熟年離婚なら必ず年金分割を! 再婚後どのような影響があるのかについて弁護士が解説

2019年02月14日
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熟年離婚なら必ず年金分割を! 再婚後どのような影響があるのかについて弁護士が解説

平成28年における川崎市の離婚率(離婚届出件数÷人口)は0.156%で、全国の政令指定都市に定められている20都市の中では18位でした。意外に思う方もいるかもしれませんが、あまり多くはないことがわかっています。

それでも離婚をすることになった場合、財産などを分ける必要があり、年金については「年金分割」を行うことになります。では、離婚後にどちらかが再婚したり、もしくは死亡してしまったりなど、状況が変化した場合、年金に影響はあるのかどうか、ご存じでしょうか。

そこで、川崎オフィスの弁護士が、離婚時の年金分割について解説します。

1、年金分割とは

公的年金は、これまでに納めた保険料の記録をベースに支給額が決まり、老後や障害になったときなどに受給できるものです。一般的には高齢になったときの年金を思い浮かべる方が多いでしょう。

「年金分割」とは、婚姻成立から離婚成立までの期間の記録を、離婚に際し夫婦それぞれに分割することを指します。

厚生年金保険料は給料から天引きされ、給料が高いほど納める額も高くなります。したがって、夫婦のうち、給料の高い方が分割されることによって老後に受け取る年金が減り、給料の低い方が分割を求めることで老後に受け取る年金が増えるのです。

特に、夫の扶養に入っていたという妻は年金保険料を納めていないケースが多いものです。フルタイムで働いていて自身で納めていたケースと比べ、どうしても将来、受け取れる額が少なくなってしまいます。老後のためにも、離婚の際は年金分割請求をするべきでしょう。

ただし、「婚姻期間中の記録」のみを分割するため、老後に支給される年金そのものを分割するわけではない、ということを覚えておきましょう。

  1. (1)年金分割できるケース

    分割の対象となる記録は、会社員が加入している「厚生年金」と、公務員などが加入している「旧共済年金」です。平成27年に、旧共済年金は厚生年金に統一されています。

    配偶者が自営業ならば注意が必要です。配偶者が国民年金のみに加入している自営業などの場合、そもそもひとりずつ年金保険料を支払う必要があるため、分割はできません。離婚時には自営業となっていたとしても、婚姻期間中に厚生年金や旧共済年金に加入していた期間が一部でもあれば、その期間分だけ分割することは可能です。

    制度の対象となる年金と、対象外の年金をまとめると以下のようになります。

    【年金分割を行える加入年金制度】
    • 厚生年金/旧共済年金


    【年金分割を行えない加入年金制度】
    • 国民年金/国民年金基金/厚生年金基金/確定給付企業年金/確定拠出年金/民間の生命保険会社の年金保険など個人で入った年金
  2. (2)手続きはどこで行う?

    年金事務所などで請求手続きを行うことになります。離婚したからといって、自動的に分割されるわけではありません。特に雇用されていた配偶者の扶養家族となっていた方は、忘れずに手続きする必要があります。離婚に際しては必ず年金事務所にも問い合わせるようにしてください。

2、年金分割の制度は2つ

年金分割には合意分割と3号分割の2つの制度があります。さらに、この2つが混合したケースもあるため、注意が必要です。

  1. (1)合意分割制度

    婚姻期間中の厚生年金記録を、夫婦の話し合いまたは裁判所での手続きによって決めた割合で分割する制度です。

    割合の決定には原則、夫婦双方の合意が必要となりますが、合意がまとまらない場合には、一方の求めにより、裁判所が按分割合を決めることもできます。

  2. (2)3号分割制度

    婚姻期間中、「第3号被保険者」だった配偶者が、一方に請求する年金分割のことです。

    「第3号被保険者」とは、会社員や公務員など厚生年金に加入している配偶者に扶養されている人のことです。平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間中につき、相手方の年金記録を分割することができ、分割割合は2分の1と決まっています。

    3号分割は相手方の合意がなくても行えます。したがって、被扶養者だった方が、ひとりで手続きをすることができますし、相手側に許可をもらう必要もありません。

  3. (3)合意分割の対象と3号分割の対象、どちらもある場合

    「どちらもある場合」というのは、たとえば、平成20年4月1日以前から第3号被保険者だったという場合などが該当します。

    ただし、合意分割の請求手続きをすることで、3号分割の請求も行われたとみなされ、3号分割については自動的に手続きされるため、心配はありません。

    夫婦の合意が必要な合意分割をするのが難しい場合、合意分割については諦めて、3号分割のみを請求するのもひとつの考え方となるでしょう。しかしながら、婚姻期間が長ければ長いほど、受け取れる老後の資金が減ってしまうということになります。まずは弁護士に相談することをおすすめします。

3、手続きの流れ

3号分割請求については、相手方の同意なく手続きできるので、請求する側がひとりで年金事務所に行って必要書類を提出するだけでできます。

いずれの請求についても、以下のような流れで行います。

  1. (1)年金分割のための情報提供請求

    まずは、「年金分割のための情報提供請求書」に必要事項を記入し、以下の添付書類をそろえて年金事務所で手続きを行います。

    これによって、分割の話し合いなどに必要な情報を得ることができます。窓口に行けない場合は、郵送にて請求することも可能です。日本年金機構のホームページで確認するとよいでしょう。

    【必要な書類】
    • 請求者本人の国民年金手帳、年金手帳または基礎年金通知番号
    • 戸籍謄本(もしくは戸籍抄本)※婚姻期間などを明らかにできること
    • 事実婚の場合は、世帯全員の住民票の写しなど、事実婚を証明できるもの
  2. (2)分割割合の決定

    取り寄せた「年金分割のための情報提供請求書」に、「按分割合の範囲」も書かれているので、それを参考にしながら分割割合を決めていきます。原則、夫婦で話し合って決めますが、合意に至らない場合は調停や裁判で決めることになります。ほとんどの場合が、2分の1ずつに分割することになるでしょう。重要なのは、必ず公正証書、調停調書、判決書に年金分割に関して明記することです。

  3. (3)分割手続き

    夫婦で年金事務所に行き、年金分割の改定請求をします。もしくは、どちらか一方のみが手続きに行く場合は、分割割合の合意が取れていることを証明する公正証書、調停調書、判決書などが必要となります。

4、年金分割の請求期限について

年金分割の請求期限は離婚後2年以内となっています。自動的に年金分割されるわけではないため、忘れずに手続きする必要があります。ただし、離婚後に一方が死亡した場合は、死亡後1ヶ月以内に分割請求の手続きが必要になります。この際、合意分割の場合は分割割合についての合意ができていることを証明する書類が必要です。

5、年金はいつから受け取ることができる?

年金の受給開始年齢は、原則65歳からとなっています。以前は、原則60歳から支給されていたのですが、支給開始年齢が引き上げられたことで、65歳となりました。

この引き上げの段階的な措置として、男性であれば昭和36年4月1日以前に生まれた方、女性であれば昭和41年4月1日以前に生まれた方は、60歳から65歳までの期間に「特別支給の老齢厚生年金」を受け取ります。「特別支給の老齢厚生年金」の受給開始年齢は、生年月日と性別によって細かく設定されていて、それぞれ異なります。詳しくは年金事務所に問い合わせたほうがよいでしょう。

6、一方が再婚もしくは死亡したら年金の支給はどうなる?

年金分割は、婚姻期間中の年金記録を分割するものなので、離婚後に一方が再婚もしくは死亡したとしても、双方の年金の支給に影響はありません。

元配偶者が再婚してから死亡した場合は、再婚相手に遺族厚生年金が支給されることになりますが、この遺族厚生年金は年金記録に基づいているので、元々、離婚時の年金分割の影響を受けた金額が支給されることになります。当然、元配偶者には遺族厚生年金を受け取る権利はないため、手続きなどはありません。

7、まとめ

今回は、離婚時の年金分割について解説しました。年金は老後の生活において大切なお金です。夫婦の間でも、稼ぎの違いから年金を納めた額に違いが出ますが、共に結婚期間の生活を支えたことには差がありませんので、年金記録も平等に分けたいものです。

離婚に伴う年金分割で不安なことがありましたら、公証役場や家庭裁判所の近くの、ベリーベスト法律事務所・川崎オフィスで相談してください。川崎オフィスの弁護士があなたに適したアドバイスを行います。

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