自宅ベランダで裸になると公然わいせつ? 後日逮捕されるケースとは
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令和4年10月、新川崎駅で男性が女性に対して自身の性器を見せつけるという事件がありました。男性は公然わいせつ容疑で逮捕されています。このように、公道で性器を露出する行為はもちろん、自宅のベランダで裸になり通行人や他人に見せつける行為をすれば、公然わいせつ罪に問われる可能性があります。
本コラムでは、なにをすると公然わいせつ罪に問われうるのか、また、現行犯逮捕をされなくても後日逮捕に至る通常逮捕となる可能性はあるのかなどについて、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士が解説します。
1、公然わいせつ罪とはどんな犯罪か
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(1)公然わいせつ罪の法律的意味
公然わいせつ罪とは、道路や公園など不特定多数の人の目に触れる場所で、わいせつな行為をしたときに成り立つ犯罪です。刑法犯罪で、刑法174条に触れることになります。
「公然」とは大勢の人から見える状況を指し、その可能性が疑われても公然わいせつ罪は適用されます。インターネットの動画や自室であっても、不特定多数の目に晒される状態であれば、公然と見なされます。
「わいせつ行為」とは、通常、人が性的嫌悪感や羞恥心をもったり、性秩序を乱したりする行為が当たります。 -
(2)公然わいせつ罪の成立要件
公然わいせつ罪が成立する要件として、大きく次の2つの要件が挙げられます。ひとつは「実行行為」があったか否か、もうひとつは「故意」が認められるかどうかです。
公然わいせつ罪における実行行為とは、公の場で人に性的嫌悪感や羞恥心を起こさせたり、性秩序を乱したりする行為を実際に行うことを指します。一般良識や社会通念上、性的と判断される行為がこれに当たります。
公然わいせつ罪の故意とは、その行為自体を本人が認識し許容していることが法律の成立条件になります。
ただし通常、本人が、そうした行為が公におよぼす影響があるのか、それ自体わいせつ行為に相当するのかを認識している必要はありません。 -
(3)公然わいせつ罪の刑罰
公然わいせつ罪の成立要件として、公然わいせつ罪の「実行行為」「結果の発生」、実行行為と結果との「因果関係」、「故意」の有無が問題となります。
冒頭の、ベランダにおける全裸の日光浴は、「故意」で見せようとしない限り、ほとんどその場で逮捕されることはありません。
公然わいせつ罪は刑法174条で、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料の罪に当たると記されています。 -
(4)公然わいせつ罪の適用例
では具体的に、どのような状況でどのような行為をすると、公然わいせつ罪が適用されるのでしょうか。「公の場での露出」「公の場での性行為」「風俗店の性サービス」「インターネット動画でのわいせつ行為」などが、典型的な例でしょう。
「公の場での露出」は、たとえば公園や路上などでの全裸や下半身を露出させることです。発見者の通報により通常、警察により現行犯逮捕されることが多いです。
「公の場での性行為」は、車の中やインターネットカフェなどでの性行為のことで、カップル同士であっても罪を免れない可能性があります。
「風俗店などの性サービス」は、典型的な例として、過度なストリップショーが挙げられます。この場合多くは、興行側とショーのダンサーに公然わいせつ罪が適用されます。
「インターネット動画でのわいせつ行為」は、誰でも鑑賞できるような状態であれば、写真であっても公然わいせつ罪に問われるでしょう。
2、通常逮捕とは何か
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(1)通常逮捕と現行犯逮捕のちがい
逮捕といっても大きく分けて、2つの方法があります。逮捕令状が必要な逮捕(通常逮捕)と、逮捕令状の必要のない逮捕(現行犯逮捕など)です。
通常逮捕は、被疑者が罪を犯したと疑われる場合、警察や検察などの申請を受け裁判所により出された逮捕令状に基づき、被疑者を逮捕します。そのため、令状逮捕とも呼ばれています。
これに対し現行犯逮捕は、犯罪行為をしているその現場かその直後、あるいは犯行後間もない時間で、被疑者による犯行に疑う余地がないときに行使するものです。
現行犯逮捕では逮捕状を提示する必要がなく、警察はもちろんのこと、一般の人も逮捕することができます。 -
(2)公然わいせつ罪と通常逮捕の関係
公然わいせつの行為で通常逮捕されるおそれはないのでしょうか。結論としては、通常逮捕の可能性は十分あるといえます。
たとえば、酒に酔って公園で全裸になっていたところ、その容姿や特徴を通りがかりの人に目撃されるケースや、防犯カメラに撮影されていることがあります。また、車中で性行為を行っていたところ、その車のナンバー控えられているケースだけでなく撮影されていることもあり得ます。そのような場合、警察の捜査により通常逮捕されることも考えられるでしょう。
ストリップショーなども目撃情報により、警察が捜査に入るケースも少なくありません。 -
(3)通常逮捕に至る最近の傾向
公然わいせつ行為の通報があると、警察は被疑者を特定するための捜査に入ります。
最近の傾向では、犯罪の決め手として頻繁に用いられるのが、防犯カメラや監視カメラの映像などです。ドライブレコーダーの動画が、被疑者の特定に使われることもあります。
仮に前述の、自宅ベランダで全裸になって日光浴していたケースの場合、向かいのマンションの住人に見られ、不快に思われた方がスマートフォンのカメラで撮影することもあるかもしれません。それが犯罪の決め手になる可能性があるということです。
捜査が始まり逮捕状が発行されるまでは一定期間を要します。事件発生から数週間のうちに逮捕されることもあれば、捜査状況によっては数年たったのちに、被疑者が逮捕されることもあります。 -
(4)通常逮捕されたときの対処法
公然わいせつ罪で通常逮捕されたとして、どのように対処したらいいのでしょう。
通常、警察での48時間の捜査・取り調べののちに、被疑者の身柄は検察に送致されます。検察で被疑者は、最長20日間取り調べを受けることになります。
スマートフォンのカメラの映像などを証拠として示されたら、飲酒中のことで記憶にないなどとシラを切っても客観的な証拠があれば、起訴をすることや有罪と認定することはできます。また、窃盗や痴漢と異なり、被害者がいるわけではありませんので、非常に対応が難しい犯罪類型といえます。つまり、公然わいせつは社会全体の風紀秩序に対する罪ですから、特定の個人に金を払えばそれで許されるということはないのです。
仮に釈放されてもそこで捜査が終わるわけではありません。その後も事情聴取は続き事案によっては起訴されることも考えられます。
3、まとめ
公然わいせつ罪により逮捕された場合、また通常逮捕のおそれがある場合は、早期に弁護士に相談しましょう。
逮捕前であれば、事前のアドバイスが受けられます。出頭を求められている状況であれば弁護士が同行することも可能です。逮捕後であれば早期釈放や起訴回避などに向け、弁護士は適切な弁護活動を行うことができます。
公然わいせつを犯したのち警察から連絡が来るなど、いつか逮捕されるのではないかと悩まれているのであれば、ぜひベリーベスト法律事務所 川崎オフィスまでご連絡ください。刑事事件についての知見が豊富なの弁護士が背景や事情をうかがいつつ、適切なサポートを行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています