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証拠がなくても窃盗で逮捕される? 警察は動かない説は事実か

2024年04月25日
  • 財産事件
  • 窃盗
  • 証拠がない
証拠がなくても窃盗で逮捕される? 警察は動かない説は事実か

令和4年11月、川崎市内で自転車を窃盗した容疑で男が犯行から数か月後に逮捕されたという報道がありました。この報道の通り、窃盗事件を起こしてしまった際に、その場で逮捕(現行犯逮捕)されなかった場合でも、後日、犯行現場に設置されていた防犯カメラなどを証拠として、逮捕されることがあります。

警察は証拠がないと動かないとよくいわれていますが、犯行に結びつくような具体的な証拠がなくても、逮捕されることはあるのでしょうか。ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士が解説します。

1、窃盗の証拠がなくても逮捕されるケースは?

刑事事件の裁判では、原則として証拠が必要になりますが、証拠がなくても逮捕されるケースもあります。それはどのようなケースなのでしょうか。

  1. (1)刑事裁判では原則として証拠が必要

    刑事訴訟法第317条に「事実の認定は、証拠による」と規定されているとおり、刑事裁判において事実認定をするには、原則として証拠が必要です。しかし、どのようなものでも証拠になりうるわけではありません。裁判で証拠として提出するためには、その証拠に証拠能力が伴っていなければならないのです。

    証拠能力とは、裁判で犯罪事実を認定するための資料として用いることができる適格性のことをいいます。証明しようとする事実とまったく関係がないものや違法な手口で入手したものについては、証拠能力は認められません

    たとえば、同じ防犯カメラの映像でも、公道に設置されているものには証拠能力が認められます。一方、被害者が犯人の自宅の敷地内にこっそり設置したものは、被害者が建造物侵入の罪を犯したことになるので違法とされ、証拠能力がないとされる可能性があります。

  2. (2)証拠がなくとも現行犯であれば逮捕できる

    現行犯逮捕とは、犯罪を行っている最中や、犯罪を行った直後に逮捕されることです。逮捕する人は警察官に限りません。窃盗罪の犯行現場にたまたま居合わせた方や被害者本人が加害者を取り押さえることも、現行犯逮捕と呼びます。警察官以外の方が犯人を逮捕した場合は、その後警察官が来て警察署に犯人を連行します。現行犯逮捕のときは、被害者や周りの方が実際に犯行現場や加害者を目の前で目撃していることから、その他の証拠や逮捕状は不要とされています。

    窃盗によって甚大な被害が出た場合や、犯行が複数回にわたっている場合、悪質な方法や手段が用いられている場合は現行犯逮捕されやすい傾向があります
    たとえば、貴金属店に忍び込んで宝石を盗もうとしたが警備員に見つかって逮捕されるケースや、スーパーで何度も万引きを繰り返していたところ逮捕されるケースがあります。

  3. (3)状況証拠(情況証拠)から逮捕できることもある

    目撃者や防犯カメラの映像、本人の自白などの決定的な証拠がなければ逮捕されないのかといえば、そうではありません。ある現場である人物が窃盗事件を起こしたらしいという状況証拠(法律用語では「情況証拠」と表記します)を積み重ねることによって、犯人とおぼしき人物が特定され、逮捕に至るケースもあります。

2、窃盗事件はどのようなものが状況証拠になる?

状況証拠(情況証拠)とは、犯罪のあった事実を間接的に証明するものですが、窃盗事件では具体的にどのようなものが状況証拠(情況証拠)として認められるのでしょうか。

  1. (1)近接所持

    窃盗事件が起きた直後に、その現場の近くで盗まれたものと同じものを持っていたら、疑いの目を向けられる可能性が高いでしょう。このように、窃盗事件が発生した現場の近くで、犯行時刻に近い時間に被害品(盗難品)を所持していることを「近接所持」といいます。事件発生の時刻や場所に近ければ近いほど、証拠能力が高くなります。

    「人に頼まれて預かっているだけ」「たまたま同じものを購入して持ち歩いていた」など所持していた理由は窃盗以外にもありうるでしょう。そのため、近接所持にあてはまるからといって、直ちにその者が事件の犯人であると言うことは言えません。

    被疑者も、自らの身の潔白を証明するためにそのように主張してくるでしょう。しかし、たとえば「友人Aにもらった」と言っても、その友人Aはその当時県外にいたとわかったなど事実と異なる弁解をしている場合は、近接所持の推認力は上がるでしょう。また、会話の中でコロコロ言うことが変わる場合も、その人物が犯人である可能性が高くなります。

  2. (2)指紋やDNAなどが検出されたこと

    盗まれたものから被疑者の指紋やDNAが検出されたら、その被疑者が盗んだものであると推測することができるでしょう。指紋やDNAは偽造することが難しいと考えられるため、盗難品やその盗難品が置かれていた金庫や机の引き出しなどに指紋やDNAが付着していればその持ち主が犯人であるという可能性が非常に高くなります。
    もっとも、その指紋やDNAが、窃盗事件が起こった時刻の前にたまたま訪れていた方のものである可能性も否定はできません。そのため、必ずしも指紋などの持ち主が犯人であるとは限らないため、別の日についたものである可能性を否定できなければ証拠として認められないこともあります

  3. (3)現場の下調べを行っていること

    犯行時刻より前に、現場周辺に下調べを行っていることも状況証拠(情況証拠)のひとつです。ある人物が正当な理由なく現場付近をうろついていたことがわかった場合は、窃盗罪を犯した犯人である可能性が高くなります。一方、たまたま近くに買い物に来ていた、犯行現場のマンションにたまたま友人が住んでいて遊びに行っていただけだった、という場合は推認力が弱くなるかもしれません。

  4. (4)状況証拠(情況証拠)で有罪とされたケース

    最近、状況証拠(情況証拠)の積み重ねで有罪とされた裁判例があります。鳥取県米子市のホテルの支配人を殺害し現金を奪ったとして従業員の男が強盗殺人罪に問われました。第1審で、裁判所は被告人が事件直後に盗まれた金額に近い230枚もの千円札を所持していたこと、事務所が建物の構造を知らない者にはアクセスしにくい場所であったことなどから、犯行を強く推認できるとして、殺人罪と窃盗罪を認定し、懲役18年の実刑判決を言い渡しました。その後控訴審でいったんは逆転無罪となりましたが、上告審で最高裁は原判決を破棄して広島高裁に差し戻し、その後広島高裁も一審判決を破棄して鳥取地裁に差し戻します。最終的に、令和2年11月、鳥取地裁は被告人に対して無期懲役の判決を言い渡しました(鳥取地裁令和2年11月30日判決)。

3、証拠が不十分だと罰せられない可能性がある

「ある人物が窃盗事件を起こしたかもしれないが、証拠がないもしくは証拠が不十分だ」という場合は、起訴もされず処罰もされない可能性があります。不起訴処分になるのは、嫌疑不十分・嫌疑なし・起訴猶予の3つの場合ですが、それぞれどのような意味なのでしょうか。

  1. (1)嫌疑不十分の場合

    嫌疑不十分とは、加害者が事件を起こした疑いはあるものの、検察官が犯行の事実を客観的に証明できないときに出されるものです。被疑者が窃盗事件を起こしたかもしれないが、盗んだ証拠がない、あるいは証拠として提出された資料や物品の証拠能力に乏しいといった場合に、嫌疑不十分で不起訴となることがあります。

  2. (2)嫌疑なしの場合

    嫌疑なしとは、捜査した結果、事件を起こしたのは被疑者ではないことが証明でき、犯罪への疑いが晴れたときに出される判断です。たとえば、捜査を進めているうちに真犯人が別にいることがわかった、事件当時被疑者がまったく別の場所にいたことがわかったなどの場合に、嫌疑なしとなります。

  3. (3)証拠があっても起訴猶予となれば不起訴になる

    有力な証拠があり、被疑者の犯行であることが間違いないが、初犯で被害の程度が小さい、被害者と示談が成立し被害弁償もすんでいる場合に、起訴猶予となることがあります。これは、検察官が事件後の状況をみて検察官の裁量で不起訴処分を決める場合に下される判断です。

4、窃盗事件で逮捕されたときの流れ

窃盗罪の疑いで逮捕された場合、以下のような流れで刑事手続きが進みます。逮捕されそうになったとき、もしくは逮捕されてしまったときはできるだけ早く弁護士に相談すれば、それだけ早く釈放してもらえる可能性が高くなるでしょう。

  1. (1)逮捕・捜査

    窃盗罪では、犯行に及んでいる最中またはその直後に現行犯逮捕されるケースと、後日逮捕されるケースがあります。
    窃盗罪の疑いで逮捕されると、警察署で取り調べを受けるため、逮捕後48時間以内は留置所で過ごすことになります。逮捕された結果、共犯者もおらず逃亡や証拠隠滅のおそれもないと判断された場合は、いったん釈放されて在宅事件に切り替わる場合もあります。ただし、釈放されたからといっても無罪放免となったわけではないため、捜査が終わったあとに起訴されて処罰を受ける可能性も残されていることに注意が必要です

  2. (2)検察庁へ送致(送検)

    警察で捜査が終了すると、被疑者の身柄が検察庁へ送られます。このことを「送検」といいます。ここでも24時間以内に取り調べを受けますが、検察官が捜査を続ける必要がある、被疑者が逃亡するおそれがあるなどと判断した場合は、裁判所に勾留請求をします。裁判所では、被疑者の言い分を聞いたうえで拘留するかどうかを決定します。勾留が認められると、被疑者はそこから10日間、拘置所や留置場で勾留されます。この間に捜査が終了しない場合は、警察官がさらに10日間の勾留延長請求をし、これが認められるとさらに10日間勾留されることになります。

  3. (3)起訴・不起訴の決定

    勾留期間の間に、検察官が起訴・不起訴を決定します。嫌疑なし・嫌疑不十分・起訴猶予のいずれかにあてはまり、不起訴となった場合、被疑者は釈放されるでしょう。起訴を決定した場合は、公判請求か略式命令請求のいずれかを裁判所に行います。公判請求とは公開の法廷で裁判長の判断を求めること、略式命令請求とは100万円以下の罰金もしくは科料となる見込みのときに簡易的な裁判を求めることです。後者を選ぶ場合は被疑者の同意が必要です。

  4. (4)裁判

    公開の法定での裁判(公判)になった場合は、検察官が有罪であることを立証し、弁護人が少しでも罪が軽くなるよう、被告人にとって有利な証拠を開示します。その後は裁判官・検察官・弁護人による被告人への尋問が行われ、検察官が意見を述べたうえで求刑します。弁護人もそれに対して意見を述べ、被告人も裁判官に対して意見を述べて終了となります。犯罪事実を争わない場合は1週間程度で判決が言い渡されます。弁護士は、被告人が無罪である可能性がある場合は無罪である旨を主張し、有罪の場合でも執行猶予付き判決が得られるような弁護活動を展開します
    略式命令の場合は、略式命令が相当であるかどうかを裁判所が判断し、請求から14日以内に100万円以下の罰金または科料を科します。

5、まとめ

人の物やお金を盗み「警察は証拠がなければ動かないというし、証拠を残していないので大丈夫だろう」と思っていても、状況証拠(情況証拠)から逮捕・起訴され有罪となることもあります。早期に弁護活動を開始すれば、逮捕されたとしても不起訴となり、早く釈放される可能性がでてきます。

ご自身あるいは身近な方が窃盗の疑いで逮捕されたら、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスまでご連絡ください。事実無根であれば徹底的に戦いますし、もし窃盗した事実がある場合であっても過剰に重い罪に問われないよう、刑事事件についての知見が豊富な弁護士が弁護活動を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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