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死亡退職金は相続財産として遺産分割の対象になる? わかりやすく解説

2021年09月28日
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死亡退職金は相続財産として遺産分割の対象になる? わかりやすく解説

退職金のある会社では、社員が亡くなると配偶者などの家族に死亡退職金が支給されます。勤続年数が長ければ長いほど死亡退職金は高額となるので、定年間近で死亡した時には数千万円単位になっていることも珍しくありません。

そこで気になるのは、この死亡退職金は相続財産として遺産分割の対象となるのかという点でしょう。

本記事では、死亡退職金が遺産分割の対象に含まれるかどうか、死亡退職金の相続税などについてベリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士が解説します。

1、死亡退職金とは

会社に勤めていた方が退職後に受け取るお金を退職金といいますが、その中でも在職中に亡くなった場合に遺族が受け取ることができるお金を死亡退職金といいます。

  1. (1)3つの死亡退職金

    死亡したときに勤務先から支払われる退職金には、以下の3つの種類があります。

    死亡退職金 一般的な私企業の従業員が死亡したときに支払われるもの
    死亡退職慰労金 私企業の役員が死亡したときに支払われるもの
    死亡退職手当 公務員が亡くなったときに支払われるもの
  2. (2)死亡退職金の請求方法

    死亡退職金を受け取る際には、遺族が被相続人の除籍謄本や相続人・受取人の戸籍謄本とともに死亡退職届を勤務先に提出します。その際、社員証や資料など、会社から貸与されていたものがあれば届け出と同時に返却しましょう。労働災害(業務中の事故など)や通勤災害(通勤途中の事故など)で亡くなった場合は、勤務先のほうで労災保険から給付される遺族補償年金や遺族一時金などの手続きをしてもらいます。

2、死亡退職金は遺産分割の対象になる?

死亡退職金が相続財産となるか、つまり遺産分割の対象となるかどうかは故人の勤務先のルールでどう規定されているかにもよります。

  1. (1)受取人が指定されていれば相続財産にならない

    退職金規程などのある会社では、死亡退職金の支給規定の中に「労働基準法施行規則第42条から第45条の規定に準ずる」などのように、法律の規定に準じた受給者の範囲や順位が指定されていることが珍しくありません。この場合、 死亡退職金の受取人の第1順位は配偶者(事実婚の妻を含む)となり、配偶者がいない場合は子・父母・兄弟姉妹の順となります。このような規定があるときは、死亡退職金は受取人固有の財産となり、相続財産にはならないとされています。

  2. (2)受取人が民法の相続に関する規定と異なる場合

    退職金規程などに受取人の範囲や順位が指定してあっても、先ほどの労働基準法施行規則や民法の相続規定と異なるルールが規定されていることがあります。

    過去の判例で、最高裁は「配偶者があるときは子は全く支給を受けない」「直系血族間でも親等の近い父母が孫より先順位となる」といった内容の退職金規程は、民法の規定する相続人の範囲や順位と定め方が著しく異なると指摘しました。そのうえで、この規定は職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的としていたものだとして、死亡退職金を受給権者の固有の権利として取得すると判断しました。(福岡工大事件:最高裁昭和60年1月31日判決)

  3. (3)退職金の支払規程がない場合は遺産分割の対象に

    退職金の支払いに関して規程のない会社の場合は、判断が分かれるところではあります。今までの慣習や支給された経緯などにもよりますが、会社の規定もなく被相続人が死亡する前に受取人を指定していなければ遺産分割の対象となり、共同相続人全員がそれぞれの相続分に応じて請求できる可能性が高いでしょう。

  4. (4)死亡退職手当や死亡退職慰労金は遺産分割の対象になるか

    公務員の死亡時に支給される死亡退職手当や私企業の役員の死亡時に支給される死亡退職慰労金は、遺産分割の対象になるのでしょうか。

    <死亡退職手当>
    国家公務員退職手当法には、死亡退職手当は遺族に支給すると定められています。その遺族は配偶者のほか、子、父母などその(故人の)収入により生計を維持していたものなど遺族の範囲や順位もあわせて規定されています。これは、民法の相続に関するルールと異なるため、遺族の生活保障を目的としたものであると解されています。したがって、 死亡退職手当は遺産分割の対象とならないとされています 。地方公務員についても、国家公務員退職手当法と同様に定められているときは、遺産分割の対象外とするとの判例があります(最高裁昭和58年10月14日判決)。

    <死亡退職慰労金>
    遺産分割の対象となるかどうかは、退職金の支給規程や株主総会決議、退職金支給に関する慣習の有無などによって異なるので、 個別に検討が必要です
    過去の裁判例では、死亡退職慰労金の受給者を妻もしくは内縁の妻とすることを当然の前提とする株主総会決議があったため、相続財産とすることはできないとする判決があります(広島高裁平成12年2月16日判決)。

    一方で、臨時株主総会で故人の功績に報いるために退職金支給を決定されたことと、会社がその退職金等を被告固有の財産として受取人に支給していたと考えられるため、受取人固有の財産としての性質と遺産としての性質の両方を有していると解するべきとして、半額を遺産として組み入れるべきだとする判決もあります(東京地裁平成26年5月22日判決)。

3、死亡退職金の相続税

死亡退職金が相続財産にはならなくても、相続税はかかる可能性があります。それはなぜなのでしょうか。

  1. (1)死亡退職金はみなし相続財産

    先述のとおり、退職金の支給規程などがある場合、死亡退職金は受取人固有の財産となり相続財産には含まれません。しかし、死亡退職金は「みなし相続財産」となるため、相続税は納めなければならないことがあるのです。

    みなし相続財産とは、被相続人の死亡時に帰属していたわけではないものの、死亡により発生する相続財産とほぼ同じような意味を持つ財産のことです。みなし相続財産の代表的なものに、生命保険金と死亡退職金がありますが、この2つは相続財産ではないにもかかわらず、死亡により相続人が取得する財産になるので税法上相続財産として扱われるのです。 死亡退職金だけでなく、「功労金」や「退職手当金」といった名目で支給された金銭やそれに準ずる給与もみなし相続財産として扱われます

    なお、弔慰金や花輪代、葬祭料などは通常はみなし相続財産となることはありませんが、国税庁ホームページによれば、以下の場合は例外的に相続税の課税対象となることがあります。

    • 1 被相続人の雇用主などから弔慰金などの名目で受け取った金銭などのうち、実質上退職手当金等に該当すると認められる部分は相続税の対象になります。
    • 2 上記1以外の部分については、次に掲げる金額を弔慰金等に相当する金額とし、その金額を超える部分に相当する金額は退職手当金等として相続税の対象となります。
    • (1)被相続人の死亡が業務上の死亡であるとき
       被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額
      (2)被相続人の死亡が業務上の死亡でないとき
       被相続人の死亡当時の普通給与の半年分に相当する額
      (注)普通給与とは、俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額をいいます。


    (引用:国税庁「No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い」

  2. (2)相続税が発生する死亡退職金の範囲とは

    死亡退職金を受け取った遺族に相続税が発生するのは、被相続人の死亡後に受け取る場合で被相続人の死後3年以内に支給が確定した退職金です。被相続人が生前に退職金を受け取っている場合は、遺族に相続税の納付義務が生じるのではなく、被相続人本人に所得税の納付義務が生じます。

    遺族には、以下のような場合に相続税が課税されます。

    • 死亡退職金として支給される金額が被相続人の死後3年以内に確定したもの
    • 生前に退職していて、支給される金額が被相続人の死後3年以内に確定したもの


    なお、死後3年以上経って遺族が受け取った退職金については「一時所得」となるので、相続税ではなく所得税が課税されます

  3. (3)死亡退職金の評価方法

    相続税を計算する際、死亡退職金を一時金として受け取ったか分割もしくは定期金として受け取ったかで、評価方法が大きく変わります。

    一時金として受け取った場合は、一括して受け取った金額が評価額となります。
    分割で受け取った場合は、分割で受け取った金額の総額を評価額とします。

  4. (4)非課税限度額以下であれば相続税はかからない

    先述のとおり、みなし相続財産には相続税がかかりますが、みなし相続財産には非課税枠があります。非課税限度額以下であれば相続税はかかりません。非課税限度額は以下の計算式で計算します。

    500万円×法定相続人の数=非課税限度額

    たとえば死亡退職金が2000万円、法定相続人の数が3人とすると、非課税限度額は
    500万円 × 3人 = 1500万円

    よって、課税されるのは
    2000万円 ― 1500万円 = 500万円となります。

  5. (5)相続放棄しても相続税はかかることに注意

    原則として、相続放棄をするとはじめから相続人ではなかったとみなされるので、相続財産を受け取ることはなく相続税を納付する必要もありません。

    ただ、みなし相続財産の場合は相続放棄しても相続税がかかることに注意が必要です。 みなし相続財産は相続財産ではないため、みなし相続財産を受け取ることで相続税が発生するのです 。したがって、死亡退職金の受取人は、相続放棄をしていてもこれにかかる相続税は納付しなければならないのです。

4、死亡退職金は特別受益か

死亡退職金を受け取ると、遺産分割協議でほかの相続人から「死亡退職金は特別受益だから相続分からその分を差し引くべきだ」と主張される可能性があります。死亡退職金と特別受益の関係はどのように考えればよいのでしょうか。

  1. (1)特別受益とは

    特別受益とは、相続人が被相続人から特別な利益を受け取っていたときに、ほかの相続人との公平を図る制度のことです。一部の相続人が被相続人から生前贈与を受けたり、相続開始後に遺贈を受けたりすると、特別受益を受けたとして本来の相続分から特別受益を差し引いて相続分が算出されます。

    死亡退職金とは本来、残された家族の生活保障のために支給されるもののため、特別受益とならないという考え方もあります。しかし、 実際に特別受益の対象外となるかどうかはケースバイケースです

  2. (2)特別受益とされた判決

    「特別受益である」との判決が下った判例には、東京地方裁判所15年3月19日判決があります。

    退職金規程などの支給規定も退職金を支給する慣行もない会社で、株主総会の決議を経て役員Aの死後、相続人Bへ退職慰労金として7360万円が支給されました。Aは「Bが遺産のすべてを取得する」との遺言を残しており、それをほかの法定相続人も了解していました。また、決議では支給対象者の指定もなされていなかったことから、Aの死亡に伴う退職慰労金はAの相続財産(=特別受益の対象)となるものと解するのが相当であるとの判決が下りました。

  3. (3)特別受益でないとされた判決

    特別受益でないとされた判決には、東京地裁平成25年10月28日判決があります。

    生命保険金と死亡退職金を配偶者が受け取っていた一方で、原告も保険金3000万円を受け取っており、被相続人の生前には経済援助として毎月生活費を送金されていました。裁判所は「死亡退職金が受取人である相続人が自らの固有の権利として取得した場合、他の共同相続人との間に是認することができない特段の事情が存在するときは、持戻し(特別受益)の対象となると解するのが相当」としながらも、相続人間には到底是認できないほどの著しい不公平があるとする特別の事情があるとは言えないため、配偶者が受け取った生命保険金も死亡退職金も相続財産への持ち戻しは認められないとの判決を下しました。

5、まとめ

死亡退職金は、受取人固有の財産とされることは多いものの、退職金支給規程の有無や金額などさまざまな事情によって相続財産とするべきだという考え方もあります。また、ほかの共同相続人から「特別受益だ」と主張されることもあるでしょう。

死亡退職金が遺産分割の対象となるかどうか心配な方は、遺産相続の経験豊富な弁護士がご相談に応じます。ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスまでお気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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