退職代行業者は違法? 退職したいなら弁護士相談がおすすめな理由

2022年11月14日
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退職代行業者は違法? 退職したいなら弁護士相談がおすすめな理由

神奈川県統計センターが公表している「労働力調査結果報告(2021年平均)」によると、令和3年の完全失業者数は15万5000人であり、前年と比べると7000人増加している結果となりました。

仕事に関しては、結婚や妊娠、引っ越し、転職など、さまざまな理由で勤め先の会社を退職しなければならないことがあります。会社との関係が円満であれば、自ら退職の意思を伝えればよいですが、上司と折り合いが悪い場合や退職の意思を伝えても簡単には辞めさせてもらえないような場合もあるでしょう。

そういうときに、退職代行業者の退職代行サービスを利用しようと考える方は少なくありません。しかし、退職代行業者の中には、違法な非弁行為をしている業者もあるため、注意が必要です。

今回は、退職代行業者を利用する場合の注意点や弁護士に依頼をするメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスの弁護士が解説します。

1、退職代行は違法?

退職代行とは、どのようなサービスなのでしょうか。また、どのような場合に退職代行サービスが違法となるのでしょうか。

  1. (1)退職代行とは

    退職代行とは、勤め先の退職を希望する労働者に代わって、退職の手続きを行うサービスのことです。また、退職代行サービスを提供する会社のことを退職代行業者といいます。

    雇用期間の定めがない労働契約を締結している、いわゆる正社員などの労働者が会社を辞めたいという場合には、いつでも退職の申し出をすることが可能です。そして、退職の申し出から2週間を経過することによって労働契約は終了します(民法627条1項)。

    また、パートやアルバイトといった、期間の定めのある労働契約を締結している労働者は、契約更新をしなければ期間の満了により労働契約が終了しますが、やむを得ない事情がある場合には、期間途中でも退職することが可能です(民法628条)。

    このように、法律上は、労働者は自由に退職することができるとされています。
    しかし実際には、労働者が会社に対し退職の意思を伝えても、なかなか辞めさせてもらえないというケースが少なくありません。退職代行サービスは、そのような労働者個人での退職が難しい場合に利用されます。

  2. (2)退職代行が違法になるケース

    退職代行業者は、労働者に代わって退職の手続きを行うサービスを提供しています。しかし、そのサービスの内容によっては、弁護士法が禁止する「非弁行為」にあたり、違法となる可能性がある点に注意が必要です。

    非弁行為とは、弁護士だけが行うことが認められている行為を弁護士以外の人がすることをいいます。退職代行業者は弁護士資格を有していないため、以下のような行為をした場合は違法行為となります。

    1. ① 退職条件の交渉
      会社を退職することになった場合には、退職日をいつにするのか、未消化の有給休暇をどのようにするのか、後任者への引き継ぎをどうするのかなど、さまざまな社内調整をする必要があります。
      退職代行業者は、単に労働者の退職の意思を伝えるだけであれば、適法であると考えられておりますが、退職条件の交渉をすることは弁護士でなければできない行為です。そのため、退職代行業者が会社側と退職条件の交渉をした場合には、違法行為となります。
    2. ② 未払いの残業代の請求
      退職する際には、在職中に請求することができなかった未払いの残業代を請求することがあります。
      未払いの残業代を請求することは労働者としての当然の権利であり、労働者自身が請求するのであればその行為自体に問題はありません。しかし、退職代行業者には、会社側と交渉する権限がないため、会社に対して未払いの残業代を請求することは、違法な非弁行為となります。
    3. ③ 退職させてもらえない場合の交渉
      法律上は、労働者からの退職の意思表示によって会社を辞めることが可能になりますが、会社によっては、簡単に退職を認めてくれないところもあるでしょう。
      そのような会社に対しては、退職の意思表示によって退職が可能であることを説明するなどをして、退職に応じてもらえるよう働きかけなければなりません。このような交渉も弁護士でなければできない行為になりますので、退職代行業者が行った場合には、違法な非弁行為となります。


    上記で説明したとおり、退職代行サービスでも違法になる・ならないといった線引きがあることに留意してください。

2、退職代行業者の3つの種類

退職代行サービスを提供する業者としては、以下の3種類があります。それぞれ異なる特徴がありますので、状況に応じて適切な業者を選択することが必要です。

  1. (1)退職代行業者

    一般的な退職代行業者は、民間の業者が運営しているものになります。
    退職代行企業は、弁護士法に違反しない範囲でしか退職代行サービスを行うことができません。先に説明したとおり、労働者の意思を代わりに会社に伝える範囲内でなければ、違法行為となってしまいます。

    単に退職の意思を伝えるだけでよければ退職代行業者を利用してもよいですが、退職条件の交渉、未払い賃金の請求や退職金の請求など、会社と「交渉」をする必要があるという場合には、退職代行業者以外の業者を検討することが必要です。

  2. (2)労働組合

    労働組合は、法律上、団体交渉権が保障されています。そのため、労働者の退職の意思を伝えるにとどまらず、退職時の交渉などを行うことが可能です。
    団体交渉を申し入れられた会社は、団体交渉を拒否することができませんので、一定の効果が期待できます。

    ただし、労働組合による退職代行は、あくまでも交渉までとなるため、労働審判や訴訟に発展した場合には、対応することができません。

  3. (3)弁護士

    弁護士であれば、法律問題全般について幅広く対応することが可能です。退職に関する法律相談から始まり、労働者の代理人として会社と交渉をしたり、労働審判の申立てや訴訟提起などの法的手続きをとったりすることもできます。

    退職の場面では、退職金や未払い賃金など、さまざまな問題が退職に付随して生じる可能性があるため、あらゆる法律問題に対応可能な弁護士に任せるのが安心といえるでしょう。

3、退職代行を利用しても会社が退職させてくれないのは違法?

退職代行のサービスを利用しても会社が退職を認めてくれない場合は、どうしたらよいのでしょうか。以下では、退職にまつわる4つの問題について説明します。

  1. (1)会社が退職させてくれない

    期間の定めのない労働契約を締結する労働者(正社員など)の場合、退職日から2週間前に退職の申し出をすれば、退職の理由如何を問わず、自由に退職することができます。

    退職することについて会社側の承諾は要求されていないことから、労働者側からの一方的な意思表示によって会社を辞めることが可能です。そのため、会社が退職させてくれないという場合には、労働者の退職の自由を制限するため、違法な扱いとなります。

    会社が退職を認めてくれないという場合には、配達証明付きの内容証明郵便を利用して退職届を提出するとよいでしょう。

  2. (2)退職にあたって有給を消化させてくれない

    雇い入れ日から6か月間継続して勤務をして、全労働日の8割以上出勤している場合には、法律上当然に有給休暇が付与されることになります。会社に有給休暇の消化を申し出れば、会社側としては、それを拒否することはできません。
    退職が決まった場合であっても、労働者が保有している分の有給休暇の消化は可能であり、その取得を拒むことは違法となります。

    もっとも、退職を伝えた時期によっては、業務の引き継ぎなどで出社を余儀なくされることもありますので、退職にあたって有給休暇を消化したいときは、早めに会社に申し出るとよいでしょう。
    どうしても有給休暇の消化が難しいという事情があれば、有給の買い取りを検討してもらうのもひとつの方法です。

  3. (3)未払いの残業代を支払ってもらえない

    未払いの残業代がある場合には、会社に対して支払いを請求することができます。
    残業代の請求は、会社に在籍中であっても、退職後であっても可能です。そのため、労働者の退職を理由に会社側が残業代の支払いを拒むのは違法となります。

    会社との話し合いで未払いの残業代を支払ってもらえないという場合には、弁護士に依頼をして、労働審判や裁判などの法的手段によって解決を図るとよいでしょう。

  4. (4)退職金を支払ってくれない

    会社に退職金規定があるときは、その退職金規定に従って計算した退職金が支払われることになります。懲戒解雇の場合には、退職金を支払わないという条項が設けられていることもありますが、このような退職金の不支給条項がある場合であっても、よほど悪質なケースでない限りは、全額の不支給は違法となる可能性があります。

    会社が退職金を支払ってくれない場合には、弁護士に依頼をして、退職金の請求をしていくとよいでしょう。

4、退職をしたいなら弁護士への相談がおすすめ

退職をお考えの方は、まずは弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)法に則った形で交渉まで対応できる

    退職代行業者は、弁護士法に違反しない範囲で退職代行サービスを提供することになりますので、対応できる範囲が限られています。

    労働者自身で退職することができないケースの多くは、会社との交渉が必要になってくるため、退職代行業者では対応することができない可能性があることに留意しなければなりません。仮に違法な退職代行業者に依頼してしまうと、会社との間でトラブルが生じることもあるため、注意が必要です。

  2. (2)弁護士であれば未払いの残業代の請求も可能

    残業代を請求する場合には、残業したことを立証する証拠の収集や複雑な残業代計算をしなければなりませんが、弁護士に依頼をすれば、それらの手続きをすべて任せることができます。

    実際に、残業代請求をする場面でも、弁護士が代理人として会社側と交渉することによって、スムーズに話し合いを進められて、交渉による早期解決も期待できるといえるでしょう。

    残業代請求は給料日の翌日から3年以内に行わなければならない、という期限(時効)があります。退職にあたって残業代も請求したいとお考えの方は、早めに弁護士に相談をするようにしましょう。

5、まとめ

インターネットで検索をすると、退職代行サービスを提供するさまざまな業者が見つかります。しかし、民間の退職代行会社では、対応できる内容に限りがありますので、退職に関する問題をすべて解決する場合には、弁護士への依頼をご検討ください。

退職や未払いの残業代などの問題でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 川崎オフィスまでお気軽にご相談ください。

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