夫が風俗通いしていた! 性病をうつされたことを理由に離婚できる?

2023年04月25日
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夫が風俗通いしていた! 性病をうつされたことを理由に離婚できる?

川崎市が公表する「川崎市の人口及び人口動態統計」の統計資料によると、令和2年の川崎市内の離婚件数は2215件でした。離婚方法としては、協議離婚がもっとも多く(1968件)、調停離婚(164件)、和解離婚(37件)、判決離婚(25件)、審判離婚(21件)と後に続きます。

配偶者である夫以外との性行為がないにもかかわらず、ご自身が性病になってしまった場合は、配偶者の不倫や風俗通いを疑うものです。何かしらの理由で性病になったことを夫が認めた際は、性病をうつされたことを理由に離婚することができるのでしょうか。

本コラムでは、夫から性病をうつされたことによる離婚の可否について、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士が解説します。

1、夫から性病をうつされたことを理由に離婚できる?

夫が原因で自分自身も性病になった場合、そのことを理由に離婚をすることはできるのか、解説します。

  1. (1)夫が離婚に同意すれば離婚は可能

    夫婦の話し合いによって離婚の合意に至れば、どのような理由でも離婚をすることができます。これを「協議離婚」といいます。協議離婚であれば、夫に性病をうつされたという理由でも離婚が可能です。

    しかし、夫が離婚に同意しない場合には、調停を経た上で、最終的に裁判による離婚を目指すことになります。裁判による際は、「法定離婚事由」に該当するような事情がなければ、配偶者と離婚をすることができません。

    法定離婚事由(民法770条1項各号)としては、以下の5つがあります。

    <法定離婚事由>
    • 不貞行為(1号)
    • 悪意の遺棄(2号)
    • 配偶者の生死が3年以上明らかでない(3号)
    • 強度の精神病にかかり回復の見込みがない(4号)
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由(5号)


  2. (2)性病をうつされたことは法定離婚事由にあたるのか

    性病は、一般的に性行為によって感染するものであるため、夫から性病をうつされたときに「夫が配偶者以外の誰かと性行為があったのではないか」と疑うのは当然のことです。

    夫が「妻以外と性行為をした」と認めた場合には、法定離婚事由である不貞行為に該当します。そのため、夫が離婚を拒否していたとしても離婚できる可能性が高いです。

    しかし、夫が不貞行為を認めなければ、性病を理由に離婚をすることは難しいといえます。なぜなら、性病は性行為以外でも感染する可能性があり、確実に夫から感染したともいえません。「性病をうつされた=不貞行為」というわけではありませんので、注意が必要です。

    なお、夫が風俗通いによって性病に感染したケースについては、性交渉を前提とする風俗店であれば不貞行為に該当する可能性がありますが、頻度や夫婦関係への影響などによっては、不貞行為に該当しない可能性もあります。

  3. (3)性病をきっかけに離婚をするにはどうしたらよいか

    性病をうつされたことをきっかけに離婚したいと考えたときは、夫が不貞行為をしている可能性がありますので、実際にその事実がないか、証拠集めを開始しましょう。

    また、性病が発覚したことで夫婦関係が悪くなり、婚姻関係が破綻したという場合には、法定離婚事由である「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる可能性もあります。

    不貞行為の立証ができない場合でも、別居期間などの諸事情を考慮して離婚が認められる可能性もあるため、離婚そのものを諦める必要はありません。

2、性病をうつされたら損害賠償を請求できる?

夫から性病をうつされた場合には、損害賠償を請求することができるのかどうかを解説します。

  1. (1)性病をうつされた場合には損害賠償請求が可能

    夫に性病をうつされたことによる慰謝料請求をするためには、夫自身が性病に感染していることを認識していたか、認識できたといえる事情が必要です。

    たとえば、妻と性行為をする前に夫が病院で検査しており、性病の診断が出ていたときは、故意によって妻に性病を感染させたといえるため、損害賠償請求ができる可能性が高いといえます。
    また、風俗店での性行為をすることには性病のリスクが伴いますので、風俗通いをしていたことを証明できれば、過失による性病感染としての損害賠償請求ができる可能性があるでしょう。

    なお、性病をうつされたことと不貞行為は別の事情です。そのため、夫の不貞行為も立証できる場合には、不貞行為による慰謝料と性病をうつされたことの損害賠償請求、双方を請求することができるケースもあります。

  2. (2)性病をうつしたことが傷害罪になる可能性もある

    性病をうつすことは、他人の生理的機能を害する行為であり、性病をうつした夫を傷害罪に問える可能性もあります。

    ただし、傷害罪は故意犯とされているため、夫の傷害罪が成立するのは「夫が性病にかかっていることを認識または認容しながら妻と性行為をした」という事情が必要です。

    なお、傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金と規定されています。

3、性病をうつした夫が離婚に同意しない場合の対処法

夫に離婚を同意してもらえない場合の離婚方法について、流れを紹介します。

  1. (1)冷静に話し合いをする

    夫から性病をうつされた場合には、嫌悪感やいら立ちから感情的になってしまい、離婚に向けた冷静な話し合いができないことがあります。

    このような場合には、しばらく別居をするなどして冷静に話し合いができる状態になるまで時間をおくことも考えられます。

    冷静な話し合いができれば、当初離婚を拒んでいた夫の態度も軟化し、離婚に応じてくれる可能性も高まります。

  2. (2)離婚調停を申し立てる

    話し合いにより夫が離婚に応じてくれないときは、次の手段として、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。

    離婚調停では、裁判所の調停委員を介して離婚の話し合いが行われることから、夫婦だけの話し合いでは感情的になってしまう場合でも、冷静に話し合いを進められることが期待できます。
    ただし、離婚調停も話し合いの手続であるため、夫が離婚に応じない場合には、調停が不成立となる点に留意が必要です。

  3. (3)離婚訴訟を提起する

    離婚調停が不成立になった場合には、最終的に離婚訴訟を提起して、裁判所に離婚を判断してもらうことになります。
    ただし、前述のとおり、裁判で離婚をするためには法定離婚事由が必要です。

    性病をうつされたという事情だけでは裁判所に離婚を認めてもらうことが難しいといえますので、夫の不貞行為や婚姻を継続し難い重大な事由があることを主張立証していかなければなりません。

    また、離婚訴訟は専門家のサポートなしで対応するのは難しく、夫が離婚を拒否しているような場合には、早めに弁護士に相談をするとよいでしょう。

4、有利に離婚手続きを進めるには弁護士に依頼がおすすめ

有利に離婚手続きを進めるためには、弁護士に依頼をすることがおすすめです。その理由を3つご紹介いたします。

  1. (1)法定離婚事由の有無を検討してもらえる

    夫が離婚を拒否している場合には、最終的に離婚裁判によって決着を付けることになります。しかし、夫に性病をうつされたというだけでは、法定離婚事由にはあたりません。

    法定離婚事由に該当する事情があるかどうかによって、離婚の進め方や方針が異なってきますので、まずはしっかりと見極める必要があります。そのためには、弁護士に相談をして、法定離婚事由の有無を検討してもらうことが大切です。

  2. (2)相手との交渉を任せることができる

    夫に性病をうつされた場合、嫌悪感やいら立ちから夫と冷静に話し合えない方も少なくありません。感情的な話し合いになってしまうと、離婚の話し合いが長期化したり、焦って不利な条件で離婚をしてしまったりするおそれがあります。

    弁護士に依頼をすれば、夫との交渉をすべて弁護士に任せることができますので、冷静な話し合いを進めることができます。それによって、相手と交渉をしなければならないという精神的負担も大幅に軽減することができるでしょう。

  3. (3)有利な条件で離婚できる可能性が高くなる

    離婚する際に決める条件には、親権や養育費、慰謝料、財産分与、面会交流、年金分割などさまざまなものがあります。これらの離婚条件を適切に取り決めるためには、法的知識が不可欠であるため、よくわからず不利な条件で離婚に応じてしまうおそれがあります。

    弁護士であれば、相手との粘り強い交渉や裁判での主張立証をとおして、有利な条件での離婚を実現できる可能性が高まります。離婚後の経済的な不安は、有利な条件で離婚をすることによって解消できるため、離婚をお考えの方は、弁護士への依頼がおすすめです。

5、まとめ

夫から性病をうつされた場合には、夫が妻以外の女性と性行為に及んでいた可能性があります。

妻以外の第三者との性行為を立証できれば、法定離婚事由である「不貞行為」を理由として離婚をしたり、損害賠償の請求をしたりすることが可能です。

少しでも有利な条件で離婚をするためには、弁護士のサポートが不可欠となります。婚姻関係を継続させることが困難になり、離婚を決断した際は、お気軽にベリーベスト法律事務所 川崎オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています