不法就労をさせると雇用主も罰せられる? 罰則や雇用時の注意点を解説

2020年08月05日
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不法就労をさせると雇用主も罰せられる? 罰則や雇用時の注意点を解説

日本人労働者の不足により、建設現場やコンビニ、飲食店などさまざまな業種で働く外国の方は増えました。

平成27年の国勢調査によると、川崎市の15歳以上の外国人就業者数は1万312人にものぼります。
今や外国人労働者は、日本社会には欠かせない存在となっています。

外国人を雇う際、日本人を雇う際以上に注意しなければいけません。
不法就労をさせてしまった場合には、経営者も罰せられる可能性があるのです。

そこで今回は、不法就労をさせてしまった場合の罰則や、外国人雇用の際にチェックすべきことなどをご説明します。

1、不法就労にあたる3つのケース

不法就労とは、外国人が日本で違法に働くことです。外国人の就労にはさまざまな規制があり、具体的には次の3つのケースにあたる場合は不法就労に該当します。

  1. (1)不法滞在者が働く

    外国人が日本に滞在するためには、「在留資格」が必要です。
    在留資格は「留学」や「外交」、「日本人の配偶者」など29種類あります(令和元年11月時点)。

    不法に入国するなどしてこれらの在留資格なく滞在することや、在留期間を過ぎて日本にとどまること(オーバーステイ)は違法です。

    滞在する許可がないため、もちろん働くことはできません。
    不法滞在者が働くことは不法就労にあたります。

  2. (2)働く許可がないのに働く

    在留資格のうち、以下の資格では就労が許可されていません。

    • 文化活動
    • 短期滞在
    • 留学
    • 研修
    • 家族滞在

    これらの資格を持つ外国人が働いて収入を得るためには、入国管理局に申請して「資格外活動許可」を受けなければいけません。

    ただし、資格外活動許可があっても、労働時間は原則週28時間までに制限されており、風俗店やパチンコ店などで働くことは禁止されています(入管法施行規則第19条5項)。

    たとえば、留学生が資格外活動許可なくアルバイトをしたり、許可があっても28時間以上働いたりした場合は、不法就労です。

  3. (3)許可された範囲を超えて働く

    在留資格のうち「技術」や「医療」、「教育」、「企業内転勤」など18資格では、限定された分野での就労が許可されています。

    ただし、許された範囲の仕事をすることに問題はありませんが、その範囲を超えて別の仕事をした場合には、不法就労に該当します。

    たとえば、「医療」の資格で来日したものの工事現場で働いた場合には、不法就労に該当します。

2、不法就労で雇用主も罰せられる?

従業員が不法就労をしていたとわかり、「自分も逮捕されるのか」と不安に思っている雇用主もいるでしょう。不法就労をさせてしまった場合、たとえ不注意だとしても責任を問われます。

  1. (1)雇用主も不法就労助長罪に問われる

    不法就労の外国人を働かせたり、不法就労をあっせんしたりした場合は、入管法の「不法就労助長罪」に問われます(入管法第73条の2)。

    罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその両方です。

    不法就労助長罪で注意しなければいけないのは、就労資格がないことを知らなかったとしても、処罰を免れることはできないということです。

    採用面接で「就労の許可がある」と言っていた、雇用契約の際に在留カードを確認し忘れたという場合でも、雇用主はきちんと確認しなかった過失があるとみなされるのです。

    ただし、流暢な日本語を話し日本名を名乗るなど、面接で外国人であると判別するのが難しい場合には、罪に問われないこともあります。

  2. (2)外国人従業員は退去強制

    不法入国者や主に在留資格以外の活動で収入を得ていた外国人労働者、オーバーステイの外国人は、原則として退去強制となります(入管法第24条)。

    本国へ強制送還され、その後5〜10年間は日本に入国できません。

    また、日本で働く資格がないと知りながら外国人を就労させたり、不法就労をあっせんしたりした外国人事業主も退去強制の対象です。

3、「バレないから大丈夫」ではない!

オーバーステイや就労資格のない外国人を雇っている雇用主は、「これくらいならバレないだろう」と思っているかもしれませんが、そうはいきません。いろいろな手段で雇用状況は把握できるため、いつ摘発されてもおかしくありません。

  1. (1)在留カードでチェックできる

    日本に中長期間在留する外国人には、国から「在留カード」というカードが交付されます。

    在留カードには氏名や生年月日のほか、在留資格や在留期間、就労制限の有無などが記載されていて、合法的に日本に在留していることを証明する証明書の役割があります。

    情報に変更があればすぐに変更を届け出なければいけないため、カードには常に最新の情報が記載されています。

    警察官の職務質問や通報など、不法就労はさまざまな経緯で発覚します。
    在留カードは携帯が義務付けられており、在留カードをチェックすれば不法就労かどうかがすぐにわかるのです。

  2. (2)マイナンバーで所得がわかる

    個人番号(マイナンバー)は日本人だけでなく、外国人が初めて住民票を作成した際にも交付されます。

    外国人がアルバイトなどをする際には、勤務先にマイナンバーを通知しなければいけません。

    マイナンバーにより納税状況がわかり、そこから所得がわかります。
    就労資格のない外国人が働いた場合や、資格外活動許可で認められた時間以上働いている場合には、所得の不自然さから不法就労が発覚することがあります。

  3. (3)外国人の雇用状況は届け出が必要

    「外国人を雇ったことを内緒にしていれば、不法就労もバレない」と思うかもしれませんが、それも違法です。

    すべての事業主は、特別永住者や「外交」「公用」の在留資格保有者を除き、外国人の雇用や離職について、ハローワークへ届け出る義務があります(雇用対策法第28条)。

    この届け出を怠った場合には、30万円以下の罰金が科されます。

    令和2年3月1日以降の届け出については、対象外国人の在留カード番号の記載も義務付けられています。

4、在留カードを確認する際の注意点

不注意だったとしても、不法就労をさせると雇用主も罰せられます。そのため、雇用の際は在留カードをしっかりとチェックし、就労に問題がないかを確認しなければいけません。特に次のような点をチェックしましょう。

  1. (1)就労制限の有無、在留資格

    在留カードの表面には「就労制限の有無」と「在留資格」の欄があります。

    就労制限の有無の欄に記載されるのは、次のいずれかです。
    記載内容によって就労の可否が異なりますので、注意してください。

    • 就労不可:原則、雇用できない
    • 就労制限なし:雇用に問題はない
    • 在留資格に基づく就労活動のみ可、指定所記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可、指定書により指定された就労活動のみ可:就労に制限あり

    また、在留資格のうち「法律・会計業務」「教育」など18資格は、定められた範囲でのみ就労が認められています。
    その定められた範囲以外の仕事に該当する場合、雇用してはいけません。

    なお、在留資格の「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」については、就労に制限はありません。

  2. (2)資格外活動許可の有無

    「留学」などの在留資格は就労が許されていませんが、「資格外活動許可」があれば一定の時間は働くことが認められています。

    また、限られた範囲で就労が認められている18資格でも、資格外活動許可があればその範囲以外の就労も可能です。

    資格外活動許可の有無は、在留カードの裏面に記載されています。
    表面の就労制限の有無が「就労不可」となっていても、裏面に「許可」と記載されている場合には、雇っても問題はありません。

    なお、許可の記載には「原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」または「資格外活動許可所に記載された範囲内の活動」と条件も書かれていますので、そちらもチェックしてください。

    「資格外活動許可書」を保有している場合には、そこから確認することも可能です。

  3. (3)在留期間

    在留期間を過ぎたオーバーステイの外国人を雇用すれば、不法就労にあたります。

    在留カードの表面には在留期間が記載されていますので、在留期間が切れていないか必ずチェックしてください。

    また、雇用後に、いつの間にか期間が切れていることもあります。
    その場合も不法就労となりますので、在留期間は定期的に確認しましょう。

    なお、在留カードが有効なものかどうかは、入国管理局のホームページから確認できます。
    ただし、有効な在留カード番号を悪用した偽造在留カードの可能性もあるので、全面的に信用はしないようにしましょう。

    また、カードはコピーではなく、必ず現物を確認してください。

5、まとめ

外国人雇用にあたっては、経営者側も雇用系役前に不法就労ではないかをしっかりとチェックしなければいけません。不法就労をさせた場合には罰せられるため、事業にも大きな影響がでる可能性があります。

不法就労をさせていないか不安な場合、また、不法就労をさせてしまったという場合には、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスにご相談ください。弁護士がお客さまの状況をお伺いし、対応策をご提案いたします。どうぞお気軽にお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています