相続の遺産分割協議がまとまらない! まとまらない原因や解決策について解説
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元気だった親が事故や病気などで突然亡くなるなど、相続は予想していなかったタイミングで突然始まります。
そういった場合は遺言がないことも多いため、相続人同士で話し合う「遺産分割協議」をして分割内容を決める必要があります。
ところが近年、この遺産分割協議がまとまらず、家庭裁判所の調停を利用するケースが増えています。
司法統計によると、川崎市を管轄する横浜家庭裁判所で扱った遺産分割事件は、平成20年度は715件だったのに対し、平成30年度は790件まで増えました。
遺産分割協議では、話し合いがこじれやすいポイントがあります。
そこで今回はまとまりにくいケースや、まとまらない場合の対処方法について簡単に解説します。
1、よくある遺産分割協議がまとまらないケース
相続では、遺言が残されていない場合や、相続人全員が遺言とは異なる内容での分割を望む場合、遺産分割協議を行って相続財産の分割方法を決めます。ですが、この協議は非常にトラブルになりやすい傾向にあります。特に次のようなケースに該当する場合は注意が必要です。
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(1)相続人の数が多い、仲が悪い
遺産分割協議においては、相続人の数が多く、関係が複雑であるほどまとまらない可能性がでてきます。
法定相続人は親族なら誰でもなるわけではなく、法律でその範囲が定められています。
法律上、まずは被相続人の配偶者や子どもが相続人となりますが、子どもが死亡し、孫が権利を引き継いでいたりすると、人数が多くなりがちです。
相続人にはそれぞれ抱えている事情や思惑が異なります。
そのため人数が増えれば増えるほど、利害は対立しやすくなります。
また相続開始前から相続人間の仲が悪ければ、当然、遺産分割協議でも争いとなる可能性が高いでしょう。
「顔も見たくない」というほど関係が悪ければ、そもそも協議を始められないでしょう。 -
(2)不動産など分割しにくい財産がある
相続財産が預貯金や現金だけだった場合、分割の割合さえ決まれば比較的スムーズに遺産分割協議は進むでしょう。
一方で土地やマンションといった不動産など、分けにくい財産が多い場合、遺産分割協議は簡単にはまとまらない傾向にあります。
不動産については、一般的に次のような分割方法があります。- 複数の不動産であれば、不動産ごとに、そのまま分ける
- 特定の相続人が相続し、ほかの相続人に代償金を支払う
- 売却・現金化して分割する
- 複数の相続人で共有する
相続人によって、望む分割方法が違うことも多いでしょう。ただし、特定の相続人が相続し、ほかの相続人に代償金を支払う方法は、代償金を支払うべき相続人に資力がなければ取りえません。また、売却・現金化する方法は、従前から不動産を使用している相続人がいた場合、そのような相続人に反対されることがあります。さらに、複数の相続人で共有する方法は、一般に、共有状態の不動産は売却が困難であることから、将来不動産を売却することになった場合に再びトラブルになるおそれがあります。
加えて、そもそも不動産の評価額は評価方法によって異なるため、分割方法を考える前に、評価額をめぐって争いになることも少なくありません。 -
(3)内容の偏った遺言がある
遺言があるものの相続人全員の合意により遺産分割協議を行うと決めた場合、遺言の内容に従う必要はありません。
ですが遺言は被相続人の意思であり、その内容は少なからず協議にも影響を与えます。
たとえば次のようなケースです。- 特定の相続人に遺産が多く配分されていた
- 相続人以外の人物への分割が指示されていた
- 一部の相続人の遺留分が侵害されていた
相続人間で優劣がつけられていたことに、納得ができない相続人もいるでしょう。
ましてや「家族に迷惑ばかりかけた長男に遺産が多く配分されている」「長年被相続人を介護したのに考慮されていない」といった場合には不満がくすぶり、協議でもめる原因となる可能性があります。 -
(4)生前贈与を受けていた、介護をしていた相続人がいる
一部の相続人が被相続人から生前に多額の贈与を受けていて、その事実が知らされていなかった場合、「不公平だ」と思う相続人もいるでしょう。
生前贈与については、それを相続財産の一部と考えて相続分を計算できます。
これを特別受益の持ち戻しといいます。
ただしどこまでを持ち戻すかには決まりがないうえに、生前贈与を受けていたこと自体がほかの相続人の不満の種となることがあります。
また被相続人を生前に介護していた、家業を継いだなど、被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人は、相続分のほかに「寄与分」を受け取ることができます。
寄与分については民法改正により、相続人以外の親族も「特別寄与料」として請求が認められるようになりました。
寄与の有無や金額も、トラブルの原因になりやすい傾向があります。 -
(5)知らない相続人がいる、連絡がとれない相続人がいる
相続が始まって初めて、被相続人に愛人の子どもがいることや、知らない人物と養子縁組をしていたことが発覚するケースがあります。
ほかの相続人にとっては寝耳に水であり、相続人の数が増えれば当然受け取る遺産の額が減るため、簡単には納得はできないでしょう。
また相続人の中に連絡がとれない相続人がいることもあります。
遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立しないため、会ったこともない相続人や所在不明の相続人にも連絡を取らなければいけません。
非常に手間がかかるため、その間、遺産分割協議は停滞してしまいます。
2、遺産分割協議がまとまらない場合の対処方法
いつまでも遺産分割協議がまとまらなければ相続が進まず、大きなストレスとなるでしょう。当事者だけで解決ができない場合には、次のような対処方法があります。
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(1)弁護士にサポートを頼む
相続人だけでは話し合いがまとまらない場合には、弁護士に依頼すれば解決できることがあります。
相続に詳しい弁護士であれば、財産の全容の把握から不動産の分割方法のアドバイス、遺留分や相続税の計算まで、手間と時間のかかる作業につきサポートをしてくれます。
争っていた相続人も、法律の専門家である弁護士の話であれば聞く耳を持ち、冷静に話し合いを進められるようになることが期待できます。 -
(2)家庭裁判所の調停・審判を利用する
遺産分割協議で合意ができなかったり、一部の相続人が分割協議に参加しなかったりした場合は、家庭裁判所の調停を利用して解決を図ることもできます。
調停は裁判所を利用した話し合いであり、判決がくだされるわけではありませんが、調停成立後に作成された調停調書は判決と同じ効力を持ちます。
調停でも合意ができない場合には、自動的に審判に移行します。
審判では遺産内容や相続人の事情をもとに、裁判官が分割方法について判断します。
3、遺産分割調停の流れ
遺産分割調停は近年、利用が増加しています。遺産分割協議がまとまらなかった場合に備えて、具体的な手続きの流れをご説明します。
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(1)遺産分割調停の利用の流れ
遺産分割調停は、次のような流れで進みます。
- 家庭裁判所への調停申立て
- 調停期日の決定
- 調停(月に1回程度)
- 調停成立の場合は、調停調書の作成
- 調停不成立の場合は、審判
調停では裁判官1人と調停委員2人が相続人から個別に事情を聴きます。
相続人や遺言の有無を確認し、相続財産の内容や評価額、特別受益などについてチェックした後、分割方法を検討します。
話がまとまれば調停成立となり、調停調書を作成します。
調停終了までの期間は、一般的に半年〜1年程度です。 -
(2)調停申立ての必要書類
調停を申し立てる際には、一般的には次のような書類が必要です。
- 申立書と相手方人数分の申立書の写し
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票または戸籍附票
- 通帳の写しなど、遺産に関する各種証明書
- 被相続人1人につき1200円分の収入印紙、連絡用の切手
このほかに相続人の立場によって、別の書類が必要となることがあります。
調停は自身で申立てることも可能ですが、弁護士に委任することも可能です。弁護士は申立てに必要な手続きや調停での対応を熟知しています。
事前に打ち合わせておけば、調停において依頼者のご希望に沿った結果になるように手を尽くしてくれます。
4、まとめ
遺産分割協議でトラブルになると、相続がなかなか進まないうえに、相続人同士の関係も悪くなります。そのような状況を被相続人も望んでいないでしょう。
ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスでは、遺産分割協議ができるだけスムーズに進むようにさまざまなサポートを行っています。弁護士ができるだけ納得して相続が終わるように支援しますので、お困りの方は気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています