裁判を欠席したらどうなる? 欠席裁判について弁護士が解説
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令和3年の横浜地方裁判所川崎支部および川崎簡易裁判所における、民事訴訟事件の新受件数は2166件、刑事訴訟事件の新受件数は615件と、裁判所では日々多くの事件を取り扱っています。
裁判所から訴状が届いたとき、「裁判なんか出たくない」「忙しいから無視しよう」「問題社員からの訴えを聞きたくない」と考える方は少なくありません。しかし裁判を無断で欠席すると、相手の主張をそのまま認める判決が出てしまう可能性が高くなるので注意が必要です。
以下では「欠席裁判」とはどのようなものか、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士が解説いたします。
1、裁判を欠席すると、相手方の主張がそのまま認められてしまう?
裁判所から「訴状」が届いたとき、無視して裁判に欠席するとどうなるのでしょうか?
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(1)欠席裁判について
欠席裁判は民事訴訟法に定められたルールにもとづくものです。民事訴訟は原告と被告が主張や証拠をもって争う裁判手続きです。慰謝料請求や貸金返還請求訴訟、明け渡し請求訴訟、不当解雇や未払い賃金などにおける労働訴訟などが民事裁判の典型例です。民事再生などの債務整理関係の事件や刑事裁判とは異なるので、これらの裁判には欠席裁判は適用されません。なお刑事裁判で訴えられた人は「被告」ではなく「被告人」となり「代理人弁護士」ではなく「刑事弁護人」となるなど、他にもいろいろな違いがあります。
民事訴訟手続きでは訴訟当事者は自分の言いたいことを主張し、証拠をもって立証しなければなりません。主張・立証されなかったことは「なかったこと」として扱われてしまいます。また相手の主張内容に対して反論しない場合には、相手の主張を認めた扱いにされます。期日において相手に対し積極的に反論しないと、相手の言い分をすべて認めたことになってしまうのです。これを「擬制自白」と言います。
裁判を起こされたとき、原告側は既に訴状や証拠をもって自分の言いたいことの主張立証を完了しています。そこで被告が何も反論せず口頭弁論期日に欠席したら、すべて原告の請求内容を認めたと扱われ、原告勝訴の判決が下されることがあります。これを「欠席裁判」と言います。 -
(2)欠席裁判を避ける方法
欠席裁判を避けるには、被告は答弁書(反論書面)を提出し、口頭弁論期日に出頭して「陳述」しなければなりません。なお民事訴訟では期日を「口頭弁論期日」と言います。刑事裁判の場合には「公判期日」なので、区別しておきましょう。
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(3)第1回口頭弁論期日に認められる例外
ただし第1回目の期日については擬制自白の例外がもうけられています。被告側は事前に答弁書を提出しておけば、当日出頭しなくても答弁書を陳述した扱いにしてもらえます。これを「陳述擬制(擬制陳述)」と言います。この場合、原告勝訴の判決は出ません。
そこで訴状が届いたときには、必ず答弁書を作成して裁判所に提出しましょう。 -
(4)第2回以降の期日の欠席について
第1回期日には擬制陳述が認められるので欠席しても不利益を受けずにすみますが、第2回期日以降には基本的に擬制自白の例外が認められません。事前に反論書面(準備書面)や証拠を提出していても、欠席すると相手の言い分を認めたことになります。なお、第2回目以降の期日には「弁論準備手続き」に付されるケースが多いです。弁論準備手続きになると、法廷ではなく小さな部屋で当事者が集まって手続きを進めていきます。
簡易裁判所における事件の場合のみ、被告側にも例外的に第2回期日以降も陳述擬制が認められています。事前に反論書面や証拠を提出しておけば、当日は欠席しても陳述・提出した扱いにしてもらえます。
なお判決が言い渡される判決期日の場合、欠席裁判はありません。すでに判決内容が決まっているからです。原告側も被告側も出頭せず、裁判官だけが簡単に判決の結論部分のみを読み上げて終了します。詳しい判決理由を知りたければ、判決書を取得する必要があります。
2、裁判所からの郵便物を受領拒否したらどうなる?
裁判を起こされたら、裁判所から「特別送達」という方法で訴状などの書類が送られてきます。これを受領拒否したらどのような扱いとなるのでしょうか?
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(1)夜間、勤務先、休日送達が試される
特別送達とは裁判所類を送るときの特別な方式の郵便です。配達員が「特別送達です」と言って本人を呼び出し手渡します。
しかし本人が不在の場合や居留守を使った場合、特別送達で届けることはできません。その場合にはいったん郵便局に持ち戻り、再配達を試みます。それでも届かなければ、休日配達や夜間配達、勤務先への送達を試します。 -
(2)付郵便送達について
それでも本人が居留守を使って受けとらない場合などには、「付郵便送達」が行われます。これは普通郵便で訴状等の書類を送って郵便受けに投函し、それによって送達を完了したと扱う方法です。
この場合、本人が実際に書類を受けとっていなくても「送達」した扱いになってしまうので、無視していると「欠席裁判」となります。
付郵便送達になるのは、以下のようなケースです。- 被告があて先にいるのに受けとらない
- 休日や夜間送達、勤務先への送達などの方法では受けとらない
付郵便送達を採用されると、自分の知らない間に裁判が開かれて欠席裁判になり、不利な判決が出てしまう危険性が一気に高まります。
郵便局から不在票が入り、差出人名が「○○地方裁判所(簡易裁判所、家庭裁判所)」などとなっていたら、すぐに再配達の依頼をするか自分で郵便局に郵便を取りに行き、内容を確かめるべきです。 -
(3)民事訴訟以外で特別送達される書類について
裁判所からの書類は民事訴訟の訴状以外のものも特別送達で届くものが多いです。
- 刑事裁判の公判期日呼出状や決定書類
- 離婚訴訟の訴状
- 支払督促申立書
- 少額訴訟の訴状
- 判決書や各種の決定書
上記のような書類が届いた場合、それぞれ対処が必要なのですぐに弁護士に相談してください。なお離婚調停の調停調書など普通郵便で届くものもあります。
3、裁判所から郵便物が届いたら、弁護士へご相談を
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(1)すぐに内容を確認する
裁判所から書類が届いたら、まずはその内容を確認しましょう。民事訴訟の書類なのか刑事訴訟関係の書類なのかによっても、対処方法が異なります。民事訴訟関係の訴状や呼出状の場合、早急に対応しないと欠席裁判で不利な判決が出てしまうおそれが高まります。
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(2)弁護士に対応を相談する
不利益を受けないようにするためには、すぐに弁護士に代理人を依頼することです。被告側弁護士を立てれば、必要な答弁書提出や口頭弁論期日への出頭、判決書の取得などをすべて代理して行ってくれるので、欠席裁判となるおそれはありません。
代理人弁護士なしで当事者本人が進める訴訟を「本人訴訟」と言いますが、本人訴訟の場合、圧倒的に不利になってしまいます。司法書士に相談しても、簡易裁判所の代理人しか依頼できないので、地方裁判所や家庭裁判所などで訴訟が起こっている場合には対応不可能です。
訴状を受けとって「欠席したらどうなるのか?」と心配している方がおられたら、すぐに弁護士までご相談ください。
4、まとめ
裁判は欠席すると不利となってしまうケースが多いため、裁判所から訴状が届いたら無視したりせず、なるべく早く内容を確認することが大切です。
しかし、裁判所へ提出する答弁書などの書類の作成や相手方への主張・反論は、法的知識がないとなかなか難しいといえます。
弁護士であれば、法的根拠にもとづいた主張や反論を行うことが可能です。答弁書などの裁判所へ提出する書類についても、法的知識をもとに作成し、裁判所を通じて相手方と適切にやり取りすることができます。
訴訟の対応だけではなく、労働者に訴えられないような環境や就業規則の整備・見直しなどのアドバイスを行うこともできますので、裁判所から訴状を受け取りましたら、まずはベリーベスト法律事務所 川崎オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています