解雇理由証明書や解雇通知書をもらえない! 自分でできる対処方法

2024年08月21日
  • 不当解雇・退職勧奨
  • 解雇通知
  • もらえない
解雇理由証明書や解雇通知書をもらえない! 自分でできる対処方法

川崎市が公表する「令和5年度 労働相談状況」によると、令和5年度中に解雇について相談を受けた件数は43件でした。令和4年度は28件だったため、大幅に増加したと言えそうです。

そもそも、解雇はよほどの事情がなければ認められないため、不当解雇という可能性もあり得ます。解雇と言われたときは会社から解雇予告通知書と解雇理由証明書を必ず発行してもらいましょう、解雇が正当なものかどうかを判断する証拠のひとつとなるためです。

本コラムでは、会社から解雇通知書や解雇理由証明書をもらえない場合の対処法や、会社都合でいきなり解雇を突きつけられたときの注意すべきポイントについて、べリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士が解説します。


労働問題を弁護士に相談 労働問題を弁護士に相談

1、解雇予告通知書と解雇理由証明書

「解雇する」と言われたら、会社側に解雇予告通知書解雇理由証明書を作成してもらいましょう。特に、不当解雇で争う場合、解雇理由証明書は重要な証拠書類となりますので、必ず発行してもらうようにしましょう。

  1. (1)解雇予告通知書とは

    解雇予告通知書とは、従業員に解雇を予告する文書のことです。解雇予告を行う際には特に法律上決まっている方法はなく、文書でも口頭でもよいとされています。しかし、「言った・言わない」のトラブルを避けるためにも、解雇予告はきちんと文書で残すようにします。

  2. (2)解雇理由証明書とは

    解雇理由証明書とは、解雇の理由を知らせるための文書のことを指します。解雇理由証明書は、従業員側が請求すれば会社は必ず発行しなければならないものです。なぜなら、解雇理由書は、従業員が会社から解雇された事実とその理由を証明するための書類であり、不当解雇で争う際に必要になるからです。

  3. (3)会社に発行を依頼しよう

    解雇予告通知書も解雇理由証明書も、解雇を告げられたらできる限りその場で発行を依頼するようにしましょう。両方とも、労働審判や裁判など裁判所を利用する手続きを踏む場合に、両方とも重要な証拠資料となるからです。発行してもらえないようであれば、「退職はしない」という態度を示し、「弁護士に相談する」旨をはっきり会社側に伝えましょう。

まずはお気軽に
お問い合わせください。
電話でのお問い合わせ
【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
メールでのお問い合わせ一覧
営業時間外はメールでお問い合わせください。

2、解雇予告をされたらまず確認すべきこと

今まで問題なく働けていると思っていたのに、急に解雇を告げられると呆然としてしまって自分の身に何が起こったのかがわからなくなってしまう人も多いと思います。しかし、解雇予告を受けたら、確認すべきことがいろいろありますので、ひとつひとつきちんと確認していきましょう。

  1. (1)解雇予告のルール

    解雇予告をするときには、法律で定められたルールがあります。「クビだ」と言われたら、まずは行われる手続きが以下のルールにあてはまっているかを確認しましょう。

    • 30日以上前に解雇を予告する
    • 解雇予定日まで30日を切っている場合は、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う

    解雇予定日まで30日もない場合は、30日から解雇日までの残日数を差し引いた日数分の賃金を支払われることがあります。たとえば、解雇予定日が20日後の場合は、10日分以上の解雇予告手当が支払われることになります。なお、この「平均賃金」とは、「解雇日以前の3か月間にその労働者に支払われた賃金総額を暦日数で割った金額」のことです。

  2. (2)会社都合退職になるのか、自己都合退職になるのか

    辞めたのが会社都合であるか自己都合であるかは、失業保険の支給を左右すると同時に、裁判になったときにも大きく影響します。「クビだ」と言われたから会社都合での退職になるかと思いきや、離職理由が自己都合退職になっている場合もあります。会社都合退職になるのか、自己都合退職になるのかをきちんと確認しておきましょう。

  3. (3)解雇理由は何なのか

    どういった経緯で、何が理由で自分が解雇されるのか、使用者に説明を求めましょう。解雇には個人の成績や能力を理由とする「普通解雇」・会社の業績悪化により経営規模を縮小するための「整理解雇」・個人の違法行為や「懲戒解雇」の3種類がありますが、自分はどれにあてはまるのか、また具体的にどのような理由で辞めさせられるのかを確認します。

  4. (4)解雇予告のルールの適用が除外されるケースがある

    前述のとおり、原則として解雇予告時には法律に則って解雇予告の手続きを踏まなければなりませんが、例外的に解雇予告のルールが適用除外されるケースがあります。それは以下のような場合です。

    • 天災などの不可抗力による業務が継続できない場合
    • 違反行為など労働者側に責任があって解雇される場合
    • 日々雇入れられる者(※1か月以上使用される者を除く)
    • 労働契約期間が2か月以内の者(所定の契約期間を超えて使用される者を除く)
    • 4か月以内の季節的業務に使用される者(所定の契約期間を超えて使用される者を除く)
      「季節的業務」とは、夏季休暇中のリゾート地での旅館・ホテル業、冬場のスキー場運営業務、農業の繁忙期の農作業などが該当します。
    • 試用期間中の者(14日以上使用される者を除く)

3、会社が解雇予告通知書・解雇理由証明書を出してこない理由

解雇予告通知書や解雇理由証明書の発行を依頼しても、会社がのらりくらりと交わして発行してもらえないケースもあります。会社がそれらの書類を発行したがらない理由が何かあるのでしょうか。

  1. (1)解雇に正当な理由がない

    労働基準法上、従業員を解雇する際には合理的かつ社会通念上相当な理由がない限り、会社は従業員を解雇することはできません。単なる能力不足や成績不振だけでなく、法に触れるようなことをしたとしても、解雇事由として就業規則に記載がなければ解雇することはできないのです。

    会社が自分を解雇する理由が正当なものでない場合は、解雇理由証明書に書くとそれがわかってしまうため、発行を渋ることが考えられます。

  2. (2)証拠を残したくない

    解雇理由証明書は、不当解雇を理由に労働審判や裁判で争うことになったときの重要な証拠となります。この証明書がなければ審判や訴訟の申し立てができないため、会社側が訴訟など争いを避けたいと考えている場合に、証拠を残したくないがために発行を拒否する可能性が考えられるでしょう。

  3. (3)助成金がもらえなくなる

    会社が解雇通知書や解雇理由証明書の発行を渋る理由は、会社都合退職にすることで、助成金の支給に影響することも大きな理由のひとつです。国から支給される助成金は主に雇用を安定させるためのものという性質から、会社都合による解雇は助成金の不支給の要件に該当します。タイミングによっては現在受けている助成金を返還しなければならなくなることもあるため、会社側は証明書を発行したくないのです。

4、解雇・退職に合意したとみなされないよう注意すべきポイント

解雇宣告を受けたとしても、自分に退職の意思がなければ解雇を受け入れる必要はありません。退職しないという態度を示すために気を付けたいポイントがあります。会社側に退職に合意したと思われないよう、最善の注意を払って対応していきましょう。

  1. (1)休むときは有給休暇を使う

    何かの事情で会社を休まなければならないときは、だまって欠勤すると退職を受け入れたと思われる可能性もあります。そのようなときには、有給休暇を使って休むようにするとよいでしょう。

  2. (2)一方的に解雇予告手当や退職金を振り込んできた場合

    解雇を撤回してもらうべく交渉をしている最中に、無理やり退職させるために会社側が一方的に解雇予告手当や退職金を振り込んでくることがあります。そのような場合、振り込まれたお金は返金する、もしくは「賃金の一部として受領する」旨の文書を会社側に提出します。同時に、「解雇については現在係争中」の旨も併せて伝えるようにしましょう。

  3. (3)離職票の「離職理由」が事実のとおりになっているか

    離職票が発行された場合は、受け取っても問題はありません。しかし、退職に応じる場合は、離職票に記載されている「離職理由」が事実のとおりになっているかどうかを確認しましょう。会社から解雇すると言われたのにもかかわらず、「自己都合退職」となっている場合は、解雇理由証明書など証拠資料を添えてハローワークへ審査請求(異議申し立て)を行います。ただし、ハローワークは中立的な立場で審査を行うため、必ずしも解雇だったと認めてもらえるとは限らないことを留意しておきましょう。

5、解雇予告通知書・解雇理由証明書をもらえない場合の対処法

解雇予告通知書も解雇理由証明書ももらえない場合、退職する意思がなければ「解雇ではないので退職する必要はない」という態度をはっきり示し、できる限り今まで通り仕事を続けるようにしましょう。どうしてももめてしまう場合は専門機関に相談されることをおすすめします。

  1. (1)引き続き出勤する

    相手方が解雇の理由をはっきり示さないのであれば、不当解雇である可能性が高いため、退職に応じる必要はありません。退職には応じないとする態度を示すためにも、引き続き出勤して、これまで通り仕事をこなしていきましょう。

  2. (2)退職願・退職届にサインをしない

    会社側は従業員を退職させるために退職願や退職届を準備してサインをさせようとすることもあります。しかし、これにも応じる必要は一切ありません。「退職金を多めに支払う」「転職の支援をする」などと言われても、退職する意思がないのであれば決してサインをしないようにしましょう。

  3. (3)内容証明郵便を使って発行を求める

    口頭で解雇予告通知書や解雇理由証明書の発行を依頼しても応じてもらえない場合は、内容証明郵便を使って発行を求める方法があります。このとき、あらかじめ弁護士に相談して弁護士の名前で内容証明郵便を送付すれば、相手方に「無視できない」という気持ちにさせることができるので、こちら側の依頼に応じてもらえる可能性が高くなります。

  4. (4)解雇について相談できる相談先

    解雇予告通知書や解雇理由証明書がもらえない場合は、以下のような機関での相談が可能です。

    • 労働組合
    • 労働基準監督署
    • 各都道府県の労働センターなどの相談窓口
    • 弁護士

    これらの機関はいずれも解雇や退職に関する相談を専門に受け付けている機関なので、親身になって相談に乗ってもらえるでしょう。

    ただし、弁護士以外の機関は法律相談や交渉はできません。また、正当な理由なく解雇を告げられることは不当解雇に該当する可能性が高く、労働審判や裁判を申し立てることも視野に入れたほうがよいこともあります。そうなると、以下の機関や弁護士以外の資格者では対応できません。したがって、訴訟にも対応できる弁護士に相談するほうがさまざまな面において効率的であると考えられるでしょう。

6、まとめ

会社で働く従業員にとって、いきなりの解雇は自身の経済基盤を揺るがす大問題です。
解雇に正当な理由がないのであれば、不当解雇であるとして会社側と争わなければならなくなることも十分考えられます。

その場合は、できる限り早い段階で労働問題の経験が豊富な弁護士に相談しましょう
ご自身で対応すると、間違った知識から自分にとって不利益を招くリスクがあります。

ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスでは、不当解雇をはじめとするさまざまな労働問題に関するご相談を承っております。

「いきなり明日から来なくてよいと言われた」「解雇理由証明書を発行してもらえないので、解雇の理由がわからない」という方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています