未成年のわいせつな自撮り画像を持っていたら犯罪になる? 川崎の弁護士が解説

2019年05月28日
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未成年のわいせつな自撮り画像を持っていたら犯罪になる? 川崎の弁護士が解説

未成年者を取り巻くインターネット環境が急速に変化し、ひと昔前では難しかった、年代や居住地域などを超えたコミュニケーションが可能となりました。そのメリットは非常に大きなものですが、悪用する者がいることもまた事実です。たとえば、平成29年9月には、川崎市在住、22歳の男が静岡県在住の少女に対して通信アプリを介してわいせつな画像を送信させて児童ポルノ製造の疑いで逮捕されました。

わいせつな自撮り画像の送信を求める事犯は、平成29年の段階では児童売春・ポルノ禁止法違反でしか処罰する規定がなく、立件も難しかったため、違法状態が黙認される傾向がありました。ところが、平成30年に東京都の青少年健全育成条例が改正され、全国的に取り締まりが強化されています。

ここでは、未成年の児童に対してわいせつな自撮り画像を送信させた場合、どのような罪になるのかを中心に、川崎オフィスの弁護士が解説します。

1、未成年者にわいせつな自撮り画像を送信させることは犯罪か?

スマートフォンの撮影機能を使って自らの姿を撮影する、いわゆる「自撮り」画像を児童に送信させる行為は、実はこれまで犯罪行為にはあたりませんでした。また、わいせつな自撮り画像を撮影して送信するよう求めることも、罪に問われることはなかったのです。

もちろん、見ず知らずの相手に促されるがままわいせつな自撮り画像を送信してしまう未成年の存在は認知されるとともに、問題視されていました。そこで、まずは「画像を所持していること」や「画像を製造すること」の方向で解釈を広げた規制が進められていったのです。

冒頭の事例はまさにその解釈で、18歳未満であることを知ったうえでわいせつな自撮り画像を送信させ、その画像を「製造した」ことで検挙されています。

2、東京都青少年育成条例の改正

平成30年、東京都は全国の自治体に先がけて条例の改正を行いました。改正された「東京都青少年の健全な育成に関する条例」では、「18歳未満の者に対して、裸体や下着姿など、性的な欲求を満たす目的で自撮り画像などの送信を求める」行為が禁止されることになりました。規制対象となるのは自撮り画像だけに限らず、動画ファイルやDVDなどの記録媒体に保存されたデータも含まれます。

この種の事犯は、画像の送信を求められた未成年者も小遣い欲しさなどで積極的に足を踏み込んでいることがあります。しかし、改正条例では「青少年を威迫し、欺き、困惑させ、または対償を供与し、もしくは供与を約束して児童ポルノの提供を求めること」が禁止されています。

したがって、たとえ未成年者が金銭のやり取りとして割り切っていたとしても、「性的な欲求を満たす目的で自撮り画像などの送信を求めた」時点で処罰の対象となりえるでしょう。

青少年健全育成条例は、名称にわずかな差があっても、ほぼ同様の規制が全国に敷かれています。今回の「自撮り画像の送信を求める行為の禁止」はすでに多くのメディアでも取り上げられて高評価を受けており、内閣府主導で全国への情報提供が行われて、すでにほかの道府県でも導入検討の兆しがみえています。

神奈川県にも「神奈川県青少年保護育成条例」が施行されていますが、平成31年1月現在では自撮り画像の送信を求める行為は禁止されていません。ただし、相手がどこの誰であるのかが明らかではないインターネット上のコミュニティーでは、わいせつ画像の送信を求めた相手が法規制を受けている自治体在住であるというケースも想定されます。

また、いずれは神奈川県青少年保護育成条例も東京都の条例と同じく改正が加えられるものと予想されるため「まだ神奈川県内は大丈夫だ」と油断することはできないでしょう。

3、児童ポルノ禁止法で禁止されている「製造」や「所持」とは?

東京都の青少年健全育成条例では、18歳未満の者にわいせつな自撮り画像の送信を求める行為自体が禁止されていますが、全国的には未整備のケースが大半です。したがって、未整備の地域でわいせつな自撮り画像の送信を求め、送付させたときは、原則的には「児童ポルノ禁止法」の規制を受けることになります。

児童ポルノ禁止法とは、正しくは「児童売春、児童ポルノにかかる行為等の規制及び処罰並びに児童等の保護に関する法律」という名称の法律です。非常に長い名称なので、規制対象によって「児童ポルノ禁止法」や「児童売春禁止法」などの略称で呼ばれます。
児童ポルノ禁止法では、次のような行為が禁止されています。

  • 児童ポルノを提供、製造すること
  • 児童ポルノを公然に陳列すること
  • 児童ポルノを第三者に提供する目的で所持すること
  • 性的な好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持すること
  • 盗撮などによって児童ポルノを製造すること

この法律でいう児童とは18歳未満の男女を指しています。未成年者といえども、18歳以上の者は含まれません。

また、「児童ポルノ」とは、児童を対象とした次のような写真や動画などを指します。

  • 衣服の全部または一部を着けない姿態でことさらに性的な部分が露出、強調され、性欲を興奮させ刺激させるもの
  • 児童を相手方とする、または児童による性行や成功類似行為の姿態
  • 他人が児童の性器等を触る、または児童が他人の性器等を触る行為にかかる児童の姿態で性欲を興奮させ刺激させるもの

表現が難しく感じますが、つまり児童の裸や性器、児童を相手としたセックスの描写などが該当します。

具体的な禁止行為としては「製造」や「所持」が挙げられています。
「製造」とは、写真撮影などによって児童ポルノを製造することで、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処されます。
「所持」とは、印刷された写真やDVDなどを実際に持っているだけでなく、スマートフォンにデータを記録している状態や、レンタルサーバー上にデータを保管している状態も含まれます。この場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます。

4、児童ポルノ禁止法で逮捕された場合の流れ

児童ポルノ禁止法違反を犯した場合、多くは対象となった未成年者が補導されたり、別件の事件被害者などになったりすることで発覚します。また、児童ポルノ禁止法に違反する行為は、各都道府県警察や協力団体が行うサイバーパトロールの網によって発覚することもあるでしょう。

児童ポルノ禁止法に違反し、逮捕された場合は、次のような流れで刑事手続きを受けることになります。

●逮捕(たいほ)
警察によって身柄拘束を受ける。この時点から、外部への連絡や自由な行動が制限される。

●送致(そうち)
逮捕から48時間以内に、被疑者の身柄が検察庁へと引き継がれる。

●勾留(こうりゅう)
送致を受けた検察官は、24時間以内に引き続き身柄拘束が必要かを判断し、必要であれば裁判所に勾留を請求する。勾留が認められた場合は原則10日間、最長20日間の身柄拘束が続く。不要と判断された場合は釈放され、在宅事件扱いとなる。

●起訴(きそ)
検察官は、被疑者の刑罰を問う必要があると判断した場合、裁判所に起訴する。起訴されると、被疑者は被告人になる。起訴しない場合は勾留期限が満期になった時点で釈放される。

●公判(こうはん)
裁判所で刑事裁判が開かれる。事実の言い争いがある場合は何度かの公判が行われ、最終的な判決が下される。

前科がなく、犯行が悪質ではないと判断された場合は、正式な公判を開かずに処罰を決定する「略式起訴」が行われることもあります。略式起訴になると、罰金をおさめることで刑罰が終了するため、無罪を主張するなどの言い分があるなどの場合を除いては、素直に罪を認めて略式起訴を目指すことが賢明でしょう。

5、家族が逮捕されてしまった場合にできることは?

もし家族が児童ポルノ禁止法違反の容疑者として逮捕されてしまった場合は、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。

突然の逮捕に動揺しているのは、誰よりも逮捕された本人かもしれません。まずは自由に被疑者と接見する権利を有する弁護士に接見を依頼し、今後の流れや取り調べに対するアドバイスを教示してもらうことが最大の手助けとなります。

また、弁護士を選任していれば、逮捕された本人の早期釈放を目指した活動も期待できます。特に、送致、勾留請求、起訴の各段階で弁護士が積極的に検察官や裁判所へと働きかけることで、勾留されなかったり、起訴を回避したりできる可能性が出てきます。

逮捕されてしまい、長期間の身柄拘束を受けると、会社や学校を長く休む必要があります。そうなれば、事件後の社会生活が困難で苦しいものになるでしょう。将来に受ける影響を最小限に抑えるためにも、速やかに弁護士を依頼して早期釈放を目指すことをおすすめします。

6、まとめ

東京都が全国に先立ち条例を改正したことによって、全国に「児童ポルノの送信を求める行為」を禁止する流れが広まっています。精神的に未成熟な未成年者を大人の性的な欲求を満たすための道具とする行為は許せるものではありません。それでも、法規制が厳しくなることで、予期せず入手してしまったポルノ画像の所持などで嫌疑がかかってしまうことも予測されます。

わいせつな自撮り画像の所持などで嫌疑をかけられている方、今のところ発覚していないと思うが不安を感じるなどのお悩みを抱えている方は、ベリーベスト法律事務所・川崎オフィスまでご相談ください。児童福祉犯罪に対応した実績が豊富な弁護士が、みなさまの不安を解消するために全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています