
交通事故によるケガの治療費等につき損害賠償が認められるのは、症状固定に至った時期までです。
症状固定とは、「ケガの治療をこれ以上続けても改善の見込みがない」と医学的に判断される状態を意味します。
症状固定の段階で残っている症状は、後遺障害(後遺症)として損害賠償(後遺障害慰謝料・逸失利益)を請求することが可能です。その反面、症状固定後の治療は交通事故と因果関係がないものとして、損害賠償の対象から除外されてしまう点に留意しなければなりません。 -
(2)症状固定を診断するのは医師であり、保険会社ではない
交通事故が原因のケガが症状固定に至ったかどうかを診断するのは、保険会社ではなく、医師です。
したがって、保険会社が一方的に治療費等の打ち切りを通知してきても、症状固定に至っていないと医学的に判断される場合には、その後の治療費についても保険会社に請求できる可能性があります。 -
(3)治療費等を一方的に打ち切られた場合の対処法
保険会社が一方的に治療費等の打ち切りを通知してきたら、まずは医師に相談をして、症状固定の時期について意見を求めるのがよいでしょう。
医師が「まだ症状固定に至っていない」との見解を示した場合には、保険会社に診断書とともにその旨を伝え、引き続き治療費等の支払いを求めることができます。
それでも保険会社が治療費等の支払い継続を拒否するようなことがあれば、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士が被害者に代わり、治療費等の支払いを求めて保険会社と交渉します。交渉がまとまらなければ、訴訟を通じた請求についてもスムーズにご対応することが可能です。
5、まとめ
交通事故によってケガをした場合、医師の指示する通院頻度で適切に病院へ通いましょう。
通院を怠ると、ケガが治りにくくなるだけでなく、加害者(保険会社)に請求できる入通院慰謝料の額が減ってしまう可能性があるため、注意が必要です。
ベリーベスト法律事務所は、交通事故の損害賠償請求に関するご相談を随時受け付けております。交通事故の被害者に遭ってお困りの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスまでご相談ください。
お気持ちに寄り添いながら、出来る限りのサポートをいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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