呼気検査を拒否すると逮捕される? 飲酒検知拒否罪の概要と罰則とは
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川崎市のホームページでは、「飲酒運転を根絶しよう!」というタイトルのページを掲載し、飲酒運転の危険性や罰則について紹介しています。飲酒運転をはじめとした悪質で危険な運転を原因とした悲惨な交通死亡事故を抑止するために、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が施行されたのは平成26年のことです。しかし、依然として飲酒運転が根絶されたわけではなく、生命を奪う大事故の発生にもつながっています。
飲酒運転の取り締まりはまず、警察官による「呼気検査」によって行われます。「呼気検査を拒否すれば逮捕される」ということをご存じでしょうか。本コラムでは、飲酒運転に関連する「呼気検査」について、川崎オフィスの弁護士が解説します。
1、飲酒運転とは?
飲酒運転について「どのような状態が交通違反になるのか」を正しく認識している方は少ないでしょう。飲酒運転は、呼気または血中に保有するアルコールの量によって罰則が異なります。
「酒気帯び運転」では、呼気に含まれるアルコールの量によって違反点数が異なります。
- 0.15ミリグラム以上から0.25ミリグラム未満の場合
- 0.25ミリグラム以上の場合
なお、道路交通法第65条1項は「何人(なんぴと)も、酒気を帯びて車両を運転してはならない」と明示しています。つまり、酒気の一切を帯びた状態での運転が禁止されているのです。
前述のとおり、0.15ミリグラム未満の違反に対しては罰則が設けられていません。そのため「飲酒運転にならない」と考えている人がいますが、たとえごくわずかでも呼気にアルコールが含まれれば飲酒運転として罰せられる可能性があることを忘れないようにしてください。
2、呼気検査とは?
警察官が飲酒運転の事実を検査する方法は、以下の2種類です。
- 風船を含まらせることで呼気を採取し、アルコールの量を検査する方法
- 身体検査令状に基づいて血液を採取し、血中のアルコール量を検査する方法
この2種類のうち、前者が「呼気検査」と呼ばれるものになります。
呼気検査では、対象者に任意で風船を膨らませ、風船の中に含まれた呼気を検知管または検知器を通すことでアルコールの量を検査します。
道路交通法第67条3項では「車両等に乗車し、または乗車しようとしている者に飲酒運転のおそれがある場合はアルコール量について呼気の検査することができる」と規定しています。「乗車しようとしている者」も含まれるため、たとえば居酒屋から出てきた客がエンジンキーを片手に車に向かっていれば、実際に運転していなくても検査対象となります。
3、呼気検査を拒否すると犯罪になる
もし飲酒運転をしているときに警察官に呼び止められれば、違反が発覚することをおそれて呼気検査を拒否することで、やり過ごそうと考える方もいるでしょう。しかし、飲酒運転の疑いがある車両を見過ごすことは大事故につながりかねません。そこで道路交通法では、呼気検査を拒否すること自体を犯罪と規定しています。
道路交通法第118条の2によって「警察官によるアルコール量の呼気検査を拒み、または妨げた場合は、3ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」と明示しているのです。
したがって、以下の行為は「飲酒検知拒否罪」に該当し、刑罰の対象となります。
- 再三の呼気検査の求めに応じない
- 車両から降車せず立てこもる
- 呼気を吹き込んだ風船を渡さない
- 検査に用いる検知管などを破壊する
知っておくべき点は、飲酒検知拒否罪は体内に保有しているアルコール量とは無関係である点です。たとえ酒類を飲んでいなくても、飲酒運転が疑われる場合に呼気検査を求めることは警察の正当な業務と認められます。
「飲んでいないのに疑われたことが気に入らない」などの理由で呼気検査を拒めば「お酒を飲んでいるから検査に応じられないのでは?」と余計な嫌疑がかけられることになりえます。呼気検査には素直に応じるほうが賢明でしょう。
4、飲酒検知拒否罪で逮捕された場合の流れ
飲酒検知拒否罪で逮捕されると、次のような流れで刑事手続きが進みます。
●逮捕(たいほ)
警察によって48時間以内を限度に身柄が拘束されます。この間にも呼気検査を勧められますが、依然として拒否している場合は裁判所から身体検査令状の発布を受けて医師による強制採血が行われ、血中アルコールを検知することになります。
●送致(そうち)
逮捕から48時間以内に、検察庁に身柄が引き渡されます。検察庁では検察官による取り調べが行われます。
●勾留(こうりゅう)
逮捕から72時間以内の手続きで取り調べが完了せず、逃亡や証拠隠滅の危険性があるなどの判断をされた場合、検察官は裁判所へ勾留請求を行います。裁判官が勾留を認めれば10日間、最長で20日間の身柄拘束が続きます。
なお、勾留請求が行われず、「在宅事件扱い」となることもあるでしょう。その場合、捜査機関からの呼び出しに応じて聴取を受けることになります。
●起訴(きそ)
勾留期限が満期を迎えるまで、在宅事件扱いのときは取り調べが終わった段階で、検察官は被疑者の刑事責任を問うために裁判を提起するか否かを判断します。「必要あり」と認めれば起訴します。起訴された時点から、被疑者は被告人と呼ばれる立場になります。
●被告人勾留
裁判が終結するまでの間は、被告人として引き続き身柄拘束を受けます。一般的には警察署の留置場から拘置所へと移管されます。
●判決
裁判の終結として判決が言い渡されて刑罰が決まります。
飲酒検知拒否罪の場合では、犯罪事実が単純であるため、長期の身柄拘束が不要であることが多く、勾留されないことも珍しくありません。ただし、かたくなに取り調べを拒否したり、明らかに虚偽の供述を繰り返したりすれば、勾留を受けてさらに取り調べが続けられることになります。
5、飲酒検知拒否罪で逮捕された場合に弁護士を選任するメリット
飲酒検知拒否罪で逮捕された場合には、すぐに弁護士を選任することをおすすめします。私選弁護人を選任することで「早期釈放」の期待が高まります。
飲酒検知拒否の状況などを整理して、長期間の身柄拘束は必要ないことを弁護士から合理的に説明してもらうことで、身柄付き送致を経ずに釈放に至るケースも多々あります。送致前に釈放されれば実質的な身柄拘束は48時間以内となり、仕事などへの影響も最小限に食い止めることができるでしょう。
なお、飲酒検知拒否罪の刑罰は3ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金です。
また、「無罪を主張したい」というケースにおいても、私選弁護人のサポートが必要です。
冒頭の事例のように、警察官による呼気検査の求めが曖昧であったなどの事実を主張するには、弁護人による援護が必須です。当時の状況を整理して無罪の証拠を収集することは、一般の方には難しく、法的な知識を有する弁護士の助けが必要になります。
国選弁護人制度を考える方もいるかもしれません。しかし、利用できるのは、勾留が決定したあとに限られているうえ、かつ資産などの一定条件があります。逮捕直後の重要なタイミングで弁護士のサポートを受けられないということになります。可能な限り、すぐに弁護人を選任することをおすすめします。
6、まとめ
飲酒運転に対する厳罰化が進められる中、警察は飲酒検知拒否についても積極的な姿勢を見せて取り締まりを強化しています。警察官による呼気検査を拒み、飲酒検知拒否罪で逮捕されてしまった場合は、すみやかに弁護士を選任して対処法のアドバイスを受けましょう。
ベリーベスト法律事務所・川崎オフィスでは、交通違反に関する刑事事件に関する知見が豊富な弁護士が在籍しています。呼気検査の拒否による逮捕について、早期の身柄釈放や無罪を主張したいと考えているのであれば、道路交通法の知識を持つ弁護人のサポートが必須といっても過言ではないでしょう。飲酒検知拒否罪での逮捕にお困りの方は、まずはお気軽にご一報ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています