墓じまいでよくあるトラブルとは? 手続きの流れや離檀料について解説
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「お墓が遠い」「病気で通えない」「仕事が忙しい」、さまざまな理由から「墓じまい」を行う方は少なくありません。
墓じまいをしてお墓を別の場所に移す「改葬」の件数は、平成25年度の衛生行政報告では8万8397件でしたが、平成30年度は11万5384件まで増加しました。
神奈川県でも4823件から6797件になっています。
墓じまいの利用が広がる一方、親族間の考えの違いや「離檀料(りだんりょう)」に起因するトラブルなどが発生するリスクもあります。
「こんなに大変だとは思わなかった」、そうならないためには事前の準備が大事です。
そこで今回は、墓じまいでよくあるトラブルと対処法についてご紹介します。墓じまいを検討されている方は、ぜひご一読ください。
1、墓じまいとは
「墓じまい」は、近年使われるようになった比較的新しい言葉です。その意味や内容を知らない方も多いと思いますので、まずは墓じまいの基本的な事項をご説明します。
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(1)墓じまいとは
「墓じまい」とはお墓から遺骨を取り出し、お墓を撤去して更地に戻すことです。
「改葬」という言葉と混同されることも多いのですが、改葬は「墓地、埋葬等に関する法律」で定められた行為で、「お墓から遺骨を取り出してお墓を解体・撤去し、別のお墓や納骨堂に移すこと」です。
いわばお墓の引っ越しです。
墓じまいはお墓を撤去するまでの行為で、お墓の引っ越しは含まないため、改葬の手順の一つと考えられています。
墓じまいを行う理由は人それぞれですが、具体的には下記のようなケースです。- お墓が遠方でお参りや手入れができない
- お墓を継ぐ人がいない、子どもに負担をかけたくない
- お墓の維持・管理費の負担が重い など
これは都会への人口集中、核家族化、少子高齢化などの現代社会の特徴が背景にあると考えられます。
「誰も手入れできず荒れてしまう」「後継者がいないために無縁墓になってしまう」といった事態を防ぐための一つの方法ともいえます。
墓じまいをした後の遺骨の扱いも多様化しており、新しいお墓の購入のほか、永代供養墓、樹木葬、散骨といった方法も利用されています。 -
(2)墓じまいの方法・流れ
墓じまいは改葬の一環ですので、ここでは改葬の手続きをご紹介します。
市区町村によって提出書類などに多少の違いはありますが、一般的には次の通りです。- 家族・親族と相談
- 新しいお墓探し
- 現在のお墓の墓地管理者に相談
- 新しいお墓の墓地管理者から「受入証明書」を入手
- 現在のお墓がある市区町村役場から「改葬許可申請書」を入手
- 現在のお墓の墓地管理者に「改葬許可申請書」への記入を依頼(埋葬証明書が発行されることもある)
- 現在のお墓がある市区町村役場に「改葬許可申請書(埋葬証明書)」「受入証明書」を提出し、「改葬許可証」を入手
- 現在のお墓の管理者に「改葬許可証」を提示し、閉眼法要、遺骨の取り出しを行う
- お墓を解体・撤去し更地に戻す
- 新しいお墓の管理者に「改葬許可証」「受入証明書」を提出し、開眼法要、納骨をする
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(3)墓じまい・改葬の費用
墓じまい・改葬には一般的に次のような費用がかかります。
- 現在のお墓の撤去、遺骨の取り出し費用
- 寺院墓地の場合は「離檀料」
- 遺骨の移送費
- 新しい墓石の購入費または既存の墓石の移設・運搬費
- 各種書類発行費用
- 閉眼法要、開眼法要のお布施
総額は新旧のお墓の距離や閉眼・開眼法要実施の有無などによって異なります。
お寺への離檀料についてはトラブルも多いため、後段で詳しくご説明します。
2、墓じまいでよくある3つのトラブル
墓じまいが一般的になった一方で、トラブルも少なくありません。こちらではよくあるトラブルについてご紹介します。
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(1)家族・親族ともめる
お墓をどう管理していくかは、自分だけでなく家族・親族にとっても重要な問題です。
お墓のあり方については、それぞれ考えが違うでしょう。また、費用の問題もあります。
そのため長男だからと勝手に墓じまいを決めて兄弟姉妹に事後報告をしたり、費用負担を求めたりすれば、トラブルになる可能性は高いでしょう。
たとえば墓じまいに反対しても、一部の遺骨を移すことには賛成する方もいるかもしれません。
自分が遠方に住んでいてお墓の手入れができない場合でも、近場に住む別の親族が管理を申し出てくれるかもしれません。
墓じまいを行う際には、必ず事前に家族や親族と話し合いをしましょう。 -
(2)お寺ともめる
これまでのお墓をお寺が管理していた場合、事前になんの相談もなく墓じまいを決め、いきなり「許可書にサインをしてください」と言えば、寺院側はいい気はしないでしょう。
墓じまい・改葬をすると、お寺はお墓の管理費用や法要の際のお布施といった収入を失います。
またお墓がなくなれば、その家族は檀家を抜けるでしょう。
先祖の代から長年お世話になっているお寺に不義理をすれば、改葬許可申請書への記入を嫌がられたり、高額な「離檀料」を請求されたりする可能性があります。
墓じまいを進める前にお寺にしっかりと経緯を説明し、納得してもらうことが大事です。 -
(3)石材店ともめる
お墓の撤去や遺骨の取り出し作業は、基本的に石材店に依頼します。
石材店は自分で選ぶこともできますが、お寺から指定されることもあります。
お墓の場所や石材店によって費用はかなり違ってくるため、予想外の費用を請求されてトラブルになることがあります。
石材店を選べる場合には、相見積もりをとるなどしてよく比較・検討しましょう。
3、墓じまいにおける離檀料(りだんりょう)とは?
墓じまいに関するトラブルで多いのが「離檀料」をめぐるものです。ではそもそも離檀料とはどのようなもので、相場はいくらなのでしょうか。
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(1)離檀料とは?
お墓には「寺院墓地」「民営霊園」「公営墓地」の三種類があります。
寺院墓地の場合、墓地を利用するのは基本的に「檀家」と呼ばれる家族に限られています。
寺院墓地にあるお墓を墓じまいすれば、檀家をやめる「離檀」をすることになるでしょう。
その際、これまでお世話になったお礼としてお寺に渡すお布施のことを「離檀料」といいます。 -
(2)離檀料の相場はいくら?
離檀料はあくまで「お布施」「寄付」であって、必ずしも支払わなければいけないものではありませんし、決まった額もありません。
ですが、お墓の管理や法要などで先祖代々お世話になってきた場合には、お寺から請求されなくても、離断に際して檀家が自ら支払うべきものとされています。
離檀料の額は一般的には法要1〜3回分で、長年お世話になってきた場合には、多めに包むケースもあります。 -
(3)高額な離檀料を請求されるトラブルも
離檀料の支払いは義務ではありませんが、墓じまいの増加に伴い、お寺から数百万円といった高額な料金を請求されるケースも少なくありません。
先述のように離檀料の額には決まりはなく、お寺の裁量による部分が大きいといえます。
そのため高額な離檀料を求め、「支払わなければ改葬許可申請書の記入に応じない」などと言われるケースもあるのです。
ただ一部の悪質なケースを除き、離檀料をめぐるトラブルは墓じまいを事前に相談していないなど、お寺への誠意を欠いた対応が原因となっていることが少なくありません。
「高額な離檀料を請求される」と過剰に恐れる必要はありませんが、トラブルにならないように一般的なマナーを守った対応が必要です。
4、墓じまいのトラブルは弁護士に相談を
墓じまいをめぐっては、親族やお寺との間でトラブルが発生しますがその多くは、コミュニケーション不足が原因です。
親族間できちんと話し合いをせず一人で墓じまいを決めたり、お寺への相談をせずに進めてしまったりすれば、後々大きなトラブルに発展するかもしれません。
離檀料やお墓の撤去費用などの費用が高額になる可能性もあります。
お墓の扱いはセンシティブな問題であり、誠意ある対応と当事者の合意が不可欠です。
とはいえ「親族に話し合いをしても納得してもらえない」「お寺から高額な離檀料を請求されて困っている」といった場合は、個人で解決するのは簡単ではありませんので、弁護士へ相談されることをおすすめします。
弁護士は第三者の立場から、家族やお寺との話し合いを仲介したり、手続きのサポートをしたりしてくれます。
特に離檀料は支払いの義務はないため、納得ができないまま支払う前に相談をしましょう。
5、まとめ
時代が変わり、家族のあり方も変わるなか、お墓の管理は誰もがいつか向き合わなければいけない問題です。墓じまいは単純に「お墓をやめること」と考えている方もいるかもしれませんが、実は手続きにはかなり手間と時間がかかり、関係者間で争いにもなりやすいといえます。
ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスでは、墓じまいに関するトラブルのご相談を受け付けています。まずはお気軽にご連絡ください。
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