自首したい。弁護士に相談するメリットは?身柄拘束されない可能性も
- その他
- 自首
- 弁護士
テレビドラマなどでは、犯人が警察へ自首するというシーンを目にすることがあります。罪を犯してしまった時は、多くの場合近くの警察署へ足を運ぶことになるでしょう。なお、多くのドラマではひとりで出頭しているケースが多いように思いますが、自首をする際、弁護士が同行することも少なくありません。
犯罪を犯してしまった人が出頭する際に弁護士を同行させることは、その後の取り調べや裁判などで正当な権利を行使するうえで有用です。それは犯罪の事実が明らかになっていない段階で出頭する「自首」において、特に顕著です。自首することと、自首する段階で弁護士がサポートについていることで、逮捕されないことも期待できるのです。
もしあなたが何かの罪を犯しており、それが捜査機関に発覚していないのであれば、すみやかに弁護士に相談することをおすすめします。その理由について、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士が解説します。
1、逮捕される場合、されない場合とは?
罪を犯しても、「逮捕」すなわち身柄の拘束をされるときと、逮捕されないときがあります。その違いについてまずは知っておきましょう。
-
(1)逮捕・勾留される身柄事件
逮捕とは、警察や検察などの捜査機関が犯罪といった事件の全貌を明らかにする過程で、その身柄を拘束することを許された特別な処分です。
逮捕というと、皆さんの多くは警察が容疑者に逮捕状をみせたあと手錠をかけて連行、というテレビドラマで見かけるようなイメージをお持ちではないでしょうか。逮捕にはこのパターンがもっとも多く、これを通常逮捕といいます。
捜査機関が容疑者を逮捕するためには、刑事訴訟法第199条1項2項が定めるように「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」と「逮捕の必要」が必要です。「逮捕の必要」とは、刑事訴訟規則第143条の3に以下のとおり定められています。- 容疑者の年齢および境遇
- 犯罪の軽重および態様
- 容疑者が逃亡するおそれの有無
- 容疑者が罪証を隠滅するおそれの有無
- その他の事情
なお、刑事訴訟規則第143条の3は裁判所が捜査機関から請求を受けた逮捕状発布の必要性を判断するための基準でもあります。実際は別の事件を取り調べるためや事件が社会に与える影響などを考慮したうえで、拡大解釈しながら逮捕状を発行しているケースも多いようです。
逮捕されると、しばらくの間は警察の留置所や拘置所に身柄を拘束されることが一般的です。このことから、容疑者が逮捕されるような事件を「身柄事件」といいます。 -
(2)逮捕されない在宅事件
事件の内容や容疑者の状況次第では、逮捕されず身柄拘束を受けないまま捜査を続けられ最終的に起訴・不起訴の処分に至ることになります。これを「在宅事件」といいます。
起きた事件が身柄事件になるか、それとも在宅事件になるかについての判断基準の一つは、先述した刑事訴訟規則第143条の3です。
たとえば、以下のような場合は在宅事件になる可能性があります。
•容疑者が罪を認め自首していることから、逃亡や罪証を隠滅するおそれがないこと。
•容疑者の顔や氏名が広く世間に知れ渡っており、逃亡は不可能と考えられること。
•犯罪の内容が軽微であること。
逮捕されたあとでも事件が軽微であると判断された場合は釈放のうえ在宅事件に移行することもあります。在宅事件扱いとなれば、捜査機関による取り調べや証拠提出などの要請に応じる他は、普段と変わらない生活が送ることが可能です。
ただし、在宅事件扱いであろうと裁判となり実刑判決が出た場合は、刑に服することになります。
2、自首について
自首とは、捜査機関が犯罪の事実を把握する前、あるいは捜査機関が犯人を特定する前に、罪を犯した人が自ら捜査機関に出頭して、「私は罪を犯しました」と犯罪の事実を申し出ることをいいます。捜査機関が容疑者を捕まえにくる逮捕に対して、自首は逮捕の反対語のような意味合いもあります。
被害者による告訴がないと公訴などの刑事手続きができない親告罪については、告訴権者である被害者に自らの犯罪行為を申し出る「首服」により、自首と同じ効果が発生します。
自首が成立するためには、以下のようにいくつかの要件が必要とされています。
-
(1)捜査機関に発覚する前であること
刑法第42条では、自首が成立し罪が軽減される要件として「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したとき」としています。
この「捜査機関に発覚する前」とは、過去の判例 によると以下2つのいずれかのことをいいます。
•捜査機関に犯罪の事実が、まったく発覚していないこと
•犯罪の事実は捜査機関に発覚しているが、その犯人は誰なのか、まったく発覚していないこと
つまり、罪を犯したがすでに指名手配されていたような場合では、警察に出頭したとしても自首としては扱われないといえます。 -
(2)捜査機関に対して自発的に申告していること
当然のことですが、捜査機関に対して自身の犯した犯罪の事実を自発的に申告していなければ、自首ではありません。
たとえば、捜査機関による取り調べや職務質問などにおいて、また発覚していない犯罪を自発的に供述した場合は自首にあたります。しかし、すでに発覚している犯罪について捜査機関による取り調べにより自供した場合は、自首に該当しません。 -
(3)罪を完全に認めて、自身の処分を求めていること
犯罪の事実は申告しているものの、それについて刑事責任を認めない場合、あるいは罪の一部しか申告していない場合は、自首として扱われません。
たとえば人を殺傷した事実について自首し、それが正当防衛による無罪を主張した場合は、自首としては扱われないのです。
3、なぜ自首した方がいいのか
もし罪を犯してしまったのであれば、捜査機関が逮捕に来る前に自首することをおすすめします。
罪を犯したとしても、黙っていればバレない、時効まで逃げ切ってみせると考える方もいるかもしれませんが、検察や警察の捜査力を甘く見るべきではありません。また、自首することは罪を犯してしまった人にとって以下のようなメリットが期待できます。
-
(1)在宅事件扱いになることが期待できる
先述のとおり、逮捕・勾留は刑事訴訟規則第143条の3に定めるとおり罪を犯した者に逃亡や罪証隠滅のおそれがある場合などにおいて認められるものです。
したがって、自首した事実によって逃亡や罪証隠滅のおそれがないと判断された場合は、身柄事件ではなく在宅事件になる可能性が高くなるのです。 -
(2)刑の軽減が期待できる
自首しても罪の内容次第では逮捕されますし、のちに裁判で有罪となり刑に服することもあります。
ただし、刑法第42条は自首した人には「その刑を軽減することができる」と定めています。軽減できる量刑の基準は、刑法第68条に定められています。たとえば、有期懲役刑または禁錮刑の場合で自首による刑の軽減が認められると刑期が長期および短期の2分の1が軽減されるのです。罰金についても同様です。
ただし、刑法第42条の規定は裁判官に対する任意的なものです。仮に自首が成立したとしても、事件の悪質さの度合い次第では必ずしも刑の軽減が受けられるわけではないことに注意が必要です。 -
(3)急な逮捕が回避できる
捜査機関の逮捕は、事前の予告なく突然やってくるものです。連行されるときはほとんど準備もできませんし、突然の別れとなるわけですから家族や関係者にも迷惑をかけてしまいます。
この点、しっかりと準備をしたうえで出頭する日を定め家族や関係者に事前の説明ができる自首のほうが、突然の逮捕より好ましいことは明らかです。
4、弁護士に依頼するメリット
あなたが犯してしまった罪を自首するのであれば、ぜひ弁護士に相談することをおすすめします。自首するというあなたの決断を最良の結果にするために、弁護士は以下のような弁護活動を行います。
-
(1)各種のアドバイス
自首すると、捜査機関の取り調べが待っています。弁護士は取り調べに同席することはできませんが、あなたが逮捕されないようにするために取り調べの際にするべき受け答えの方法など、事件に即した有効なアドバイスを行います。
-
(2)出頭に同行
警察に出頭することは、あなたにとってとても不安なことかもしれません。それを少しでも和らげスムーズに出頭できるようにするために、弁護士は事前に警察へ連絡したうえで出頭に同行します。また、弁護士が同行することでその後の捜査機関による不当な捜査を抑止する効果が期待できます。
-
(3)捜査機関と交渉
事件の内容次第では、弁護士はあなたに逃亡や証拠隠滅のおそれがないことから逮捕・勾留の必要性はなく、在宅事件が相当という内容の自首報告書を作成します。また、逮捕されたとしても処分の軽減を求める上申書や意見書などを提出しながら捜査機関と交渉します。
これにより逮捕・勾留が回避されたり刑が軽減されたりする効果が期待できます。
5、まとめ
罪を犯してしまった人にとって自首することは、とても勇気がいることでしょう。しかし、罪を犯した事実は消えませんし、自首すれば逮捕されない可能性もあります。さらにいえば、量刑に差が出るケースは少なくありません。
少しでも未来志向で今後を考えるのであれば、捜査機関があなたを逮捕する前に自首したほうがよいのではないでしょうか。そして、自首する際は弁護士があなたの強いサポーターとなります。
もしあなたが罪を犯し自首を検討しているのであれば、まずはベリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士までご相談ください。刑事事件に関する知見が豊富な弁護士が、あなたやあなたの家族の人生に及ぼす影響を最小限に抑えるため、力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています