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ヘイトスピーチとは|条例のほか刑法の罰則が科せられることはある?

2023年02月15日
  • 暴力事件
  • ヘイトスピーチ
  • 罰則
ヘイトスピーチとは|条例のほか刑法の罰則が科せられることはある?

川崎在住の在日韓国人女性がネット上に差別的な書き込みをされたことで法務局に人権侵犯被害申し立てを行い、令和5年2月には、そのうち計45件が違法であると判断されました。
違反と判断されたネット上の書き込みは、まとめサイトの記事やTwitterでの投稿に対してのものです。

特に、在日韓国・朝鮮人に対するヘイトスピーチは全国的にも問題となっていますが、もし自分がヘイトスピーチにあたることを言ってしまった場合、何か罰則を受けることはあるのでしょうか。

本コラムでは、ヘイトスピーチに関する法律や条例、罰則などについて、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士が解説します。

1、ヘイトスピーチとは

そもそもヘイトスピーチとは何なのか、ヘイトクライムとどう違うのかについて解説します。

  1. (1)ヘイトスピーチの意味

    ヘイトスピーチとは、特定の人種や民族、宗教などに属する集団や個人を指して、攻撃的・差別的表現をすることです。最近では、SNSの普及に伴い、インターネットを通じて匿名で発信されることも少なくありません。

  2. (2)ヘイトスピーチとヘイトクライムとの違いとは

    ヘイトスピーチとよく似た言葉に「ヘイトクライム」もあります。ヘイトクライムとは、ある人種や民族などに属する集団や個人に対して、脅迫したり暴力をふるったりする犯罪行為のことをいいます。ヘイトスピーチは差別にもとづく言論であるのに対し、ヘイトクライムは差別にもとづく犯罪であることに違いがあると言えるでしょう。

  3. (3)ヘイトスピーチが問題になったきっかけ―京都朝鮮学校襲撃事件

    日本でヘイトスピーチが大きな問題になったきっかけは、京都朝鮮学校襲撃事件です。平成21年12月から翌22年にかけて、京都市にある京都朝鮮第一初級学校が在特会(在日特権を許さない市民の会)に3度にわたって襲われました。この事件で、京都地裁は在特会に1226万円の損害賠償と学校周辺での街宣活動の禁止を命じました。

    この事件はヘイトスピーチが人種差別であり民事上違法な行為にあたるため損害賠償の対象となることを認めた、初めての司法判断となりました。

2、ヘイトスピーチ解消法とは

平成28年6月、ヘイトスピーチを規制するための法律である「ヘイトスピーチ解消法」が成立・即日施行されました。ヘイトスピーチ解消法とはどのような法律なのでしょうか。法律ができた経緯を踏まえて見ていきましょう。

  1. (1)ヘイトスピーチ解消法ができた経緯

    京都朝鮮学校襲撃事件において、被告は京都地裁の判決を不服として控訴し、その後大阪高裁の判決も不服として最高裁に上告していますが、最後まで一貫して京都地裁の第一審判決が支持されていました。しかし、集団に対する損害賠償金支払い命令を命じることは不法行為に関する民法の解釈を逸脱しているとの問題が残っていました。

    その後、平成26年、国連から日本政府に対してヘイトスピーチを法規制するよう勧告されます。その後、同年9月に国会に対して、ヘイトスピーチを規制する法律制定を求める意見書が東京都国立市議会で採択されたことをきっかけに、同様の動きが全国の地方自治体に広がりました。翌年平成27年3月からは法務省が「ヘイトスピーチ、許さない」とかかげた広告を作成するなど啓発活動を強化します。そうして平成28年ヘイトスピーチ解消法の制定に至ったのです。

  2. (2)ヘイトスピーチ解消法における「不当な差別的言動」の3類型

    ヘイトスピーチ解消法2条に、「不当な差別的言動」に関する定義を記載していますが、法務省がどのような行為がこれに当たるのかを3つの類型に分けて示しています。

    ①「その生命、身体、自由、名誉もしくは財産に危害を加える旨を告知」する発言(危害告知)
    これは、たとえば「○○人は殺せ」「処刑しろ」といった非常に攻撃的な表現があげられます。このような表現は、「日本人を殺した○○人」のように、「○○人のほうが先に危害を加えてきたのだから、このように言われて当然」という意味合いが含まれているのがその特徴です。そのため、ヘイトスピーチであることをごまかすようなニュアンスで使われることもあります。

    ②「著しく侮蔑」する発言(著しい侮蔑)
    このカテゴリーには、「土人」「シナ人」のように特定の国や地域の出身者を蔑称で呼んだり、「○○人は犬以下だ」など、相手を昆虫や動物、物にたとえたりする表現が含まれます。①とともに使うことで、相手を侮蔑することに対する正当性が主張されることもあります。

    ③「地域社会から排除することを煽動する」発言(排除の煽動)
    ここには、「○○(祖国)に帰れ」「○○人は強制送還すべきだ」「日本から出て行け」といった表現が含まれます。実際のヘイトスピーチデモの場面では、カウンターに対する発言の中で使われやすいとされています。

  3. (3)ヘイトスピーチ解消法の課題

    ヘイトスピーチ解消法はあくまでも理念が書かれた法律であり、ヘイトスピーチに罰則を科するものではありません。この法律ができてからあからさまなヘイトデモはあまり見かけなくなったものの、インターネット掲示板やSNSなどではいまだに特定の国籍や民族への人権侵害にあたる発言が散見されます。これらのヘイトスピーチを規制するには、現段階では刑法や民法など、他の法律条項を適用するしか方法がないのです。このことが、ヘイトスピーチ解消法の課題であると言えるでしょう。

3、各都道府県におけるヘイトスピーチ規制とは

各都道府県などの自治体独自でヘイトスピーチの問題に取り組み、条例を制定しているところがあります。ここでは、どのような条例が定められているのかについてご紹介します。

  1. (1)大阪市で初めて条例が作られる

    平成28年1月「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」が可決成立し、同年7月施行されました。平成25年頃から大阪市周辺ではヘイトスピーチデモ・街頭宣伝がさかんでした。しかし、そんな中、平成26年に京都地裁が京都朝鮮初級学校襲撃事件をヘイトスピーチと認定した決定を、大阪高裁も支持します。これを受けて、当時の大阪市長がヘイトスピーチを「大阪市では許さない」と宣言し、全国で初めてヘイトスピーチを規制するための条例が制定されるに至ったのです。
    大阪市ではこの条例にもとづいてヘイトスピーチ審査会が設けられ、ある差別的表現がヘイトスピーチにあたるかどうかについて調査審議などを行っています。

  2. (2)東京都では人権尊重条例を制定

    平成30年10月、東京都議会で人権尊重条例が可決成立し、翌平成31年4月に施行されました。この条例には罰則はありません。都民に「ヘイトスピーチは許されないもの」と周知・啓発することが目的であって、特定の個人や団体に制裁を加えることが目的ではないためとされています。
    その後、練馬区や台東区での街頭宣伝で使われた「朝鮮人をたたき出せ」などの表現が、「ヘイトスピーチ対策法で規定する不当な差別的言動にあたる」と認定されました。

  3. (3)川崎市では罰則付き差別禁止条例を制定

    川崎市では令和元年12月、全国で初めて刑事罰を盛り込んだヘイトスピーチ禁止条例を可決・成立しました。市の勧告や命令に従わず、日本以外の国・地域に対する差別的な言動を3度繰り返した場合、最大50万円の罰金が科されます。ネット上でも、市内在住の国外出身者に対して不当な差別言動があれば拡散防止のためにその事実を公表するとしています。
    また、神奈川県相模原市でも、現在ヘイトスピーチを規制するための罰則付きの条例が検討されているようです。

4、ヘイトスピーチはどんな刑罰に問われる可能性がある?

ヘイトスピーチはともすれば自らの発言を正当化するために行われうるものですが、いきすぎた言動は刑法上の罪に問われることがあります。では、具体的にどのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。

  1. (1)名誉毀損罪・侮辱罪

    まず問われるのが、名誉毀損罪です。名誉毀損罪とは公の場で具体的な事実を摘示しながら他人をおとしめることをいいます。一方、侮辱罪とは公の場で具体的な事実を摘示せずに他人をおとしめることです。これらの罪は特定の個人に対する誹謗中傷などに適用されるものですが、日本の場合、ヘイトスピーチの対象は在日韓国・朝鮮人であることが多く、在日韓国・朝鮮人はあくまでも集団であり特定の個人ではありません。

    しかし、現行の法律ではヘイトスピーチを取り締まる法律がまだないため、名誉毀損罪や侮辱罪などを適用するしかないと考えられています。ちなみに、名誉毀損罪にあたる場合は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金、侮辱罪にあたる場合は拘留または科料に処せられます。

  2. (2)脅迫罪

    脅迫罪とは、生命や身体、自由、名誉、財産に対して危害を加えることを告知して人を脅すことを指します。たとえば、ある特定の国籍や民族に対して「○○人の家に火をつけるぞ」と脅すケースがこれにあたります。脅迫罪が成立する場合、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。
    しかし、過去の判例によれば、実際に脅迫罪が適用されるのは「その害悪の発生に行為者が直接または間接的にかかわったものでなければならず、その内容はまわりの状況から判断される」ことになっています。(最二小判昭和27.7.25刑集6巻7号941頁)

  3. (3)傷害罪

    直接的な暴力をふるわなくとも、ヘイトスピーチをして対象となる民族や国籍の方々を精神的機能の障害を引き起こすまで追い詰めたときには、傷害罪が成立します。たとえば、拡声器を使って何度も相手の誹謗中傷を続けた結果、相手が精神的にまいってしまってPTSDになれば、傷害罪に問われる可能性があるのです。傷害罪では、15年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。

  4. (4)信用毀損罪・威力業務妨害罪

    ヘイトスピーチは、特定の人種や民族などについてあることないことを公の場で流布し、その対象となった人種や民族などをおとしめる信用毀損罪にもなりえます。また、事例は少ないものの、ヘイトスピーチのやり方によっては威力業務妨害罪が成立することがあります。先述の京都朝鮮学校襲撃事件では、在特会のメンバーが威力業務妨害などの罪で有罪判決を受けています。
    信用毀損罪や威力業務妨害罪が成立すれば、いずれの場合でも3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。

  5. (5)器物損壊罪

    デモ隊によるヘイトスピーチが激化し、ヘイトデモ参加者が周囲にあるものを破壊した場合は、器物損壊罪に問われる可能性があります。京都朝鮮学校襲撃事件では、在特会のメンバーが器物損壊罪でも立件されて有罪判決を受けました。器物損壊罪が成立すると、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料に処せられます。

5、まとめ

ヘイトスピーチは、本来あってはならないものです。
デモや街宣、ネット上で行われているヘイトスピーチに安易に加わってしまうと、ちょっとした出来心であったとしても相手方に訴えられると罰則を受ける可能性があります。

もし、相手方に訴えられそうになった、もしくは実際に訴えられてしまったなどの場合には、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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