未払い残業代を確実に受けとりたい! 残業代請求で会社に負けるケースはある?
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川崎市川崎区にある金属加工会社が、月平均40時間の残業時間をほぼゼロにする取り組みに成功したことが報じられました。作業量を明確化して計画的に作業するようになったことで、残業時間を大幅に削減。技術を磨くなどのスキルアップの時間も確保できるようになり、従業員のモチベーションが大幅にアップしたと報道されています。
すべての企業がこのような残業対策をしてくれればよいのですが、中には残業時間を削減するどころか、残業代を支払ってくれない会社が少なくありません。そこで、今回は残業代請求で会社に負けてしまうケース、そして負けないための方法をベリーベスト法律事務所・川崎オフィスの弁護士が解説したいと思います。
1、残業代請求をしても負ける4つのケース
残業代を支払うことは企業の義務です。しかし、中には請求しても認められないケースもあります。まずは会社側に負けてしまう4つのケースを解説いたします。
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(1)残業時間を証明するものが何もない
残業代を請求するためには、残業時間を証明する証拠が必要不可欠です。したがって、証拠が一切なければ残業代を支払ってもらうことはできません。本来、会社側は社員の出退勤を管理しなければならないとされてはいます。しかし、罰則規定等はないので、残念ながら出退勤を管理していない会社も存在します。
ただ、自分の手書きのメモや日記、家族にあてたメールなども残業時間の証拠となる可能性があります。とにかく自分の身の回りを確認して、証拠となる可能性があるものを探しましょう。 -
(2)管理監督者である
あなたが、労働基準法第41条第2項で定められた「管理監督者」に該当する場合は、残業代の請求は認められません。「管理監督者」とは、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」と定義されています。
たとえば、出社退社の時間に自由があり、経営者側として会社の運営に関与していて、給与が一般社員よりも優遇されている場合などが「管理監督者」であるといえるでしょう。いわゆる「課長」や「係長」、「チェーン店の店長職」などであれば、管理監督者に該当するケースは少ないと考えられます。その場合、残業代の請求は可能です。 -
(3)みなし残業代の固定残業時間内しか残業していない
みなし残業代制度をとっている会社の場合、あらかじめ就業規則や雇用契約で「○時間以内の残業代は基本給に含む」などと規定されていれば、該当時間内の残業代は支払われません。
しかし、就業規則や雇用契約にみなし残業として含まれている時間が明記されていない場合は、そもそもみなし残業制度が成立していません。したがって、残業代は全額請求可能です。 -
(4)裁量労働制である
裁量労働制は、研究職やデザイナー、建築士や公認会計士などに導入されることが多い働き方です。
裁量労働制とは、時間管理を個人に任せる働き方です。したがって、勤務時間も出社退社時間も自由とされているはずです。「1日8時間労働したことにしておく」というみなし時間が設定されており、その時間を超えて働いても残業代は支払われません。ただし、もともと決められているみなし時間が法定労働時間の「1日8時間、1週間40時間」を超えている場合は、残業代を支払う必要があります。
2、残業代請求のためには証拠が必須
前述のとおり、残業代の請求には残業時間を証明する証拠が必要不可欠です。残業代を請求できる勤務形態であったとしても、残業時間を証明するものが一切なければ残業代の請求は不可能となるでしょう。
残業代の証拠には「強い証拠」と「弱い証拠」がありますが、弱い証拠しかなければ残業代は一切支払われないというわけではありません。裁判になれば全額ではなくとも認められるケースが多いものです。まずはどんなささいなものでもかまいません。残業時間を証明する証拠を集めましょう。
残業時間を証明する証拠になるもの、なる可能性が高いものは以下のとおりです。
- タイムカード
- パソコンのオンオフの記録
- 社内システムのログイン記録
- オフィスの入退室記録
- 業務日誌や日報など
- 出社時間退社時間を記録したメモや手帳、日記など
- 家族に送付した「帰るよメール」
- SNSなどにアップした「仕事が終わりました」投稿
- SuicaやPASMOなどの記録
これらの証拠の中では、タイムカードがもっとも「強い」証拠といえます。なにより、会社が管理しているものなので、言い逃れはできません。1ヶ月しか確保できない場合は、1ヶ月分しか請求できないのかというとそうでもなく、「1ヶ月間これだけ残業しているのだから他の月も残業していたことが推定できる」という主張も可能です。認められれば、残業代を支払ってもらえる可能性があります。
本来、他の月のタイムカードも、会社が保管してあるはずなので提出を求めることもできます。ただし、従業員からの提出請求には応じない可能性があるので、弁護士に相談することをおすすめします。
タイムカード以外のものでも証拠さえあれば残業代の請求は可能です。諦めずに探してください。
3、残業代請求の手順と方法
残業代を請求するために用意するものは、残業時間を証明する証拠と請求書です。残業代の請求時効は2年ですが、請求書を送付することで時効のカウントをストップできます。1年以上前の残業代を請求する場合には、必ず請求書を送りましょう。
ただし、送付した事実を認めない可能性もあるので、内容証明郵便に配達証明というオプションをつけて送付してください。この時点で支払いに応じてくれれば残業代問題は解決です。
万が一支払いに応じてもらえなかった場合は、公的機関や労働問題の経験豊富な弁護士に対応を相談することをおすすめします。
公的機関には残業代についての相談窓口があり、労働局や労働基準監督署が残業代未払いの相談を受け付けています。違法な状態が確認できたら、指導や是正勧告を行い、それでも従わない場合は書類送検する場合もあるでしょう。ただし、これらの公的機関は、企業の違法な状態を指導する立場に過ぎません。したがって、あなたの残業代を代わりに請求してくれることはありません。仲介はしてくれますが、法的効力はありませんので、強制的に支払わせることは不可能です。また、残業代の証拠が弱い場合は、残業代の未払いがあった事実を確認できないとして何もしてくれない可能性があります。
その場合は、弁護士に今後の対策を相談しましょう。
4、確実に残業代を請求したいなら弁護士に依頼がベスト
残業代の請求を行っても、企業が簡単に認めるケースはあまり多くないでしょう。公的機関に相談して、指導してもらったとしても、法的な強制力はないため、会社側が無視をしてしまえば意味がありません。残業代を確実に受け取れる可能性も低いと考えられます。
したがって、確実に残業代を請求したいのであれば弁護士に相談することをおすすめします。特に、残業代の証拠がない、もしくは少ない場合には、弁護士に相談することで、「新たな証拠」を発見してもらえる可能性や、もともとある証拠を「強い証拠」にすべく主張してもらえる可能性があります。
会社との交渉だけであれば自分でもできるかもしれません。しかし、裁判や審判に発展する場合は、個人での対応は難しいので最終的には弁護士に依頼することになります。その時点で依頼するのであれば、最初から弁護士に依頼するほうがよいでしょう。交渉当初から裁判や審判を視野に入れて交渉できるので、裁判などに至らずとも支払いを受けられる可能性が高まります。
ベリーベスト法律事務所でも、「労働基準監督署に行ったのですが残業代を支払ってもらえなくて」と相談に来る方は珍しくありません。弁護士に相談した上で、弁護士のサポートを受けつつ残業代請求をすることで、あなた自身の残業代を取り戻すことができるでしょう。今後について考えるのであれば、同時に労働基準監督署など申告することによって、今後はしっかりと残業代を支払える体制にするように働きかけることをおすすめします。
5、まとめ
残業代請求は労働者に認められた正当な権利です。会社側が拒否をしても弁護士などに相談の上、しっかりと働いた分は受け取りましょう。
ただし、証拠がない、弱い証拠しかない場合はそれを逆手に取った会社が残業代の請求に応じない可能性が高いものです。その場合は、「裁判に至っても負ける」という結果になるケースもあります。まずは残業代請求の経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所・川崎オフィスでも、親身になって最適な残業代の請求方法をアドバイスいたします。まずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています