女子中学生への痴漢で逮捕。冤罪の場合どうすればいい?
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東京や神奈川では通勤時間帯の電車が非常に混雑しており、乗客同士が密着するため痴漢が起こりやすい傾向にあります。
一方でたびたび問題となるのが痴漢冤罪です。
神奈川県では平成22年、JR藤沢駅で女子高生に痴漢をしたとして男性が逮捕されましたが、24年に無罪が確定しました。
では女子中学生への痴漢で逮捕され、冤罪の場合はどう対処すればいいのでしょうか?
1、未成年に対する痴漢は社会問題になっている
日本では痴漢は毎日のように起きており、官僚や警察官、教員が逮捕されることも珍しくありません。痴漢は被害者の身体を傷つけるものであり、特に未成年者への影響は計り知れません。近年その被害があらためて注目され、痴漢防止の活動も盛んになっています。
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(1)世界でも知られる日本の「CHIKAN」
電車内の痴漢は日本ではもはや日常茶飯事ですが、海外ではそうではありません。
痴漢が頻発する異様な現状に、他国からは冷ややかな視線が向けられています。
海外では「SUSHI」のように日本語がそのまま使われることがありますが、痴漢も「CHIKAN」として知られ、関連書籍も出版されています。
またイギリス政府の渡航情報ページには、日本への旅行者に対する「CHIKAN」への注意喚起の記述もあります。 -
(2)痴漢防止バッジ、アプリなどが登場
このような状況を打開しようと、痴漢防止対策が広がっています。
その一つが痴漢防止バッジです。
バッジはさまざまな個人や団体が作成しており、「痴漢は犯罪です」「私たちは泣き寝入りしません」などのメッセージとイラストが描かれています。
通学バッグにつけて乗車することで周りの乗客に意思を示すことができ、痴漢防止に一定の効果を上げています。
またJR東日本は、痴漢防止アプリの開発を進めています。
列車内で痴漢にあった際にアプリの通報ボタンを押すと、乗車位置などの情報が車掌に送られ、痴漢発生の車内放送をしたり、最寄り駅の駅員と連携をとったりします。
痴漢が起こらないように、被害者や事業者がさまざまな策を講じ始めているのです。
2、女子中学生への痴漢で問われる2つの罪
痴漢防止の動きが広がる一方、忘れてはいけないのが痴漢冤罪です。ではやってもいない痴漢を訴えられた場合、どのような罪に問われる可能性があるのでしょうか?
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(1)迷惑防止条例違反
電車内で服の上から短時間、女子中学生の体を触ったという場合には、迷惑防止条例違反に問われる可能性があります。
この条例は各都道府県がそれぞれ制定しているため、内容や刑罰は少しずつ違います。
たとえば神奈川県迷惑防止条例では、次のように規定されています。- 「何人も、公共の場所にいる人または公共の乗物に乗っている人に対し、人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
- 1、衣服その他の身に着ける物の上から、又は直接に人の身体に触れること」(第3条)
刑罰は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」(第15条1項)です。
痴漢を常習的にしていた場合は刑罰が重くなり「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(第16条1項)です。 -
(2)強制わいせつ罪
痴漢の中でも、女子中学生の下着の中に強引に手を入れるなど、手口が悪質な場合は「強制わいせつ罪」に問われる可能性があります。
刑罰は迷惑防止条例違反よりも重く「6カ月以上10年以下の懲役」(刑法第176条)です。
罰金刑の設定はないため、実刑判決を受けて執行猶予がつかなければ即刑務所行きです。
なお強制わいせつ罪は、被害者の年齢によって適用基準に違いがあり、被害者が13歳以上の場合は「暴行または脅迫を用いて」わいせつ行為をした場合に罪に問われますが、13歳未満の場合には暴行・脅迫の有無は関係なく、わいせつ行為をしただけで罪に問われます。
被害を受けたとする女子中学生が1年生であれば、12歳かもしれません。
その場合、暴行や脅迫をしない痴漢でも、より刑罰の重い強制わいせつ罪が適用される可能性があります。
3、痴漢で逮捕された後の流れ
電車内の痴漢では、駅員や警察官による現行犯逮捕が多い傾向にあります。たとえ濡れ衣であっても、逮捕されれば次のような流れで捜査や手続きが進められます。
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(1)逮捕後の流れ
- ①現行犯または通常逮捕
- ②警察による取り調べ
- ③検察に送検、検察が裁判所に勾留請求
- ④裁判所が勾留の可否を判断
- 勾留あり:10日間の身柄拘束(10日間の延長の可能性あり)
- 勾留なし:釈放
- ⑤検察官による起訴・不起訴の判断
- 起訴:裁判
- 不起訴:釈放
- ⑥裁判の判決
逮捕から起訴まで釈放されなければ、最大で23日間拘束されます。裁判で無罪を勝ち取るためには、さらに数年かかる可能性があります。
冤罪であったとしても、裁判で有罪判決を受ければ痴漢の前科がつき、会社を解雇されたりするなど、大きな影響を受けるでしょう。 -
(2)痴漢では釈放されることもある
痴漢事件では被害が軽微、前科がない、逃走のおそれがない、といった場合には、逮捕されても早期に釈放されることがあります。
容疑を否認している場合でも、証拠が不十分の場合には身柄を拘束せず、在宅事件として捜査が進められる可能性があります。これは殺人などの重大事件との違いでもあります。
ただし釈放は無罪放免ではありません。その後起訴されれば刑事裁判になります。
4、女子中学生との示談の注意点
痴漢事件では、たとえ冤罪であっても、捜査機関から厳しい追及を受けたり、裁判で長期間争うことを避けるために「示談したい」と考える方は少なくありません。
しかし、冤罪であれば、基本的には無実を主張するべきです。
もっとも、「触るつもりはなかったが、当たってしまったかもしれない」などの状況によっては、示談を行うことも考えられますので、示談すべきかどうかは弁護士に相談されることをおすすめします。
ただし未成年の女子中学生との示談には注意が必要です。
成人との示談の場合には本人との合意があれば問題はありませんが、未成年者は単独での法律行為が認められていません。法定代理人である親権者の同意が必要です。
同意なく示談をした場合には、取り消される可能性があります(民法第5条2項)。
そのため示談をする場合には女子中学生だけと交渉するのではなく、親権者も同席し、示談書に署名捺印をしてもらいます。
先に女子中学生とだけ示談してしまった場合には、別に同意書を作成して親権者に署名捺印をもらいましょう。
5、痴漢で捕まったときに無実を証明するためにすべきこと
やっていない痴漢で逮捕されてしまった場合、裁判で無罪を獲得するためには現場での対応が大事です。対処方法や重要な証拠をご紹介します。
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(1)痴漢を明確に否定する
女子中学生に「この人、痴漢です」などと訴えられた場合には、慌てず、逃げず、女子中学生にも周囲にも駅員にも、明確に痴漢を否定しましょう。
一度でも痴漢をしたと認めてしまえば、あとで否定しても不利な証拠になってしまうでしょう。
逆に駅員や周囲の乗客による「痴漢はしていないと言っていた」という証言は、無罪を証明するための証拠になるでしょう。 -
(2)証拠を残す・探す
身に覚えのない痴漢行為を疑われた場合には、乗車当時周囲にいた乗客に証言を求めましょう。「両手でつり革を握っていた」「被害女性から離れて立っていた」など、無罪につながる証言が得られる可能性があります。
ただし乗客は降車してすぐいなくなってしまうことも多いので、証言を頼む場合は現場ですぐ行動しましょう。
また被害者との会話はスマートフォンなどで録音しておきましょう。
捜査の途中で被害者の証言が変わったり曖昧になったりすることもあるため、当時の被害者の言動を記録しておけば、役に立つかもしれません。
自分が痴漢行為を否定していることも、客観的に示すことができます。
また爪に残った微物やジャケットの袖の繊維などは証拠になります。
手を洗ったり着替えたりすれば証拠隠滅ともとらえられかねませんので、下手な行動はせず警察の捜査を待ちましょう。 -
(3)弁護士に依頼する
痴漢を疑われた場合には、できるだけ早く弁護士に連絡しましょう。
痴漢事件では、逮捕せずに捜査を進めることが少なくありません。
痴漢を疑われてすぐに弁護士に連絡すれば、弁護士のアドバイスに従って対処すれば逮捕されずにすむ可能性があります。
また逮捕されても早期解放や不起訴に向けた働きかけを行ってくれるほか、起訴された場合にも無罪を得るために証拠収集や裁判対応をしてくれます。
被害者と示談をする場合も、弁護士がついていることで信用度が高まり、示談が円滑に進むと期待できます。
6、まとめ
痴漢は被害者の心と体を傷つけるものであり、簡単に許されるものではありません。ですが、罪のない方が犯罪者にされていいものでは絶対にありません。
やってもいない痴漢を疑われた場合には、すぐにベリーベスト法律事務所 川崎オフィスにご連絡ください。痴漢冤罪顧問弁護士緊急ダイヤルというサービスもございます。弁護士がお客様のために全力でサポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています