霊感商法を規制する法律は? 霊感商法で買ったものは取り消せる?

2022年09月06日
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霊感商法を規制する法律は? 霊感商法で買ったものは取り消せる?

神奈川県が公表する「神奈川県内における消費生活相談に関するデータ集」によると、川崎市内における令和3年の消費生活相談の件数は1万17件でした。令和2年は1万319件、令和元年は1万1件と、消費生活相談件数自体は横ばい傾向にあります。

消費に関する悩みとして、「運気をアップしてくれるという高価な開運ブレスレットを買ってしまったが、だまされたのではないか」「病気が良くなると聞いて高額な祈祷を受けたが、何も変わらない」など、霊感商法の被害でお困りの方もいるでしょう。

そもそも霊感商法にはどのような手口が使われ、被害に遭った場合はどう対処すれば良いのでしょうか。本記事では、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士が霊感商法について詳しく解説します。

1、そもそも霊感商法とは

「霊感商法」という言葉は聞いたことがあっても、具体的にどのようなものが霊感商法に当てはまるのか分からないという方も少なくないでしょう。まずは、具体例を示しながら霊感商法についてご紹介します。

  1. (1)霊感商法とは

    「霊感商法」とは、霊や占い、スピリチュアルなどの霊的能力があると主張する業者側が「このままでは良くないことが起こる」などと消費者の不安をあおって、トラブル回避をうたう商品を購入させたり、祈祷などのサービス料を支払わせたりする手法のことです。
    霊感商法を行う業者側は、霊能者などと自身を称することがあります。

    霊感商法の例としては、以下をご覧ください。

    <霊感商法の具体例>
    • 守護霊からのお告げとして、「もうすぐ交通事故で大きなケガをするが、邪気を吸い込むつぼを家に置いておけば避けられる」と伝え、普通のつぼを高い値段で買わせる
    • 無料の占いと称して相手から悩みを聞き出し、「恋人とうまくいかないのは星のめぐりのせいだ」と、開運ブレスレットを売り付ける
    • 末期がんの夫を持つ妻に「祈祷を受ければ、すぐに夫のがんは消失する」として、高額な祈祷料を払わせる
    • 占いなどの鑑定で「先祖の霊が怒っている」と不安をあおり、祈祷料の支払いを要求する


    上記のように、一般的な訪問販売や電話勧誘などと異なり、相手の悩みや不安につけこんだり、恐怖心を植え付けたり、正常な判断能力を奪ったりして商品やサービスを売り付けることが霊感商法の特徴です。

  2. (2)霊感商法の代表的な手口

    一般的な霊感商法では、業者側はまず次のような方法で消費者に接触してきます。

    <霊感商法の接触パターン>
    • 家を訪問する
    • 街頭で声をかける
    • ポスティング
    • 既存顧客からの紹介
    • イベントの開催
    など


    上記のように、霊感商法を行う業者はさまざまな方法で消費者と接触する機会を作っているのです。そして、その際は「無料」「特別開催」などとアピールすることで、消費者の心理的ハードルを下げる手法もよく使われているようです。

    霊感商法の接触後の手口としては、相手の抱えている不安や困りごとを聞き出し、超能力などの確認不可能な力を使って「良くないことが起こる」と予言をすることで、相談者の不安を増幅させてきます。

    <霊感商法での予言例>
    • 精霊が「あなたはこれから事故に遭う」と告げている
    • あなたを占ってみると、人間関係で苦しむことになるという未来が見える
    • 病気が良くならないのは先祖のたたりのせいだ


    それから、状況を改善する唯一の手段として、厄除けのお札や除霊ブレスレットの商品購入・祈祷などのサービス利用を勧めるのです。
    このとき、親身になって相手の話を聞いて信用させるほか、しつこく自宅に電話をかけて断れないようにする、長時間お経を唱えさせて判断能力を奪うといった方法が行われることもあります。

    加えて、一度商品購入やサービス利用させた後に病状改善などの変化が見られなかった場合、「祈祷が足りない」「真剣にお祈りをしないからだ」「もっとパワーのあるものに変えたほうが良い」「今やめれば状況はもっと悪くなる」などと、追加購入・利用を促してくるケースもあるでしょう。
    信じ込んでしまった消費者が言われたままに行動してしまい、最終的な被害額が高額になることも珍しくありません。

    霊能力や占い自体が証明できない力であるため、現在の状況等が改善したのはその力のおかげなのか、今後悪い状況に至ることを避けられたのかどうかを証明することは不可能です。

    霊感商法は、困難な状況にいる方の「わらにもすがりたい」という気持ちや、話を信じさせて不安を募らせるというような心理を巧みに利用し、「唯一の解決策」「希望の光」として商品やサービスを売り込む悪徳商法であることに注意してください。

2、法改正により霊感商法も契約取消しの対象に

霊感商法は、以前までは規制対象として法律に規定されておらず、平成30年の法改正により「消費者契約法」に明記されました。
消費者契約法は、消費者が事業者側から不当な勧誘を受け、その結果交わされた契約に対して、その取消しや、不当な契約条項を無効とすることなどを規定した法律です。消費者保護を目的に、平成13年から施行されています。

契約の取消しについては、以下の規定のとおりです。

<消費者契約法第4条>
消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込みまたはその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる


法の施行後に何度か改正をされている消費者契約法ですが、令和元年の改正では契約の取消しが可能となる不当な勧誘行為として、霊感商法が新たに追加されました。規定は以下のとおりです。

<消費者契約法第4条3項6>
霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること

3、霊感商法でだまされてしまった場合の解決方法

霊感商法の被害に遭った場合、恥ずかしさから親族や友人には相談できないという方もいるでしょう。ですが、被害をできるだけ最小限に抑えるためには、できるだけ早く対応することが欠かせません。ここでは、代表的な解決方法をご紹介します。

  1. (1)クーリングオフ

    クーリングオフとは、電話勧誘や訪問販売などで商品やサービスを契約した場合に、条件を満たせば消費者が一方的にその契約を解除できる制度です。これは、特定商取引法第9条で規定されています。

    クーリングオフの対象となるのは、訪問販売や電話勧誘販売、マルチ商法、内職商法などです。取引形態にもよりますが、適用することができる期間は契約書を受け取ってから8日〜20日以内です。

    この制度を利用する理由は、特に問われません。契約解除を行いたい場合は、内容証明郵便などを使い、相手先の業者に対してクーリングオフを利用する旨を記載したはがきや文書を送付する必要があります。

    霊感商法についても、電話勧誘や突然の自宅への訪問などで商品・サービスを購入してしまった場合はクーリングオフすることが可能です。クーリングオフ適用期間内のうちに、早めに手続きしましょう。

    ただし、折り込みチラシを見て自らイベント会場に足を運んだという場合やクーリングオフ期間を過ぎてしまった場合には、この制度を利用することはできないので注意してください。

  2. (2)契約取消し

    霊感商法で被害に遭い、「だまされた」と気付いたときには、すでにクーリングオフの適用期間が過ぎていたというようなケースもあるでしょう。そのようなときは、消費者契約法に基づき契約の取消しを求めることが可能です。

    前章でご説明したように、消費者契約法の改正により、消費者が一方的に契約を取り消せるケースとして、新たに霊感商法が追加されました。法律に明記されたことで、霊感商法の被害者は契約の取消しを求めやすくなったと言えます。

    契約の取消し方法に定めはありませんが、クーリングオフと同様、まずは内容証明郵便などの記録の残る配達方法で相手業者に取消しを伝える書面を送りましょう。

    ただし、契約取消しを請求するには「霊感商法であることに気付いたときから1年間、または契約締結から5年間」という時効があります(消費者契約法第7条)。
    霊感商法に関して契約取消しすべきか迷っていると、上記の時効が到来してしまうおそれがあるため、注意が必要です。

4、霊感商法でお困りの際の相談先

霊感商法で今まさに勧誘を受けている方、すでに被害に遭ってしまった方は、すぐに次の相談先に連絡をすると良いでしょう。

  1. (1)消費者ホットライン

    「消費者ホットライン(局番なしの188)」に電話をすると、最寄りの消費者生活センターや消費生活相談窓口につないでくれます。
    その後は担当者(専門の相談員)が詳しく話を伺いながら、クーリングオフなど今後の対応について、トラブル解決に向けたアドバイスを受けることが可能です。

  2. (2)警察

    霊感商法の中でも、業者側の手口が悪質だったり、脅迫などの手段が用いられていたりした場合には、詐欺罪や恐喝罪などに問える可能性があります。

    また、業者側の訪問員などが連日家に押しかけてくる、職場に電話をかけてくるといった場合には、早期にやめさせる必要があるでしょう。
    上記のような場合は、すぐに最寄りなどの警察署に相談するようにしてください。

  3. (3)弁護士

    霊感商法の被害については、消費者生活センターなど以外にも、弁護士による被害回復に向けたサポートを受けることが可能です。

    弁護士に依頼するメリットは、霊感商法による被害内容や時期、被害額などに応じて、クーリングオフや消費者契約法に基づく契約取消しのほか、裁判など法的手段を用いた被害回復など、事情にあった解決方法を提案してもらえることです。

5、まとめ

霊感商法は一度被害に遭うと、追加での商品購入やサービス利用により、気付けば被害額が膨れ上がっていたということが少なくありません。何かおかしいと感じたとき、また家族が霊感商法に遭っているかもしれないと思ったときは、できるだけ早く外部に相談することが大事です。

ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスでは、霊感商法をはじめ悪徳商法の被害回復、解決のために全力でサポートを行っております。周囲に言いづらいことでも、弁護士が真剣に話を聞き受け止めますので、お悩みの方はどうぞお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています