マルチ商法で返金は可能? 勧誘方法のルールなどを弁護士が解説
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川崎市消費者行政センターでは、マルチ商法にはまることがないよう「カモ診断テスト」という冊子を作り、自分のタイプを把握して注意するよう呼びかけています。
ただ、すでに手を出してしまった方は解約できるのか、返金してもらえるのかと不安に思っていることでしょう。
そこで今回は、マルチ商法の概要や返金方法、相談先などについて詳しく解説します。
1、マルチ商法とは
「マルチ商法」には、あまりいいイメージをもっていない方は少なくないでしょう。ですが、マルチ商法は必ずしも違法というわけではありません。では、そもそもどんな商法なのでしょうか。
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(1)マルチ商法とは
マルチ商法とは、販売組織が、個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるというかたちで、組織を連鎖的に拡大して行う商法のことです。
特定商取引法第33条では、次の条件を満たす場合を「連鎖販売取引」と定義しており、マルチ商法はこれにあたります。- 物品の販売(または役務の提供など)の事業であって
- 再販売、受託販売もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を
- 特定利益が得られると誘引し
- 特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするもの
法律で規制されている取引ですが、それ自体が違法ではありません。
マルチ商法は、商品の再販売を通じて、ピラミッド型に組織が拡大していくのが特徴で、「ネットワークビジネス」と呼ばれることもあります。
紹介した会員(販売員)の人数によって会員のランクがアップし、報酬も上がるケースもあります。
会員を獲得すればするだけ利益がでるため、もうけやすいシステムにも見えますが、そう簡単にはいかないのが実情です。 -
(2)マルチ商法とねずみ講の違い
マルチ商法とよく似た手法に「ねずみ講(無限連鎖講)」があります。
ねずみ講は自らが親会員となり、子会員として新たに会員を紹介することで報酬が得られるシステムです。
商品が介在せず、新たな会員の加入だけが報酬発生の条件になるという点で、マルチ商法とは違いがあります。
また、マルチ商法とは異なり、ねずみ講は「無限連鎖の防止に関する法律」により全面的に禁止されています。
ピラミッド型という点は同じですが、勧誘を続けて組織を拡大していくといずれ日本の人口を超えるため、そもそも継続的な商法として理論上成立しません。 -
(3)マルチ商法の勧誘パターン
マルチ商法は、主に次のような方法で勧誘が行われます。
- 友人から「別の会員を紹介すればマージンが入る。商品代はかかるがすぐ取り戻せる」と勧誘された
- 親戚から「会員になれば商品が安く買える。転売すれば利益が得られる」と誘われた
- 無料体験セミナーに参加したところ、しつこく勧誘され、システムがよくわからなかったが断れなかった
- ブログで「簡単に稼げるネットワークビジネス」として紹介されていた
など
最近ではSNSなどを通じて知り合った方を介し、化粧品などの実在するモノではなく、仮想通貨(暗号資産)や投資商品、副業などを扱う「モノなしマルチ」に手を出してしまう若者も増えています。
国民生活センターによると、平成30年度のマルチ商法に関する相談は1万526件で、そのうち「モノなしマルチ」に関する相談は5490件と、半数以上にのぼりました。
2、マルチ商法でNGな勧誘方法4つ
マルチ商法は取引方法が複雑で、メリット・デメリットがあります。そのため、勧誘に際しては主に次のような行為が法律上禁止されています。違反した場合には罰則があります。
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(1)マルチ商法であると告げない
マルチ商法について詳しく知らない方は、「簡単に稼げるバイトがある」などと説明されると、安易に契約してしまう可能性があります。
そのため勧誘を行う側は、事前に自分の氏名やマルチ商法であること、商品やサービスの種類について、相手に告げなければいけません(特商法第33条の2)。 -
(2)うその説明をする、不都合な事実を告げない
マルチ商法は誰もが稼げるわけではなく、勧誘の際に会員が集まらない可能性や、再販売用の商品が売れないリスクなどがあります。
事前にきちんと説明されていなければ、契約者が後々思いもよらない不利益を被ることになりかねません。
そのため「確実に稼げる」「月100万円報酬を受けている人もいる」「絶対に効果のある商品だから安心」などとうその説明をしたり(不実告知)、事業者にとって不都合な事実を隠して勧誘したりすることは禁じられています(特商法第34条第1項、第2項)。 -
(3)強引に勧誘する
親戚やお世話になった方からの勧誘であれば、断りづらいでしょう。
そういった立場を利用するなどして、しつこく契約を迫ったり、「契約するまで帰さない」と脅して強引に契約させたりすることは禁止されています(特商法第34条第3項)。
また、契約解除を申し出た会員に、同様の行為で解除させないようにすることも違法です。 -
(4)公共の場以外で勧誘する
マルチ商法の勧誘であることを告げずに街で声をかけるなどし、自宅や会議室など一般の方の出入りのない場所に連れて行って勧誘することは禁じられています(特商法第34条第4項)。
必ずレストランやカフェなど、人目がある公共の場で行わなければいけません。 -
(5)違反した場合の罰則
上記のような勧誘行為をした場合には、業務停止命令や業務禁止命令などの行政処分が課せられる可能性があります(特商法第38条、39条)。
また、不実告知などは3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方となる可能性があります(特商法70条)。
3、マルチ商法の返金方法
マルチ商法の契約をしてしまった場合、気になるのは、契約解除できるのか、返金可能なのかということでしょう。マルチ商法には救済措置がありますので、詳しくみていきましょう。
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(1)マルチ商法はクーリング・オフの対象
マルチ商法の契約を締結し、お金を支払ってしまった場合は、クーリング・オフの対象となります。
クーリング・オフとは訪問販売やマルチ商法など、一部の取引について一定期間内であれば契約解除できる制度です。
マルチ商法のクーリング・オフ期間は、契約書面を受け取った日から20日間です。
販売用の商品を受け取った日の方が後の場合には、その日が20日間の起算点です。
ただし契約書面がそもそも交付されていなかった、不備があった、業者にクーリング・オフを妨害されたという場合には、この期間を過ぎていてもクーリング・オフが可能です。 -
(2)クーリング・オフの方法
クーリング・オフは業者側に書面を送って行います。はがきに手書きでも構いません。
書面には主に次のようなことを記載しましょう。- 契約を解除し、返金を求める旨
- 契約年月日
- 商品名
- 契約金額
- 販売会社・業者
- 作成年月日
- 住所・氏名
書面を作成したらコピーを取り、手元に保管しておきましょう。
また送付は記録の残る「特定記録郵便」や「簡易書留」を利用しましょう。 -
(3)中途解約・返金ができることもある
マルチ商法の契約をしてしまった場合、中途解約・退会はいつでも可能です。
また、以下の要件をすべて満たした場合には、クーリング・オフ期間を過ぎていたとしても返金を求めることができます(特商法第40条の2)。- 入会後1年未満
- 商品の引き渡しから90日未満
- 商品を再販売していない
- 商品を未使用
- 商品をなくしたり壊したりしていない
4、マルチ商法の相談先
マルチ商法でトラブルになってしまった場合、クーリング・オフの期間を過ぎてしまうと返金が難しくなる可能性があります。できるだけ早く次の相談先に連絡されることをおすすめいたします。
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(1)国民生活センター、消費生活センター
国民生活センター、消費生活センターでは、マルチ商法をはじめ、消費者被害に関する相談を広く受け付けています。
クーリング・オフ制度に関する疑問・質問にも答えてくれます。
最寄りのセンターに直接連絡するか、「消費者ホットライン(188)」に電話をしましょう。 -
(2)弁護士
マルチ商法でトラブルになってしまった場合には、弁護士に相談するのも一つの手です。
業者側に解約や返金を求めるため、解約を申し出たり、返金を求める書面を送るといった手続きを一人で行うことには、不安も大きいでしょう。
また、クーリング・オフや退会をしようとしても、業者にしつこく引き止められたり脅されたりする可能性もあります。
入会や商品購入の際に借金をしてしまっている方も少なくありません。
弁護士であれば、このような幅広いお悩みに対応できます。
業者側との交渉の代行から借金問題の解決、業者が返金に応じない場合の裁判まで、包括的に対処が可能です。
5、まとめ
マルチ商法をしてしまった場合、後悔や恥ずかしさから周囲にはなかなか相談しにくいかもしれません。ですが、時間が経過すればするほど、クーリング・オフが難しくなったり、業者への支払いがかさんだりする可能性があるため、解決を先送りするのはおすすめできません。
マルチ商法でトラブルになった場合には、なるべく早くベリーベスト法律事務所 川崎オフィスにご相談ください。弁護士が親身になってお話をお聞きし、トラブル解決のために迅速に対応いたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています