ネットショップ運営者が知るべき「トラブルに巻き込まれない」対策法

2019年11月06日
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ネットショップ運営者が知るべき「トラブルに巻き込まれない」対策法

川崎市のホームページでは「いまどき相談事例」として、消費者から寄せられたさまざまなトラブルが掲載されています。中でも「インターネット通販」に関するトラブルは複数紹介されており、インターネット上の売買契約におけるトラブルが多いことがわかります。

川崎市サイト上では消費者側の相談でしたが、ネットショップの運営者としてもトラブルに巻き込まれないために何かできることはないかと考えることはごく自然なことです。そこで本コラムでは、ネットショップ運営者が遭遇しがちなトラブルと、トラブルを防ぐための対処法を解説します。

1、ネットショップの運営でよくあるトラブル

ネットショップの運営者がやってしまいがちなミスやよくあるトラブルを知っておき、万が一に備えるようにしましょう。

  1. (1)誇大表示、広告

    お客様に商品を購入してもらうため、誇大表示や広告を行ってしまうことがあるかもしれません。

    しかし、商品を実際よりもよく見せかける表示や、過大な広告によって消費者を購入に誘導させることは各種法令によって禁じられています。違反すると景品表示法違反や特定商取引法違反に問われ、措置命令や課徴金納付命令などの処分を受ける可能性があります。万が一、命令に従わなかった場合には罰則が設けられているため注意が必要です。

  2. (2)商品を送ったのに代金を支払ってくれない

    ネットショッピング決済の中で、注目度が高まっているのが代金の後払いです。消費者ニーズを満たすことで売り上げにつながりやすく、ネットショップ運営において導入を検討される方も多いでしょう。

    しかし、決済方法の特徴を悪用した消費者から商品代金が支払われないケースも起こりがちです。多くのケースでは支払い忘れではあるものの、顧客への問い合わせや督促の手間を考えれば起きてほしくないトラブルのひとつでしょう。

  3. (3)根拠のないクレームを受ける

    クレームは、内容によっては有益となる一方で、根拠のないクレームに追われてしまうことがあります。たとえば、正当な方法で発送や代金回収手続きをおこなっているにもかかわらず、「返品しないと訴える」「警察に言う」「詐欺罪だ」などと言う方がいるかもしれません。

    こうした根拠のないクレームに振り回されてしまうと、費やす時間や人件費を無駄にすることになり、大きな損失となりえます。

  4. (4)個人情報を漏えいしてしまう

    ネットショップ運営者は、顧客の氏名、住所、連絡先、カード情報など、非常に重要な情報を取得することになります。一旦,個人情報が漏えいしてしまえば、顧客が犯罪のターゲットとなったり、執拗な営業メールや電話を受けることになったりと、多大な迷惑をかけることになりかねません。

    また、場合によっては個人情報を漏えいさせた責任を問われ、損害賠償を請求されるおそれがあります。

  5. (5)そのほかトラブルは多数!

    そのほかによくあるトラブルとしては、商品の配送に関するものです。配送中に商品が破損してしまった、商品の到着時期が遅すぎるなどし、顧客に損害を与えてしまうことがあります。

    また、近年では消費者がネットショップ利用に際し、口コミやSNS上の書き込みを確認することが当たり前になっています。商品や運営側の対応に関するネット上の誹謗中傷を受けるリスクに備えておく必要があるでしょう。

2、トラブルを防ぐための5つの対処法

事前の防止策を講じておけば、トラブル回避に期待できることはもちろん、売り上げ対策や商品開発などに力を注ぐことができます。トラブルを防ぐための主なポイントを5つ挙げましょう。

  1. (1)条項に記載しておく

    あらかじめ条項に記載しておくことで、トラブルが発生した際、事前に説明と同意があったことの証明や、返品に応じる必要のない旨を主張する根拠となります。

    たとえば次のような条項です。

    • 製造上の傷や汚れなどの留意事項
    • 顧客都合による返品可否や送料などの情報
    • 受け取り拒否をされた場合の送料や処理費用について
    • そのほか(例:商品寸法の誤差、パッケージの変更など)

    ただし、何でも記載しておけばよいというものではありません。一般的には、「消費者の利益を一方的に害する条項」は、たとえ記載しておいたとしても消費者契約法によって無効とされます。たとえば「商品に損害や遅延があった場合でも理由を問わず当社では一切の責任を負いません」のように、債務不履行責任の全免除を主張するような条項が無効になるでしょう。

  2. (2)セキュリティ対策は必須

    厳重なセキュリティ対策を講じることもネットショップ運営者の責務です。

    セキュリティを重視した機器やツールを使用することは大前提です。さらには、従業員の持ち帰り残業によるノートパソコン、USBの紛失・盗難や、出入業者による情報の盗み見などにも気をつけましょう。顧客情報を持ち歩かない、厳重なパスワードでロックしておくなど、従業員への教育・指導の徹底も、事業主の仕事のひとつとなります。

    また、個人情報の取り扱いに関する自社の方針として(プライバシーポリシー)、個人情報の利用目的や第三者への開示・提供の禁止などを盛り込みます。このような取り組みは、情報漏えいのリスク軽減や顧客からの信頼につながるでしょう。

  3. (3)必要に応じて業者の利用を検討

    いざトラブルに遭った場合でも直接被害を受けないように、業者やサービスを上手に活用しましょう。たとえば前述した後払い決済については、そもそも後払いを認めないことがひとつの方法となるでしょう。しかし、支払い方法の限定は顧客の不安や不便さから売り上げに影響を及ぼす可能性があります。そこで、カード払いや代金引換、振り込みなど、複数の支払い方法を用意しておくとよいでしょう。

    どうしても後払いを導入するのであれば、物流会社などの代行業者を利用することも検討しましょう。代行手数料や審査、契約などが必要ですが、商品代金の立て替えや代金回収業務を代行してくれるため、代金の未回収リスクを回避することができます。

    配送トラブルについては、補償つきの配送方法を指定しておけば、補償費用は物流会社の負担になります。補償のない配送方法(メール便など)を利用する場合には、あらかじめ顧客に免責事項を伝えて同意を得ていれば自社が補償する必要はありません。

  4. (4)丁寧な対応を心がけること

    トラブルを避けるために、もっとも基本かつ重要なことは丁寧な対応です。商品説明ページひとつとっても、詳細まで記載しておくことが結局は返品依頼やクレームを回避し、顧客からの信頼につながります。さまざまな角度から撮影した写真を掲載する、身長を記載したモデルに着用させる、写真以外に文章でも細かく記載するなど、できることは多数あります。顧客からの問い合わせにも丁寧に対応しましょう。

    発送する前の入念なチェックも必須です。商品に傷や破損がないか、梱包資材が不足していないかなどを確認することで、不要なトラブルを回避できます。

  5. (5)弁護士にアドバイスを求める

    ネットショップ運営は商品の実物や当事者の顔が見えない取引であることから、さまざまな誤解を生じさせやすい業務であるといえます。運営者としてさまざまな法律に抵触しないように気をつける必要があり、法律知識がない状態で運営を継続させることは、当然リスクがともないます。

    だからこそ、あらかじめ弁護士に相談しながらネットショップの運営を行うことをおすすめします。弁護士のアドバイスを得ておくことによって、それぞれの業態で法律上どのような点に留意するべきか、トラブルを回避するために必要な対策を講じておくことができるでしょう。法的根拠を知っておけば、クレームにも慌てることなく冷静に対応できるはずです。

    トラブルをできる限り回避するための対策だけでなく、実際にトラブルが起きてしまったときも、顧問ともいえる弁護士がいれば、素早い対応を依頼することも可能です。法的根拠に基づいた具体的な対応ができるため、メリットは大きいといえるでしょう。

3、まとめ

今回はネットショップを運営している方に向けて、よくあるトラブルと対処法を解説しました。

実店舗と比較して参入障壁が低いと考えられがちなネットショップですが、さまざまなトラブルに見舞われることが少なくありません。トラブルを防ぎ、適切な運営につなげるためには法的知識も備えておくことが大切です。

とはいえ、一般の方が法律を読み解き正確に把握することは難しいといわざるを得ません。餅は餅屋という言葉もあります。弁護士への相談も視野に入れましょう。ベリーベスト法律事務所・川崎オフィスでもご相談をお受けします。顧問弁護士サービスも実施していますので、お気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています