休日出勤したのに手当なしは違法? 知っておくべき休日出勤の考え方

2021年04月22日
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休日出勤したのに手当なしは違法? 知っておくべき休日出勤の考え方

土日や祝日に勤務したのに、休日手当が出ていない。そんな状況に疑問を感じていませんか?
「休日出勤」や「休日手当」という言葉はよく使われますが、実は労働者と会社で指す意味が違っていることが少なくありません。

そのため労働者は「休日手当をもらっていないのはおかしい!」と思っても、会社は法律に則って対応しており問題がないケースもありますし、逆に会社が休日手当を支給すべきなのに、違法に支給していないケースもあります。

川崎市は工業の街として知られ、市内には1135もの工場が立地して多数の労働者が働いています(平成30年6月時点)。中には「休日出勤手当がでていないのでは」と疑問に思っている方もいるでしょう。

本コラムでは、休日出勤手当の仕組みについて弁護士がご説明します。

1、休日出勤とは?

「土日・祝日の勤務=休日労働」と思っている方も多いと思いますが、それは必ずしも正解ではありません。休日手当について考えるために、まずは休日出勤について理解しておきましょう。

  1. (1)仕事上の休日とは

    一般的に休日とは日曜日や祝日などを指しますが、仕事の上の休日はそれとは違い、平日・週末問わず会社が独自に休日と定めた日を意味します。

    労働基準法は「労働者に毎週少なくとも1回、または4週間で4日以上の休日を与えなければいけない」(労基法第35条1項、2項)と定めています。これに基づき、多くの会社は雇用契約書や就業規則で休日を決めています。

    たとえば飲食業の場合、土日は営業しているために月曜日や水曜日を休日と決めているところが多いでしょう。また週休2日を採用している会社もあります。

  2. (2)休日には法定休日と法定外休日がある

    仕事上の休日には、「法定休日」と「法定外休日(所定休日)」があります。

    「法定休日」とは先にご説明したように、労働基準法で定められた週1回の休日のことです。

    一方で「法定外休日」とは、法定休日のほかに会社が雇用契約書や就業規則で独自に定めた休日のことです。「所定休日」と呼ばれることもあります。
    たとえば週休2日の会社の場合、日曜日を法定休日、土曜日を法定外休日としているところが多いでしょう。

  3. (3)休日出勤は法定か法定外かで手当が違う

    一口に休日出勤といっても、「法定休日」に働いたか「法定外休日」に働いたかによって、休日手当に大きな違いが生じます。

    具体的には次の通りです。

    • 法定休日出勤:休日手当が支給される
    • 法定外休日出勤:休日手当は支給されない


    たとえば土日が休日の場合、法定休日の日曜日には休日手当が出ますが、法定外休日の土曜日には休日手当がでないということです

2、休日出勤の「手当」とは?

休日手当は法定休日に働いた場合に支給されるとご説明しました。では具体的にどの程度の金額が支給されるのでしょうか?労働者であれば誰でも手当の対象になるのでしょうか?

  1. (1)休日手当=割増賃金

    「休日手当」という言葉は一般的によく聞かれますが、法律で定められた言葉ではありません。法的には「休日労働に対する割増賃金」にあたります。

    休日労働や残業などに対する割増賃金の支給は、労基法で定められた会社の義務です。適切に支給しなかった場合、会社はその責任を問われます

    ただし事前に勤務日と休日を入れ替える振替休日を行っていた場合には、支給しなくても問題はありません。これについては次章でご説明します。

  2. (2)休日労働の割増率は35%以上

    休日労働に対する賃金の割増率は35%以上です。

    法定休日に勤務した場合には、実際に働いた時間に対して通常の時給に1.35を掛けた額が手当として支給されます。たとえば時給1000円の場合、1時間の休日労働で1350円が支払われます。

    休日労働かつ深夜労働の場合には、さらに25%の割増が加算されて割増率は60%以上になります

    なお休日出勤手当を適切に支払わない場合、会社には「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性があります(労基法第119条)。

  3. (3)管理監督者には休日出勤手当はない

    労基法では法律上の「管理監督者」には休日出勤や残業の規定が適用されないと規定しています(第41条)。そのため管理監督者が休日出勤しても残業しても、割増賃金は適用されません。

    ただし形式的には部長や店長という肩書であっても、実際にはほかの労働者と変わらない、いわゆる「名ばかり管理職」の場合には、休日出勤手当がでないのは違法です。会社に対して実態に即した手当の支払いを請求できます。

3、休日出勤して代休を取得したら休日出勤手当はでる?

休日出勤をした際、代わりに別の日を「代休」として休みにすることがあります。では代休を取得しても、休日出勤手当はでるのでしょうか?振休の場合はどうなるのでしょうか?

  1. (1)代休をとっても休日出勤手当はもらえる

    休日に働いた代わりに代休を取得した場合でも、休日出勤手当は支給されます。

    そもそも代休とは、休日出勤をした後に別の日を代わりに休むことです。
    たとえば法定休日である日曜日に緊急の呼び出しがあって出勤し、代わりに翌日の月曜日に代休を取得した場合です。

    代わりの日に休んだのであれば、全体としてみれば4週間で4日の休みがとれていて法律上の問題はないように見えるかもしれません。
    ところが休日出勤をしてから代休の取得を決めた場合、すでに休日出勤をした事実は変わりません。そのため手当の支給対象になるのです。なお代休となった月曜日は、本来は労働日ですが代休で働いていないため無給です。

    代休は当たり前の権利のように思えるかもしれませんが、会社には法律上、労働者に代休をとらせる義務はありません。つまりあくまで会社の裁量によるものであって、代休を取得させないからといって違法とはいえません。

  2. (2)振休に休日出勤手当はでない

    代休とよく似た言葉に「振替休日(振休)」がありますが、振休を取得した場合は休日出勤手当が発生しません。

    振休とは法定休日に出勤しなければいけないとわかっている場合に、事前に別の日を休日と決めておくことです。
    労働日と休日を入れ替えたと考えてください。

    代休と混同されがちですが、代休は休日出勤をした「後に」別の日を休みと設定すること、振休は休日出勤をする「前に」別の日を休みと決めておくことです。

    振休を設定しておけば本来法定休日であった日は通常の労働日になるため、休日出勤手当は支給されません

    たとえば法定休日である日曜日は会社主催のイベントがあるため、事前に金曜日を振休として申請して休むケースです。

    なお、代休の付与はあくまで会社の裁量によるものですが、振休の適用は就業規則などできちんと規定し、事前に労働者が同意しているといった要件があります。

4、法定外休日の出勤でも割増になるケース

ここまで「法定休日に働いた場合」には、休日出勤手当がでるとお伝えしました。では「法定外休日に働いた場合」は、何も手当はないのでしょうか?

  1. (1)週40時間を超えていれば法定外休日も割増賃金

    法定外休日の労働は休日出勤手当の対象外ですが、その週に40時間以上働いていた場合には休日出勤は残業にあたるため「残業代」の支給対象です。

    労基法では「1日8時間、週40時間」の法定労働時間を超えて働いた場、時間外労働、つまり残業代として25%以上の割増賃金を支払わなければならないとしています。

    たとえば時給1000円相当、すでに週40時間以上働いている労働者が会社の休日である土曜日と法定休日の日曜日に勤務した場合は、次のような賃金が支給されます。

    • 土曜日:残業代の対象 1000円×1.25=1時間あたり1250円
    • 日曜日:休日出勤手当の対象 1000円×1.35=1時間あたり1350円


  2. (2)割増賃金の計算方法

    休日出勤手当や残業代を計算するためには、まず基礎時給を求める必要があります。基礎時給は基本的には「月給÷1か月の平均所定労働時間」で計算できます。
    そのうえで、基礎時給に割増率を掛けて割増賃金を算出します。

    たとえば月給25万円、1か月の所定労働時間が170時間の方が4日間、各8時間の休日労働をした場合、休日出勤手当は以下の通りです。

    (25万円÷170時間)×1.35×32時間=6万3529円

    但し、ここでいう月給に含まれない手当などもありますので、正確に算出したい場合は弁護士に相談した方が良いでしょう

5、まとめ

休日出勤が多いと手当も高額になるため、会社が違法にこれを支給していない場合、労働者にとっては大きな打撃でしょう。また本来の休日に体を休めることができなければ、身体的にも精神的にも疲れ、仕事のパフォーマンスにも影響が出るかもしれません。働いた分の賃金はしっかりと受け取るのが本来のあり方です。

休日出勤手当や残業代を受け取っていない可能性がある方は、ベリーベスト川崎オフィスの弁護士がサポートしますので、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています