逮捕と起訴の違いとは? 不起訴とは? 知っておきたい刑事事件の基本
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よく事件に関するニュースで、「逮捕」と「起訴」という言葉が聞かれますが、その違いをご存じですか?
逮捕と起訴は刑事事件の一連の流れの中で行われますが、両者はまったく違う手続きです。
それぞれのタイミングで適切な対応がとれるかによって、最終的な結果は変わってきます。
そこで今回は刑事事件の基本である逮捕と起訴の違いと対応方法について、わかりやすくご説明します。
1、逮捕と起訴は根本的に違う
「逮捕」「起訴」は両方とも刑事事件ではよく使われる用語ですが、まったく意味が違います。まずは逮捕と起訴・不起訴について詳しくご説明します。
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(1)逮捕と起訴の違い
● 逮捕:
逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合に、短時間、容疑者(被疑者)の身柄を拘束する手続き。主に警察官が行う。
● 起訴:
裁判所に容疑者の審判(裁判)を求める手続き。検察官のみが行う。
逮捕は事件の初期段階で行われることが多い一方、起訴は捜査が進み、裁判という次のステージに移る場面で行われます。
目的も、実行者も、手続きが行われる場面もまったく違うのです。
ではそれぞれ具体的にどのような手続きなのかをご説明します。 -
(2)逮捕とは
前述のように、逮捕とは容疑者の身柄を拘束する手続きです。
すべての事件で行われるわけではなく、逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合にのみ実施されます。
逮捕には具体的には次の3種類があります。- 通常逮捕
- 現行犯逮捕
- 緊急逮捕
「通常逮捕」とは、裁判所に逮捕令状を請求し、その発布を受けてから行う逮捕です(刑事訴訟法第199条)。
逮捕状は罪を犯したと疑われる「逮捕の理由」と、逃亡・証拠隠滅のおそれなどの「逮捕の必要性」がなければ発布されません。
また通常逮捕ができるのは検察官、検察事務官、司法警察職員に限られています。
「現行犯逮捕」とは、犯罪が行われている最中や直後に、逮捕令状なく行える逮捕です(同法213条)。
警察や検察だけでなく、一般の方でもできるという特徴があります。ただしすぐに警察に引き渡さなければいけません。
なお軽微な犯罪の場合は、住所不定であるなど逃亡のおそれがある場合にのみ利用が認められています。
「緊急逮捕」とは、死刑・無期・懲役または禁錮3年以上の刑罰にあたる犯罪を行ったと強く疑われる状況や証拠があり、すぐに身柄を拘束する必要がある場合に、逮捕令状なく行う逮捕です(同法210条)。
逮捕令状の請求は逮捕後に行います。 -
(3)起訴とは
前述のように、「起訴」とは検察官が刑事事件について裁判所に審判を求める処分のことです。公訴の提起とも呼ばれます。
逮捕ができるのは警察や検察、麻薬取締官などですが、起訴できるのは原則として検察官に限られています(起訴独占主義、刑事訴訟法第247条)。
検察官はそれまでの捜査をもとに裁判が必要かどうかを判断し、起訴する場合は「起訴状」という書類を作成して裁判所に提出します。
訴訟条件が満たされていれば、その後裁判が開かれます。「容疑者」は「被告人」へと立場が変わります。
起訴には「公判請求」と「略式命令請求(略式起訴)」があり、公判請求の場合にはその後公開の法定で裁判が開かれ、判決が言い渡されます。
一方で略式命令請求の場合には、原則として即日、書面のみで審理が行われ罰金刑または科料が科されます。
「逮捕 → 起訴」と思われがちですが、起訴は必ずしも逮捕を前提としません。
容疑者の身柄を拘束しない、いわゆる「在宅捜査」の場合、逮捕はせずに書類送検を経て起訴されるケースが少なくありません。 -
(4)不起訴とは
「不起訴」とは捜査の結果、裁判の必要性がないと判断される場合に、裁判所に審判を求めない処分のことです。
不起訴となれば裁判は開かれず、身柄は解放されます。前科もつきません。
不起訴には次の3つがあります。- 起訴猶予
- 嫌疑不十分
- 嫌疑なし
「起訴猶予」とは、容疑者が罪を犯したことを示す証拠が十分にあるものの、裁判をするほどの必要性がないという場合の処分です。
容疑者が高齢であったり、被害が軽微で示談が成立していたりする場合などに選択されます。
「嫌疑不十分」とは、容疑者が罪を犯した疑いはあるものの、事件を起こしたことを示す決定的な証拠がない場合の処分です。
「嫌疑なし」とは、真犯人が見つかるなど、容疑者が犯人ではないと明らかになった場合や、容疑者の行為が犯罪を構成しないことが明白なときの処分です。
また容疑者が死亡した場合や申告罪で告訴が取り下げられた場合などにも不起訴となります。
2、逮捕から起訴までの流れ
逮捕から起訴までの手続きの流れは、次の通りです。
- ① 逮捕
- ② 48時間以内に検察に身柄を送致
- ③ 24時間以内検察が裁判所に勾留請求
- ④ 最大20日間の勾留
- ⑤ 起訴または不起訴
警察による逮捕では、まず容疑者の弁解を聞き、留置の必要がある場合には48時間以内に検察に身柄を送致します。留置の必要がなければ釈放します。
装置を受けた検察も同様に容疑者の弁解を聞き、留置の必要性を判断します。
必要がある場合には24時間以内に裁判所に対して容疑者の身柄を拘束する「勾留」を請求します。
逮捕から勾留請求または釈放までは72時間以内と定められています。
検察官や検察事務官が逮捕した場合は検察への送致の部分は省かれ、勾留請求までの時間は48時間以内となります。
裁判所は容疑者から聞き取りをし、罪を犯したと疑われるなどの「勾留の理由」と、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどの「勾留の必要性」がある場合に勾留を認めます。
勾留期間は原則10日間です。
ただし検察官が延長を請求し裁判所が認めた場合には、さらに最大10日間勾留可能です。つまり勾留期間は最長20日間です。
検察官は勾留の満期までに、起訴・不起訴を判断します。
勾留期間中に処分が決められなかった場合には、「処分保留」として身柄を解放し、在宅捜査を続けて起訴・不起訴を判断します。
3、家族が逮捕されたら弁護士に相談すべき理由
ご自分やご家族が逮捕されてしまった場合、できるだけ早く弁護士に相談することが大事です。それには次のような理由があります。
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(1)身柄解放や不起訴のために活動
逮捕後の最大20日間の勾留は、必ず行われるわけではありません。
そもそも検察が勾留請求しなければ、早期に釈放されるのです。
検察は逃亡や証拠隠滅など、勾留の理由と必要性がなければ勾留請求はしません。
そこで弁護士が逮捕直後から初犯であることや身分などから逃亡のおそれがないことを訴えるなどの弁護活動をすれば、勾留されずにすむ可能性があります。
その場合、在宅での捜査は続きますが、身柄は解放されて自宅に帰れます。
勾留を防ぐには、逮捕から勾留が決まるまでの最大72時間の対応が勝負です。
また勾留が決まったとしても、不起訴となれば裁判にはならず、身体拘束も解かれます。
裁判が開かれないため、前科が付くこともありません。
不起訴(起訴猶予)処分を得るためには、被害者との示談が大切です。
弁護士は拘束されている容疑者に代わって、被害者に謝罪の意を伝えたり、弁償を進めたりして示談交渉します。
また容疑者の反省や家族の監督など、不起訴の判断につながる材料を可能な限り集めて、検察に働きかけます。
初期段階でどれくらい効果的な弁護活動ができるかが、容疑者のその後を左右するのです。 -
(2)接見禁止でも弁護士なら接見できる
刑事事件で逮捕され勾留されると自由に外出できなくなり、接見禁止が付けば家族にも会えなくなります。容疑者は「この先どうなるのか」「家族はどうしているのか」と不安でいっぱいになることでしょう。
ただし接見禁止中でも、弁護士の面会は許可されています。
そこで弁護士は本人の言い分を聞いて取り調べへの対応方法をアドバイスしたり、家族からのメッセージを伝えたりするなどのサポートをします。
「自分の味方がいる」ということは、拘留中の孤独な生活の中で、精神的な支えにもなるはずです。 -
(3)裁判など法的手続きをサポート
再犯であったり重大な罪に該当したりする場合には、弁護活動をしても起訴は避けられないでしょう。
その場合、弁護士は裁判で執行猶予や減刑を得られるようにサポートをします。
被告人に有利になりそうな証拠を集めたり、裁判の対応方法をアドバイスしたりして、被告人にとってできるだけよい判決が得られるように対処します。
もちろん無罪を主張する場合にも、法律の知識に基づき、証拠収集などのサポートも行います。
4、まとめ
刑事事件で逮捕されると長期間身柄を拘束され、仕事をクビになるなどさまざまな影響がでる可能性があります。できるだけ影響を抑えるためには初期対応が肝心です。ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスでは、刑事弁護専門チームと連携をとりながら、逮捕直後に警察署に駆けつけるなどして身柄解放や不起訴、執行猶予を目指してできる限りの対応をいたします。お困りの方はどうぞお早めにご相談ください。
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