偽ブランド品を販売して商標法違反で逮捕! 罪や量刑を弁護士が解説
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令和4年11月、スターバックスの偽ロゴ入りのトートバッグをオンラインで販売した女性が、商標法違反などの容疑で書類送検されました。
この容疑者は、生活費の足しにするために、海外から偽ブランド品を仕入れて販売していたとのことです。
このように、偽ブランド品やコピー商品を販売して逮捕、または書類送検された事案は数多くあります。
商標法違反で逮捕された場合、どれくらいの量刑になるのでしょうか。また、ほかの罪が成立する可能性はあるのでしょうか。
本コラムでは、偽ブランド品を販売することによって逮捕された場合の罪や量刑について、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士が解説します。
1、偽ブランド品を所持・販売すると商標法違反に
偽ブランド品を販売すると、商標法違反という犯罪になります。偽ブランド品を販売するために所持しているだけでも商標法違反容疑で罰せられる可能性があります。ここでは、商標とはなにか、商標法違反となりうるケースについて解説します。
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(1)商標とは
商標とは、簡単に言えば、自社(自己)の商品・サービスと他社(他人)の商品・サービスを区別するために使うマークのことです。たとえば、リンゴのマークといえばApple社、黄色い丸みをおびた「M」はマクドナルド、というように、ぱっと見ただけでどこの会社の商品・サービスであるかがわかるようなマークを商標といいます。
商標は図形だけではなく、文字や文字列、記号の場合もあれば、ホログラムのような模様や色彩のものもあります。また、商標の形状も平面的なものとは限らず立体商標や音の商標などもあります。要するに、自社と他社を区別できる目印になるものであれば大半のものが商標となりうるのです。
そして、商標を持つ権利のことを商標権といいます。商標を登録する際には、どの商品・サービスにその商標を使用するかを指定する必要があるため、商標権もその商品・サービスの同一又は類似する商品・サービスの範囲内に限り効力を有することとなります。 -
(2)商標法違反となりうる行為
商標権は商標法という法律で保護されており、他人の商標権を侵害すると商標法違反となり逮捕されて罰せられる可能性があります。
商標法違反となりうるのは、以下のような行為です。- 他社のマークによく似たマークを自社の製品に無断で貼り付けた商品を販売した。
- メルカリなどのフリマサイトで販売するために偽ブランド品を所持していた
- お客さまに商品を渡すときに他社のロゴを印刷した紙袋に入れて渡した
- 偽ブランド品とは知らずにオークションサイトに偽造品を出品した
- 偽ブランド品と知っていて商品を輸出又は輸入した など
2、商標権を侵害するとどんな罪に問われる?
商標権侵害は他社の信用を棄損する行為なので、刑事事件として立件される可能性があります。商標権の侵害によって逮捕・起訴されると、刑務所で服役しなければならないこともありえるため、ブランド品を扱う際には注意が必要です。
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(1)商標法違反(商標権侵害)
有名ブランド品によく似たロゴをつけた商品を販売したり、他者の商標を使って類似したサービスを提供した場合、商標法違反(商標権侵害)が成立します。商標法違反(商標権侵害)をすると、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方が科されます。
また、たとえ実際には偽ブランド品をまだ売っていなくても、売るために偽ブランド品を輸入したり、所持したりすること、その他類型的に商標権を侵害する可能性の高い行為は、商標権を侵害したとみなされる行為として商標法違反となります(商標法第37条)。これに該当する行為を行った場合には、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金またはこの両方の刑が科せられます。 -
(2)法人による商標法違反はさらに罪が重くなる
法人(会社や団体など)の代表者や従業員が、偽ブランド品を業として輸入・仕入れまたは販売をすることで商標法違反をした場合、個人よりも罪が重くなります。商標権を侵害する行為をした者に10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科せられることに加え、法人に対しても3億円以下の罰金刑が科される可能性があります(商標法第82条1項1号)。
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(3)偽ブランドと知らなかった場合も罪に問われる?
冒頭で紹介した事案のように、販売者自身が輸入業者に騙されていたなどで自分の売っているブランド品が偽造品であることを知らなかったというケースも少なくありません。偽ブランド品と知らずに輸入・所持し、提供・販売していた場合も何らかの罪に問われるのでしょうか。
商標法違反として罪に問われるのは、故意つまり行為者が少なくとも偽ブランド品の可能性があると知りながらあえてその行為に及んだことが条件となります。そのため、偽ブランド品と知らなかった場合は、商標権の侵害にはなるものの、刑事責任には問われず刑罰も科されません。
もし万一逮捕されたり在宅捜査を受けたりした場合には、警察や検察に偽ブランド品と知らなかったことを主張することとなります。無実であることを証明するために、入手ルートや経緯、入手金額など諸般の事情を説明しなければならないでしょう。 -
(4)商標法違反には時効はある?
商標法違反は刑法犯の一種なので、公訴時効があります。商標法違反に関する公訴時効は、最後に商標権を侵害したときから7年、また最後に商標権を侵害したとみなされる行為をしたときから5年です(刑事訴訟法第250条2項4号、5号)。この期間をすぎると、検察は起訴することはできなくなり、被疑者を罰することができなくなります。
一方、商標法違反は民事訴訟を提起されて不法行為責任に基づく損害賠償を請求される可能性もあります。この場合、被害者が商標権を侵害されたことを知ったときから3年、商標権侵害から20年で時効が成立します(改正民法第724条)。
このように、刑事・民事の両面で時効があることを知っておきましょう。
3、商標法違反以外で偽ブランド品を販売すると成立しうる罪は?
他人の商標権を侵害する行為をすると、商標法違反以外の罪も成立してしまう可能性があります。主に、詐欺罪と不正競争防止法違反の罪の2つです。
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(1)詐欺罪
偽ブランド品を販売することは、その商品を本物であるかのように見せかけて買い手をだまし、代金を支払わせることにつながります。そのため、偽ブランド品を販売すると刑法に規定されている詐欺罪が成立することもあるのです。詐欺罪が成立すると、10年以下の懲役に処せられる可能性があります(刑法第246条)。
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(2)不正競争防止法違反
偽ブランド品を販売するなどの行為は、不正競争防止法違反にもなる可能性があります。不正競争防止法とは、事業者間の品質や価格等によらない不正競争の防止と不正競争にかかる損害賠償に関する措置などを講じている法律です。
消費者が混同してしまうほど他社と類似した商品・サービスを販売すると、その他社が商標登録をしていなくても不正競争防止法違反が成立し、処罰の対象となります。不正競争防止法違反をすると、5年以下の懲役または500万円以下の罰金刑あるいはその両方が科されます(不正競争防止法第21条2項)。
4、商標法違反等で逮捕されたあとの流れ
商標法違反でも悪質な場合は逮捕される可能性があります。また、商標法違反は家宅捜索を受ける可能性があることも特徴のひとつです。
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(1)家宅捜索
商標法違反は親告罪ではないので、偽ブランド品を販売していると自分の知らないところで刑事事件として捜査が始まっていることが珍しくありません。そのため、商標法違反について警告も何もされていない段階で、急に警察官が複数自宅に来て家宅捜索される可能性があります。家宅捜索では、偽ブランド品そのものや包装紙、通帳などの関連資料、パソコン、スマートフォンなどが押収されます。家宅捜索のときに任意同行を求められたり、その場で現行犯逮捕されるケースもあります。家宅捜索が先になるか、逮捕が先になるかはケースにより異なります。
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(2)逮捕・勾留・在宅捜査
商標法違反で立件されると、逮捕され身柄を拘束されるケースと、在宅のまま捜査が進み、必要に応じて警察署に呼び出されるケースの2通りあります。逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合は逮捕される可能性が高いでしょう。
逮捕されると48時間以内に警察で取り調べを受け、その後検察庁に身柄を送致(送検)されます。検察庁でも24時間以内に取り調べの上、勾留すべきかどうか決定されます。この逮捕されてから勾留決定がされるまでの最大72時間の間は家族でも面会ができません。
勾留決定されると10日間勾留されます。事件が複雑で捜査に時間がかかる場合は、さらに最長10日間勾留延長される可能性もあります。そうなると、最大20日間勾留され、社会生活に多大な影響をおよぼしてしまうため、できるだけ早めに弁護士に相談して早期釈放を目指すことが望ましいでしょう。 -
(3)起訴・不起訴の決定
捜査が終了すると、検察官が起訴・不起訴を決定します。被疑者を逮捕している身柄事件の場合は勾留期間が終わるまでに起訴・不起訴が決定されます。なお、起訴された場合は被疑者の呼び方が被告人へと変わります。
日本では刑事裁判になると約99%有罪判決となるため、ここで不起訴処分を得ることが非常に重要となります。初犯で被害者への被害弁償もすみ、余罪もないということであれば不起訴となる可能性もあります。一方、犯行が悪質で規模も大きく社会的な影響が及んでいる場合は起訴される可能性が非常に高いでしょう。 -
(4)刑事裁判(公判)へ
刑事裁判になったときは、執行猶予判決を得られるかどうかがその後の被告人の生活を左右します。犯行が悪質ではなく、被害金額も小さい場合は執行猶予がつく可能性が高いでしょう。ただし、初犯でも被害金額が重大で犯行を主導したような場合は執行猶予がつかないこともありえます。前科がある場合は、執行猶予なしの実刑判決となり、刑罰も重くなる可能性が高いでしょう。
5、商標法違反で示談は有効?
商標法違反で逮捕もしくは在宅捜査された場合、弁護士が被害者と示談を開始します。商標法違反でも示談は有効なのでしょうか。
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(1)まずは謝罪・被害弁償をする
商標法違反で被害届が出されている場合、もしくは告訴された場合は、逮捕もしくは在宅捜査されます。その一方で、弁護士が警察から被害者と示談を開始します。被害者は被疑者やその家族には会おうとしなくても、弁護士の話であれば聞いてくれる可能性があるのです。
弁護士が被害者のもとへ出向き、まずは被疑者にかわって誠心誠意謝罪したのちに示談交渉や被害弁償を行います。被害者が大企業や公的機関の場合は、影響が甚大で示談をしたもらうこと自体が難しいこともありえるでしょう。その場合は贖罪寄付など他の方法で反省の情を客観的に示すことも可能です。 -
(2)示談が成立すれば逮捕・勾留を防げることも
被害者との間で示談が成立していれば、それが被疑者に有利にはたらきます。捜査機関に示談が成立した旨を主張すると、逮捕されそうな場合でも逮捕されずにすんだり、検察庁に送致されて勾留されるのを防げたりする可能性もあります。また、逮捕されても、罪を犯したと疑う相当な理由がある・証拠隠滅や逃亡のおそれがあるなどの勾留要件を満たさないことを主張すれば、身柄拘束を防ぐこともできるでしょう。
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(3)不起訴を目指すことも可能に
検察官が起訴・不起訴を決定する前に示談が成立すれば、被害者にも被害届や告訴を取り下げてもらえる可能性が高くなります。そうすれば、検察官にも裁判にして刑罰を科す必要はないと判断されやすくなります。したがって、犯行の態様にもよりますが、弁護士が弁護活動を始めるタイミングが早ければ早いほど、早期に被害者と示談を成立させ、不起訴処分を勝ち取れる可能性が高くなるのです。
6、まとめ
偽ブランド品やコピー商品を販売すれば、非常に重い刑が科せられる可能性があります。
販売している商品が偽ブランド品と知らなかった場合でも、状況証拠などから「知らなかった」と認められなければ逮捕され、罰せられることもありえます。
商標法違反の疑いで逮捕された場合、もしくは逮捕されそうになっている場合など、お困りの方はベリーベスト法律事務所 川崎オフィスまでご相談ください。
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