場合によっては実刑になる公然わいせつ罪。夫や息子が公然わいせつ罪で逮捕されたとき、家族ができることとは?

2018年11月29日
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場合によっては実刑になる公然わいせつ罪。夫や息子が公然わいせつ罪で逮捕されたとき、家族ができることとは?

いつもどおり学校や会社へ出掛けたはずの夫や息子。それなのに、公然わいせつの容疑で現行犯逮捕されたという連絡が届いたら、あなたはどうしますか?

公然わいせつといえば、テレビでも報道されることがある、性犯罪のひとつです。妻や母親にとって衝撃的な出来事でしょう。逮捕されたら会社からは解雇され、学校は退学処分になってしまうかもしれない……という不安を抱くこともあるかもしれません。

ここでは、公然わいせつ容疑で逮捕されたあとの流れから、残された家族にできることなどについて川崎オフィスの弁護士が解説します。

1、公然わいせつ罪とは?

公然わいせつ罪は、刑法174条に規定されている「公然」に「わいせつな行為」をすることで成立する性犯罪です。

逮捕された方や家族の中には「誰も見ていなかったはずなのに」「なぜ見られていないのに犯罪になるのか?」などの疑問を持つ方がいるようです。まずは公然わいせつ罪の規定について解説します。

  1. (1)公然わいせつ罪の構成要件

    刑法174条に記されている「公然」とは、不特定または多数の方が認識できる状態をいいます。ここで重要なのは、実際に見られたかどうかではなく、誰かに見られる可能性があるかどうかです。よって、深夜の公園や公共駐車場に停めた自家用車内なども「公然」とみなされます。また、インターネットを使ったリアルタイム配信も「公然」であるといえるでしょう。

    一方で、公然わいせつ罪における「わいせつ」とは、過去の判例から「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通の人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するもの」とされています。

    わいせつな行為とみなされる行動には、明確な基準はありません。状況によってある程度判断が異なる部分がありますが、具体的には、以下のような行為は公然わいせつ罪に該当します。

    • 泥酔し、公園で全裸になった
    • 罰ゲームのため、電車内で下着を脱いで局部を露出させた
    • すいている電車の座席で隠しながら自慰行為をした
    • スーパーマーケットの駐車場に車を停め、車内で自慰や性交行為をした
    • 全裸や性行為をインターネットでリアルタイム配信した


    「誰にも見られていないから大丈夫」「他人に迷惑をかけていないから犯罪にならない」という考えは大きな誤りです。公然わいせつのような社会的な風俗に悪影響があると考えられる行為もまた、犯罪として罰せられることになります。

  2. (2)公然わいせつ罪の刑罰

    公然わいせつの刑罰は、刑法174条で「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金、拘留、科料」と定められています。拘留(こうりゅう)は1日以上30日未満の身柄の拘束で、科料(かりょう)は1000円以上1万円未満の金銭を支払う罰金刑です。

    公然わいせつ罪は行為自体が犯罪とみなされているため、強制わいせつなどのように、直接的な被害を受けた方がいないケースもあります。また、「個人の性の自由を阻害する」という性質の犯罪ではないこともあり、刑罰には罰金刑などもあり、被害者がいる罪に比べて軽いといえるでしょう。

    しかし、前科がついてしまうことには変わりありません。将来への影響を考えれば、逮捕された本人はもちろん、家族も、可能な限り前科がつかないように対応していく必要があるでしょう。

2、公然わいせつ罪の現行犯逮捕

公然わいせつ罪で逮捕されるケースには、現行犯逮捕通常逮捕の2種類があります。

現行犯逮捕は、わいせつな行為をした場所で即座に逮捕されるものです。たとえば、わいせつ行為を目撃した通行人が警察に通報し、駆けつけた警察官が現行犯逮捕をするケースが考えられます。

一方で、その場では逮捕されず、わいせつな行為の後に逮捕されることを通常逮捕と呼びます。

また、未成年者の場合も、公然わいせつ罪に該当するような犯罪行為をすれば逮捕されます。14歳以上の未成年者の場合は、自分のした行為を理解しているとみなされるため、検察へ身柄が移されるまでは成人と同じ手続きが取られ、捜査が進められることになります。

3、公然わいせつ罪で逮捕されたらどうなるの?

それでは、公然わいせつ罪で逮捕されたらどうなるのか、逮捕されたあとの流れを解説します。

  1. (1)送致されるまで

    罪を犯した可能性のある者は「被疑者」と呼ばれるようになります。逮捕された被疑者は、まず、警察で取り調べを含む捜査を受けます。

    逮捕されたタイミングで直ちに身柄を拘束されるため、自宅に帰ることができません。また、家族や友人、会社などにも連絡が取れず、家族ですら勾留されるまで面会が禁じられます。ただし、依頼を受けた弁護士だけは、唯一、被疑者と面会(接見)ができます。

  2. (2)勾留請求されるまで

    逮捕後、被疑者は検察へ「送致(そうち)」されます。ただし、初犯で罪が軽いと判断される場合は、「微罪処分」と呼ばれる措置が行われ、検察へ送致されることなく釈放されることもあります。

    検察へ送致されたあとは、再び検察が捜査を行います。24時間以内に起訴するかどうかを決められないときは、引き続き身柄を拘束する「勾留(こうりゅう)」の期間延長を裁判所へ求め、「勾留請求」を行います。

    検察が「勾留請求」しなければ、ひとまずは釈放されて帰宅できます。ただし、このタイミングで釈放されたとしても、捜査が終わったというわけではありません。

    もちろん「罪を犯した可能性はない」として釈放されることもあります。しかし同時に、引き続き「被疑者の立場であり、起訴するかどうかがこの段階では決められないが逃亡する恐れはない」として、在宅捜査となるケースがある点を覚えておきましょう。その場合は、警察や検察に求められた際は、直ちに対応しなければなりません。

  3. (3)起訴されるまで

    検察官の勾留請求をもとに、裁判官は勾留質問をした上で勾留決定を行います。勾留されると原則10日間、延長が認められると最長で10日間加算され、20日間に渡って身柄が拘束される可能性があります。

    この拘留期間中に検察官は被疑者を起訴するかどうかを判断します。起訴された場合は裁判を受けることになります。ただし、公然わいせつ罪の場合は、統計上、公開される通常の刑事裁判ではなく、書類のみの手続きによって刑罰を決める略式起訴となるケースのほうが多いようです。

  4. (4)被疑者が未成年者のときは?

    なお、逮捕された被疑者が未成年だった場合は、勾留されるタイミングから、家庭裁判所へ送致され、少年審判を受けることになります。そして、不処分か保護観察、少年院送致の3つのうちから適切と考えられる審決が下ります。

    未成年者の場合のみ、途中からプロセスが変わるのは、未成年で罪を犯してしまった者への反省と更生を促しているためです。状況によっては、家族から離れることを推奨されることもあるでしょう。

4、公然わいせつ罪で逮捕されたら弁護士に相談したほうがいいの?

公然わいせつ罪で夫や息子が逮捕された場合、早期釈放や不起訴を目指して動くことが大切です。長期間拘束されることになれば、会社や学校を休み続けることになり、間違いなく影響が出ることが考えられます。まず、逮捕されたことを隠し切れなくなるでしょう。さらに前科がついてしまえば、将来、就ける職業が限られてしまうなど、何らかの制約が加わります。

長期拘束や前科がつくことを避けるためには、弁護士に弁護活動を依頼し、早期釈放や不起訴を獲得できるように働きかけてもらう必要があります。他にも以下のようなメリットがあります。

  1. (1)心理的不安の解消

    前述のとおり、逮捕されてから最長72時間は家族に面会することができません。被疑者の罪を追及する警察官としか話ができず、被疑者本人の味方がいないという状況下におかれることになります。

    しかし、依頼を受けた弁護士であれば、被疑者と自由に面会ができます。そのため、家族の思いを代理で伝えてもらうこともできるでしょう。被疑者に黙秘をアドバイスすること等ができます。

    場合によっては微罪処分を狙い、検察への送致前の釈放を目指すことも可能です。

  2. (2)略式起訴に持っていく

    公然わいせつ行為が事実である場合は、隠したり否認したりするのではなく、すみやかに認めることによって、被疑者が望む結果を出せる可能性が高まります。

    公然わいせつ罪では、要件を満たすことによって、略式起訴による罰金刑で済ませることも可能です。略式起訴が決まれば、直ちに釈放されて通常の生活に復帰できます。実生活への影響を最小限に抑えることができるでしょう。

  3. (3)勾留の回避

    検察官からの勾留請求を受け、裁判官が勾留を許可します。このとき、弁護士が勾留回避に向けて意見を述べたり、仮に勾留決定がされたとしても勾留の不服申し立てを行ったりすることができます。

5、まとめ

今回は、公然わいせつ罪がどのような罪なのかにという基礎知識と、逮捕後の流れ、家族ができることについて解説しました。

夫や息子が公然わいせつ罪で逮捕されてしまった場合、本人を早く自由の身にするために、家族だけで対応できることは、残念ながら、あまり多くありません。起訴までの時間も短いことから、できるだけ早いタイミングで刑事事件対応の経験が豊富な弁護士に相談し、依頼してください。また、目撃者がいた場合は示談交渉が必要になる場合もあります。適切な対応をするためにも弁護士に相談するとよいでしょう。

弁護活動による働きかけによって早期保釈や略式起訴を目指し、迅速に日常生活へ復帰することができます。

公然わいせつ罪に関わってしまい、逮捕されてしまった本人はもちろん、あなた自身や家族全員の将来への影響を最小限に抑えたいときは、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスまでご連絡ください。川崎オフィスは、川崎の裁判所や検察庁に近いです。また、逮捕直後であっても、神奈川県川崎警察署や神奈川県幸警察署にも近いため、迅速に弁護士が駆けつけ、対応することも可能です。

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