激しい束縛を理由に離婚できる? よくあるケースと離婚の手続き

2020年02月27日
  • 離婚
  • 束縛
  • 離婚
激しい束縛を理由に離婚できる? よくあるケースと離婚の手続き

ショッピングや趣味などを楽しんでいる最中に夫や妻から「どこにいる?」「誰といる?」と何度も連絡がきたら、楽しい時間が台無しです。毎日続けば次第に息が詰まるような感覚にもなるでしょう。

こういった束縛は、愛情の証に見えるかもしれません。ですが激しすぎる束縛を受けると、心が疲弊してしまいます。中には離婚を考えている方もいるでしょう。

では束縛を理由に離婚できるのでしょうか?弁護士が解説します。

1、束縛を理由に離婚できる?

「愛しているから」「心配だから」。束縛する側はさまざまな理由で、相手の行動を監視したり制限したりします。その状態が続くと「もう限界」と思うこともあるでしょう。では束縛による離婚はできるのでしょうか?

  1. (1)離婚には相手の同意が必要

    一般的に離婚に至る背景には束縛のほか性格の不一致や不倫、借金などがあります。
    しかし、どんな理由でも、話し合いで離婚をする場合には相手の同意が必要です。

    話し合いで離婚したい場合には、相手が離婚に納得し、離婚届にハンを押してくれなければいけません。

    もっとも、束縛をする夫や妻に離婚を納得させるのは、簡単ではないでしょう。

  2. (2)「束縛」は法律上の離婚事由ではない

    話し合い以外で離婚する方法の一つが裁判です。
    裁判で離婚をする場合には、法定の離婚事由に該当していることが必要です。

    民法770条には、次の5つの離婚事由が定められています。

    • 配偶者の不貞行為
    • 配偶者からの悪意の遺棄
    • 配偶者が3年以上生死不明
    • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由がある


    この5つのうちいずれかに当てはまる場合には、裁判で離婚できる可能性があります。
    ただし一見してわかるように、残念ながら束縛はこれに該当していません。

  3. (3)夫婦関係が破綻していれば離婚の可能性も

    束縛自体は法定の離婚事由には当たりません。
    ですが束縛により夫婦関係が破綻し、修復が不可能という場合には離婚事由の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断される可能性があります。

    また度を超えた束縛を受けている場合にも、離婚を認めてもらえる見込みがあります。
    ただしどの程度であれば離婚できるかは、ケースバイケースです。

  4. (4)束縛以外の理由で離婚できることもある

    束縛以外に法定離婚事由がある場合には、離婚できる可能性が高まります。

    たとえば次のようなケースです。

    • 束縛しながら自分は不倫している
    • 生活費を渡さない
    • DV、モラハラがある


    不倫は離婚事由の「不貞行為」にあたります。
    また生活費を渡さないことは相手の行動の自由を奪い、精神的にも追い詰めるほか、離婚事由の「悪意の遺棄」に該当する場合もあります。

    DVやモラハラは、身体的・精神的に相手を大きく傷つける行為です。
    それにより婚姻関係が破綻している場合には、離婚事由の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当たる可能性があります。

    また離婚事由がなくても、束縛から逃れて別居をしている場合、一定の別居期間があれば婚姻関係が破綻しているとしてみなされ、離婚できる可能性があります。

2、よくある束縛のケース

自分は相手からの愛情だと思っていても、はたから見れば束縛というケースは少なくありません。よくある例をご紹介しますので、ご自分の状況と照らし合わせてみてください。

  1. (1)行動を逐一報告させる

    夫や妻を束縛するケースでよくあるのが、相手の行動を監視することです。

    たとえば「今日はどこに行く」「誰と会う」という予定の確認から始まり、外出中に何度も電話をかけたりSNSでメッセージを送って「今どこにいる」「何時に帰る」と報告させたりするというものです。

    友人との待ち合わせについてくるなど、目の前で監視を行う場合もあります。

    「面倒だから」と報告を怠ると逆上したり、浮気を疑われたりすることもあります。

  2. (2)家から出させない

    夫や妻を家から外出させないという束縛もあります。

    外出先で異性と会うことを防止することなどを理由に、自分が不在のときもできるだけ外出させないようにします。

    同性の友人と会うことすら許さなかったり、外出は許しても門限を決めて強要してきたりするケースもあります。

  3. (3)GPSや監視アプリで居場所をチェックする

    スマホのGPS(衛星利用測位システム)機能や監視アプリが悪用されることも少なくありません。

    常に居場所をチェックすることで自分の監視下に置き、外出先にやってきたり、帰宅後に何をしていたか問い詰めてきたりします。

    「GPSで居場所を確認している」と告げられていることもあれば、勝手に監視アプリを入れられているケースもあります。

  4. (4)相手のスマホチェック

    スマホのロックを勝手に解除するなどして、SNSのやりとりを盗み見たり、撮影した写真をチェックしたりして、誰と何をしているか把握しようとすることも少なくありません。

    異性と写っている写真があると、逆上することもあります。

3、束縛する夫や妻と離婚する方法

激しい束縛に耐え続けていると、体や心に不調がでてくるおそれがあります。限界がくる前に、離婚も考えましょう。具体的な方法をご紹介します。

  1. (1)話し合い

    離婚を目指す場合には、まずは相手との話し合いから始めましょう。

    束縛をするほど執着しているため、離婚には簡単には応じてくれないかもしれません。
    ですが冷静に話し合い、もう関係が修復できないということを理解してもらえれば、離婚してくれるかもしれません。

    離婚までは考えていない場合には、まずは束縛が嫌だということを伝えてみましょう。
    本当にやめてほしいと思っていると理解してもらえれば、改善の可能性があります。

    ただしDVを受けている場合や、相手が激しく怒りやすいタイプの場合には、二人だけで話し合いをするのは危険ですので、市区町村のDV相談窓口や弁護士に相談してください。

  2. (2)調停・裁判

    話し合いで離婚に合意できない場合や、話し合いにまったく応じてもらえないという場合には、家庭裁判所に調停を申し立てましょう。

    調停で調停委員を交えて話をし、離婚に合意できれば離婚できます。
    話し合いではかたくなに離婚を拒んでいたとしても、調停でじっくりと話をすることで気持ちが変わり、離婚してくれる可能性があります。

    調停でも離婚に合意してもらえない場合には、裁判での離婚を目指しましょう。

    ただし裁判で離婚するためには、法定の離婚事由が必要です。

    必要な証拠をしっかりとそろえて、離婚事由があることを証明しましょう。

  3. (3)一人で悩まず弁護士に相談

    束縛に疑問を感じ、苦しんでいても「愛されているから」と耐えている方もいるでしょう。

    しかし、束縛がつらいと感じていて、離婚したいを考えている場合、まずは誰かに相談しましょう。
    離婚に詳しい弁護士であれば、じっくり話を聞いたうえで、法律の観点からのアドバイスをしてくれます。
    離婚を目指す場合には、相手とのやりとりと仲介や訴訟の準備など、具体的に手続き面でサポートしてくれます。

    DVを受けていたり、かなり厳しく束縛をされていたりする場合には、なるべく早く手を打つ必要がありますので早めに相談しましょう。

4、まとめ

何が束縛で、どこまでなら許容できるのか、その判断は人によって違います。
ですが離婚したいと考えるほど苦痛に感じているのであれば、そのままではいけません。改善のために、まずは弁護士に相談しましょう。

ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士は苦しんでこられたお客様のお気持ちに寄り添い、離婚に向けて全力でサポートいたします。秘密は厳守いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています