【前編】毒親からの暴力被害がつらい! 警察に逮捕してもらえる可能性はある?
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児童虐待などの話題が報道されると、必ずといっていいほど「児童相談所」の言葉を耳にすることでしょう。川崎市内にも児童相談所は3ヶ所にあり、暴力をふるうなど子ども虐待を見たり聞いたりしたときには通報するよう、市役所のホームページで告知しています。
血縁関係にある親子であっても、親から日常的に肉体的暴力を受けたり、精神的虐待を受けたりするケースは少なくありません。あなた自身が成人になっても親に変わらず暴力を振るわれていたり、経済的な圧力を受けていたりするのであれば、なんとか毒親から逃れたいと思うことはごく自然なことです。
未成年者であれば児童相談所に対処してもらえる可能性がありますが、成人しているときはどうすればよいのでしょうか。今回は、毒親に対して警察や弁護士などの第三者がどのように介入できるのかについて解説いたします。
1、子どもは毒親を訴えられないの?
親が子どもに暴力をふるう、恐喝する、虐待を繰り返すなど、問題がある家族に関する問題が顕在化しています。その代表的なキーワードが「毒親」です。
まずは、毒親とはどのような親を指すのかについて解説します。
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(1)毒親とは?
毒親という言葉は1989年にアメリカで発売された「TOXIC PARENTS」に由来しています。本の著者はアメリカの精神医学者であるスーザン・フォワードで、邦題は「毒になる親~一生苦しむ子供~」です。
本の中には育児放棄や虐待、言葉による暴力などの手段で子どもをコントロールしようとする親が描かれています。「毒親」とは前述の著書を略して生まれた言葉です。親という立場や権限を利用し、子どもに対して以下のような加害行為をする親を指します。- しつけや教育と称した肉体的な暴力
- 子どもを否定する、過度に不安を与えるような精神的な暴力
- 子どもを監視する、物事がうまくいきそうなタイミングで妨害行為をする
- 子どもの失敗に対して追いつめる、責める、ばかにする、ののしる
- 親の身勝手な考え、夢・希望を子どもに無理やり押し付け、刷り込ませる
- 育児放棄など子どもにまったく興味を持たず、逆に自己責任として子どもに求める
- 性的な虐待を与える
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(2)毒親による暴力などに子どもは耐える義務がある?
子どもは、親に上記のような理不尽なことをされたとしても、ひたすら耐えなければならない義務があるのでしょうか?
そのような義務はまったくもってありません。
相手が自分を生んだ母親や養っている父親であっても、子どもにもひとりの人格があり、親の操り人形ではありません。親の希望通りに生きる必要はなく、親の肩代わりをする必要もありません。
法律上においても、たとえば親の借金を、保証人でもない子どもが背負う必要は一切なく、さまざまな手続きによって相続を放棄することも可能となっています。
2、毒親による被害を訴える際の罪状は?
親に日常的にされている行動でも、警察に訴えることができることがあります。
●恐喝罪
お金などを要求するため親が暴行や脅迫を行い、結果、あなたが恐怖のあまりそれに応じた場合、成立する可能性があるでしょう。
●暴行罪
殴る蹴るなどの身体的な暴力はもちろん、着衣を無理やり引っ張るなど、あなたの身体に影響をおよぼす行為をした場合にも成立することがあります。
●窃盗罪
あなたの財布からお金をくすねるなどの窃盗行為があった場合、親を窃盗罪で告発することが可能です。
●名誉毀損(きそん)罪
うそや虚偽の事実を周りに吹聴し、子どもの地位や立場を脅かす行為は名誉毀損罪として罪を問えることがあります。内容が真実だったとしても同様です。
●脅迫罪
「殺すぞ!」「殴るぞ!」「いうことを聞かなければ死んでやる」といった言葉を用いて、あなたを脅迫した場合、脅迫罪に抵触する可能性があります。
●迷惑防止条例違反
たとえ家族であっても、子どもを24時間監視する、つきまとうなどの行為をすれば、迷惑防止条例違反に問われる可能性があります。
ただし、恐喝罪と窃盗罪、横領罪については、刑法第244条に定められた「親族間の犯罪に関する特例」が適用されます。あなたの親が実親であれば、「直系血族」に該当するため、刑が免除されます。つまり、あなたの物を盗んだり、あなたの不動産に不法に占拠したり、あなたを恐喝して金品を取り上げたという事実があったりしたとしても、たとえ逮捕されても不起訴となるか刑罰を免除されます。
それでも、暴力を受けている最中などに警察に連絡することには意味があります。なぜなら、警察官の判断で興奮状態の親を緊急逮捕されることもありますし、あなたがこれ以上身体的被害を受けることを食い止めることもできるかもしれません。また、実際に被害を受けているという、動かぬ証拠を残すことができます。
後編では、子どもが毒親から逃れるためにできることについて、川崎オフィスの弁護士が解説します。
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