会社でのいじめや嫌がらせがひどい! 相談窓口や法的な対処法をご紹介
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セクハラ、パワハラ、いじめなど、会社での嫌がらせの被害に遭っている方は少なくありません。
厚生労働省によると、令和元年度の「個別労働紛争解決制度」への相談のうち、「いじめ・嫌がらせ」関連は前年度比5.8%増の約8万7000件でした。8年連続で相談内容の中で最多です。
いじめ・嫌がらせは神奈川県内でも報告されています。
神奈川労働局によると、ビル管理企業の事務員女性が上司からのいじめ・嫌がらせ、退職勧奨をうけ、拒否すると清掃業務への配置転換を通告された事例がありました。
嫌がらせは労働者のケガやうつ病につながることもあり、内容によっては損害賠償の対象です。
そこでこの記事では、会社での嫌がらせ被害に対する相談窓口や解決方法などをご紹介します。
1、「会社での嫌がらせ」で損害賠償が認められた事例
職場で嫌がらせを受けた被害者は、肉体的・精神的また金銭的被害を受けることがあります。
その被害に対しては、これまで全国各地で損害賠償請求訴訟が起こされてきました。
川崎市水道局の職員であった男性は、同僚から女性経験がないことを嘲笑する、容姿をバカにする、果物ナイフを振り回して脅すなどの執ようないじめを受けていました。
上司はいじめを見ていたのに制止せず、むしろ一緒になってその様子を笑い、さらに社内のいじめ調査に対して「いじめはない」と回答していました。
その結果、男性は精神的に追い込まれて勤務できなくなり、その後自殺しました。
男性の両親が起こした裁判で横浜地裁は、上司は適切な措置をとらなければ男性が自殺することは予見できたとして、上司の安全配慮義務違反と男性の自殺との因果関係を認定しました。
そして川崎市に両親に対して計約2300万円の損害賠償を命じました。東京高裁もこの判決を維持しています(横浜地裁平成14年6月27日判決、東京高裁平成15年3月25日判決)。
2、嫌がらせを相談する窓口と相談の準備
いじめや嫌がらせは、黙って耐えていても状況はなかなか改善しません。「自分が悪い」と一人で抱え込まず、まずは次のような相談窓口に相談しましょう。
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(1)職場での嫌がらせに関する相談窓口
【労働組合】
労働組合には社内のものと社外のものがあります。
社内労組では、その企業で働く労働者からの相談を受け付けています。
労組は内容に応じて、一緒に会社に改善交渉をしてくれます。
「社内に相談できる窓口がない」「会社にバレるのが不安」といった場合は、社外の合同労組(ユニオン)への相談も検討しましょう。
社内労組と違って外部の団体になるため、会社への改善交渉もしやすいといえます。
【総合労働相談コーナー】
都道府県の労働局または労働基準監督署には「総合労働相談コーナー」が設置されています。
対面や電話で相談ができ、専門の相談員が解決方法をアドバイスしてくれます。
ただしあくまで相談の受付、情報提供のための機関であり、企業との交渉など直接的な解決はしてくれません。
相談内容によっては、労働局長から会社へ助言・指導をしてもらえることがあります。
それでも解決できない場合には、紛争調停委員会によるトラブルの解決手続きである「あっせん」が利用可能です。
あっせんでは紛争調停委員会が双方から事情を聴き、解決方法を提示します。
もっとも、あっせんには強制力がないため、加害者が参加しない場合には進めることができず、打ち切りになってしまいます。
【警察】
上司や同僚などから暴力を振るわれたり金を脅し取られたりした場合には、暴行罪や傷害罪、脅迫罪、恐喝罪などに該当する可能性があります。
すぐに警察に相談しましょう。
ただし警察に相談したとしても、被害を示す証拠がなければ捜査してもらえないことがあるので注意が必要です。
【弁護士】
弁護士は法律的な観点から、嫌がらせの解決策を考えてくれます。
加害者と交渉する、会社に改善を求めるといった話し合いの仲介や代行のほか、損害賠償を求める場合には裁判のサポートもしてくれます。
労基署や警察が相談を受けつけてくれなかった場合でも、弁護士であれば話を聞き、対処方法を示してくれるでしょう。 -
(2)相談する前の準備
労組や労基署、警察に相談する場合には、被害に関する証拠を集めておくことが大事です。
「いじめを受けた」と言うだけでは、実際に嫌がらせを受けていたのか、相談の担当者も判断が難しくなります。
また、自分は嫌がらせだと思っても、加害者は嫌がらせだと認識していないこともあります。
そのため相談をする前に、まず被害事実・内容を示す証拠を集めておきましょう。
たとえば以下のようなものが考えられます。- いじめを受けた際の動画、写真や録音データ
- 加害者や会社と交渉した際の録音データ
- 加害者から送られてきた嫌がらせのメール
- 暴行などでケガをした部位の写真
- 精神的、身体的被害を示す医師の診断書
- 嫌がらせの日時や内容を記録した日記
相談の際はこういった証拠を持参し、できるだけ明確に被害を訴えましょう。
証拠がない、証拠の集め方がわからないといった場合には、弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。 -
(3)会社と争いになった場合の解決の流れ
職場での嫌がらせをめぐって会社と争いになった場合には、一般的には次のような流れで解決をはかります。
- 嫌がらせの証拠を集める
- 各種窓口への相談
- 会社や加害者との交渉
- 交渉が決裂した場合は労働審判や民事裁判を起こす、刑事告訴をする
交渉により加害者からの謝罪や賠償などが得られれば、裁判を起こさずに解決できるため負担が少なくすみます。
ですが、交渉がうまくいかなかった場合には、法的解決も検討する必要があります。
3、退職するときに気を付けるべき3つのこと
会社との交渉で解決の見通しが立たない、仕事への意欲をなくした、人間関係に疲れた、といった理由から退職をする方もいるでしょう。退職して休む、職場を変えることも選択肢の一つです。ですがその際は気をつけるべきことがあります。
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(1)自己都合退職にさせない
退職には「自己都合退職」と「会社都合退職」があります。
自己都合退職とは転職や結婚、引っ越しなどにより自ら希望して退職を選ぶケースです。
一方で会社都合退職とは、会社の業績悪化による倒産やリストラ、ハラスメントなど、自分の意思に反して退職せざるを得なくなったケースです。
自己都合は会社都合に比べて失業保険(失業給付金)を受け取れる日数が短いうえに、受給開始までに時間がかかるなど、手当ての面で不利です。
職場での嫌がらせによって退職せざるを得なくなった場合には、当然「会社都合」になるはずです。
しかし、会社都合にすれば国の助成金をもらえなくなるなど会社にとってデメリットがあるため、勝手に自己都合と記載したり、自己都合の記載を強要したりすることがあります。
退職の際に受け取る離職票の記載を確認し、自己都合にされている場合は必ず訂正を求めましょう。
訂正が受けいれられない場合でも、ハローワークに証拠を示して異議を申し立てれば、会社都合にしてもらえることがあります。 -
(2)未払い残業代を請求する
退職の際に未払い残業代があった場合には、しっかりと請求しておきましょう。
退職後でも請求は可能ですが、退職してからではタイムカードや就業規則、業務メールなどの証拠が集めにくくなる可能性があります。
退職前にできる限りの証拠を集め、会社に未払い分の支払いを求めましょう。
会社が支払ってくれない場合には、裁判で請求することも可能です。 -
(3)退職を拒否されたら
退職をしたいと申し出ても、やめさせてもらえないことがあります。
担当していた仕事の後任がいないというケースもありますが、「退職させない」という嫌がらせの可能性もあります。
正社員など期間の定めのない雇用契約の場合、退職日の2週間前までに退職の意向を会社に伝えれば退職は可能と、法律で定められています(民法第627条1)。
労働者には退職の自由がありますので、この規定を守ったにもかかわらず退職を拒否された場合は、すぐに弁護士にご相談ください。
4、会社での嫌がらせを弁護士に相談するメリット
職場での嫌がらせは、加害者側との交渉により解決できることもあれば、裁判までもつれることもあります。
労働問題に詳しい弁護士であれば、被害者の代わりに加害者との交渉を行ったり、証拠を集めたり、裁判を起こしたりするなど、状況に応じてあらゆる対応を行うことができます。
また会社に被害を訴えても取り合ってもらえない場合、弁護士が代理人となれば途端に会社側の態度が変わり、早期解決につながることもあります。
嫌がらせを受けている方は、肉体的にも精神的にも疲れてしまっているでしょう。
そこで加害者との交渉や裁判などを行えば、さらなるストレスになりかねません。
ご自分の負担を軽減し、できるだけ有利に解決をはかるためにも、弁護士への依頼を検討しましょう。
5、まとめ
パワハラやモラハラ、いじめといった嫌がらせは、さまざまな職場で起きており、今この瞬間も一人で悩んでいる方もいるでしょう。ですがそのままにすれば嫌がらせがエスカレートして暴力を受けたり、うつ病になってしまったり、退職せざるを得なくなってしまったりするかもしれません。そうなる前に、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスにご相談ください。弁護士は被害者に寄り添い、これまでの経緯を丁寧にお聞きしたうえでできるだけ早く納得できる解決のお手伝いをいたします。
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