児童ポルノ禁止法とは? 所持だけ・見るだけで逮捕されるって本当?
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令和5年1月、横浜地検川崎支部で13歳未満の実子に対してわいせつな行為をした男に対する刑事裁判が行われ、児童ポルノ禁止法違反の罪などで起訴された男がおおむね起訴内容を認めたことが報道されました。
児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)は、平成26年に法改正されています(令和4年改正は各名称などの変更のみ)。 しかし、具体的にどのようなものが児童ポルノに該当するのか、持っているだけ(所持)やサイトなどを見ただけ(閲覧)にも違法性があるのかなどについては、よくわからないという方も少なくありません。
本コラムでは、児童ポルノについての基本的な知識や罰則、そして逮捕や起訴について、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士が詳しくご説明します。
1、児童ポルノと罰則
はじめに、児童ポルノの定義と、関係する罰則について確認します。
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(1)児童ポルノとは何か
児童ポルノを簡単に説明すれば、「18歳未満の児童のわいせつな写真・動画やデータ」のことです。ここでいう「わいせつ」には服を脱いでいる状態から性交まで含まれ、それらが視覚で認識できる描写は児童ポルノとされます。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律 2条3項
この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。 -
(2)アニメなど「二次元」は対象外
アニメや漫画などいわゆる「二次元」と呼ばれる創造物については、児童ポルノに当てはまらないとみるのが一般的です。もっとも、この点についてはこれまで議論が行われているほか、不特定多数者に対して作品を公開・有償で販売した場合は「わいせつ物頒布等」という行為にあたり、罪に問われる可能性があります。
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(3)規定する法律
児童ポルノについては、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」で規定されています。「児童買春・児童ポルノ禁止法」という通称でも呼ばれるこの法律では、児童ポルノ以外に児童買春関連の行為についても要件や罰則が定められています。
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(4)規定する法律
児童ポルノについては、以下のような行為をすると違反になります。
- ① 所持
- ② 提供
- ③ 陳列
- ④ 製造
- ⑤ 運搬
- ⑥ 輸出入
このうち「所持」について、以前は単に所持しているだけでは処罰の対象になりませんでしたが、平成26年に法律が改正されたことで単純所持も禁止されるようになりました。
ただし、児童ポルノにあたるためには、性的好奇心を満たす目的をもって所持しているかがポイントです。そのため、親が子どもの写真や動画を取ってそれを所持していた場合、たとえ裸のシーンが写っていても、上記の目的に該当することが考えにくいため、児童ポルノの単純所持として処罰される可能性は低いといえます。 -
(5)児童ポルノの罰則
児童ポルノの罰則は、違反行為によって重さが異なります。
① 所持
所持の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。個人にも適用されうるので、対象者が多いと考えられる行為です。
② 提供
提供の場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。インターネットが普及している近年は、サイトやメールを通じた行為が対象となることが考えられます。
③ 陳列
陳列の場合、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処され、または併科(両方)になります。この行為には上記の「提供」に似た意味合いも含まれ、不特定多数への提供を行うと陳列にあたります。
④ 製造
製造の場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。製造という言葉からは想像しにくいかもしれませんが、児童本人に体の写真を撮らせ、そのデータを受け取った場合もこの対象となる場合があります。
⑤ 運搬・輸出入
運搬・輸出入の場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。 -
(6)児童ポルノの時効
刑事の時効が成立すると、検察官による起訴ができなくなります。期間は行為内容にもよりますが、たとえば所持では3年、製造では5年です。
2、児童ポルノ法違反による逮捕と起訴
上記でご説明したように、児童ポルノ法違反に問われると刑罰が科されるため、場合によっては逮捕~起訴となることが考えられます。以下では、所持による逮捕と起訴についてまとめました。
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(1)所持で逮捕されるきっかけ
個人で利用するために所持している場合、どのようなきっかけで発覚し、逮捕されるのでしょうか。ケース・バイ・ケースのため、必ずその流れになるとは限りませんが、いくつか想定される例をご説明いたします。
・児童の補導
児童から直接データが送られていた場合などは、その児童が補導されることで発覚して逮捕されることが想定されます。
・インターネット上のパトロール
陳列行為が発覚するきっかけでもありますが、児童ポルノサイトからダウンロードすると、インターネット上でのパトロールに見つかって逮捕されることが想定されます。
・不審な行為
たとえば児童の近くで不審な行為をしていて通報され、その流れて所有物を調べられた際に児童ポルノの所持が分かり、逮捕されることが想定されます。 -
(2)逮捕されない場合もある
警察が来たり声をかけられたりすると、そのまますぐに逮捕されてしまうかといえば、そうとも限りません。まずは任意の取り調べが行われて逮捕の必要性が判断されたり、基本的に在宅で、呼び出されたときに捜査協力したりといったケースも考えられます。
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(3)状況によっては勾留まで至る可能性も
逮捕されないケースもある児童ポルノ所持ですが、状況によっては逮捕から勾留まで至ってしまう場合もあります。たとえば自身が撮ったものを大量に所持していたり、インターネットにアップロードしていたりする場合です。そもそもこれらのケースは単純所持ではなく製造や陳列にあたる可能性もあります。
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(4)初犯は略式起訴の可能性が高い
児童ポルノに関する初犯の場合、簡易的な裁判方式である「略式起訴」での罰金刑となる可能性もあります。
3、まとめ
児童ポルノで逮捕されたり起訴されたりする可能性が出たら弁護士に相談することがおすすめです。悪質性の低い場合や被害者との示談により、不起訴処分や罰金で終わる可能性もあります。
しかし、本人だけでは被害者との連絡を取ることは難しいため、弁護士を介して示談交渉を行うと良いでしょう。また、被害者やその家族が示談にすんなりとは応じないことも多いです。もし示談が成立しなければ、、公判請求され、実刑判決を受けた場合には刑務所へ収容されることとなります。
児童ポルノについて「後悔している」「不安で眠れない」とお悩みの方は、刑事事件の経験豊富なベリーベスト法律事務所 川崎オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています